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BBC News

2022年5月30日

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は29日、激しい戦闘が続く東部ハルキウ州の軍部隊を訪問した。2月24日にロシアによる侵攻が始まって以来、大統領が首都のあるキーウ州の外に公式に出たのは初めて。一方、ロシア外相は、ウクライナ東部の「解放」が「優先事項」だと述べるほか、ウラジーミル・プーチン大統領の病気説を否定した。

ウクライナ第2の都市ハルキウへの砲撃を、ロシアは2週間ほど停止していた。しかし、ここ数日で再開している。

ゼレンスキー氏は、防弾ベストを着て、ハルキウ市内の廃墟を視察。兵士たちに、「あなたたち一人ひとりの軍での働きに感謝したい」と話した。

訪問時の映像によると、ウクライナ兵たちはゼレンスキー氏に、道路脇の破壊された軍用車など戦争の被害について説明した。

ゼレンスキー氏はのちに、「この戦争で、占領者はどうにかして何らかの結果を手に入れようとしている」、「しかし、私たちが最後の一人まで土地を守ることを、占領者はもっと早く理解すべきだった。向こうに勝ち目はない。私たちは戦い、必ず勝利する」と投稿した。

また大統領は訪問後、ハルキウ州で領土防衛の任務を果たさなかったとして、ウクライナ保安局の同州責任者を解任したと、国民向けの演説で明らかにした。

今もロシア軍の射程圏内

侵攻の初期には、ハルキウはロシアの激しい砲撃にさらされ、高層の集合住宅ががれきと化した。

しかし、4月から5月にかけ、ロシア軍は周辺の町から徐々に後退。避難していた住民の一部がハルキウに戻り、地下鉄も侵攻後初めて営業が再開された。

ただ、同市は今もロシアの大砲の射程圏内にある。ゼレンスキー氏が視察を終えた後、市内では大きな爆発音が数回聞こえた。

大統領府はこの日、通信アプリ「テレグラム」に動画を投稿。字幕には、「ハルキウと周辺では2229棟の建物が破壊された。私たちは復活し、再建し、生活を取り戻す。ハルキウで、そして邪悪な存在がやって来たすべての町と村で」と書かれていた。

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BBCのジョー・インウッド・ウクライナ特派員は、大統領の訪問は、ハルキウの戦況の変化を物語っていると説明。しかし、別の場所ではウクライナは劣勢とみられており、ハルキウの安全も一時的なものだと伝えた。

ハルキウ州の保安トップを解任

ゼレンスキー氏は29日、ウクライナ保安庁のハルキウ州トップ、ロマン・ドゥディン氏について、「全面戦争の初日から街の防衛に取り組まず、自分のことしか考えなかった」として、解任したと明らかにした。

「動機は何だったのか? 司法当局が解明する」と、ゼレンスキー氏は付け加えた。

同氏はまた、ハルキウの市長と州知事にも会い、復興計画を協議した。

アンドリー・イェルマク大統領首席補佐官によると、ハルキウ州では現在、領土の31%をロシアが占領している。ウクライナは5%をロシアから奪い返したという。

ドネツク州の町を制圧とロシア軍発表

ロシアは、ウクライナ東部ドンバス地方の制圧を重要目標に掲げており、攻撃を集中させている。目下、セヴェロドネツク市とリシチャンスク市の包囲を目指している。

ロシア国防省は28日、ドンバス地方ドネツク州の町リマンを制圧したと発表した。


ゼレンスキー氏は同日、「状況は非常に厳しい。ドンバス地方とハルキウ州では特に厳しい」と、国民向けの演説で述べた。

セヴェロドネツクには、推定1万5000人の民間人がまだ残っている。地元当局者は、「絶え間ない砲撃」で市内外への移動が困難になっていると述べた。水の供給も一段と不安定になっている。

ロシア外相、プーチン氏の病気説を否定

ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は29日、同国にとってドンバス地方の「解放」が「絶対的な優先事項」だと、フランスのテレビ局TF1のインタビューで語った。

ラヴロフ氏はインタビューで、進行中の軍事作戦を擁護。隣国ウクライナの「非軍事化」が目的だと改めて主張した。

そして、ロシアは「ネオナチ政権」と戦っているとする説明を繰り返した。ロシア政府のこの説明は、各国で広く一蹴されている。

ラヴロフ氏はまた、ウラジーミル・プーチン大統領が病気だとの憶測を否定した。

プーチン氏について、公の場によく姿を見せているとし、「この人(プーチン氏)に病気や不調の兆しなど、正気な人間には見つけられないはずだ」と外相は述べた。

米政府、長距離ロケットを提供か

アメリカは近く、長距離の多連装ロケットシステム(MLRS)をウクライナに送るとみられている。

ゼレンスキー政権は、ドンバス地方でロシア軍に対抗するため、MLRSの提供を訴えてきた。

ロシアは、こうした重火器の提供を、挑発的なエスカレーション行為だと見ている。

ウクライナ軍は現在、アメリカから送られた、射程距離が約25キロのM777ハウイツァー榴弾(りゅうだん)砲を使っている。これに対して、提供される見通しのMLRS/M270は、射程距離が最大300キロに及ぶ。

これを入手すれば、ウクライナ軍の能力は大幅に向上し、ロシア国内の標的も攻撃できるようになる。一方で、アメリカや北大西洋条約機構(NATO)加盟国を、ロシアとの直接的な紛争に引き込む危険性をはらんでいる。

米紙ワシントン・ポストによると、米政府はウクライナへのMLRS供与については心配していないが、このシステムに適合した最長距離ロケットの提供は保留するつもりだと、米高官は話したという。

プロパガンダ発信メディアを特定

「サザン・フロント」(南部前線)という名の会社が、親プーチン大統領のプロパガンダを広めていることが、BBCの調査で明らかになった。ユーチューブ、ソーシャルメディアのテレグラム、ロシアが支配下に置いたウクライナ地域向けのウェブサイトを通し、虚偽で誤解させる主張を発信している。

同社のニュースサイトは、ロシアによるウクライナ侵攻の初日に、最初のメッセージを掲載した。現在では数人の特派員が毎日、報告している。

報告の大半は、占領地で「平和な生活」が確立されていると説明している。ロシアの侵攻を正当化する報道が目立つ。

親ロシア政府のソーシャルメディアアカウントをよく取り上げ、ロシア語を話す人たちにその内容を広めている。

(英語記事 Zelensky makes first front-line trip to KharkivUkraine round-up: Zelensky in Kharkiv and Putin propagandaRussia says 'liberation' of Donbas its key priority

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61629150

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