2022年6月29日(水)

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2022年6月1日

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キャロライン・デイヴィス、BBCニュース、ウクライナ・オデーサ

オレクサンドル・グズさんは、自家製のボルシチをコンロで温めながら、携帯電話に保存している、あざができた自身の写真を見せてくれた。

ロシア当局にやられた傷だと、彼は言う。「頭に袋をかぶせられた」、「腎臓は残らないだろうとロシア人たちに脅された」。

BBCはウクライナ南部ヘルソンで、拷問を受けたという住民の生々しい証言をいくつか得た。

警告:この記事には、読者が苦痛に思うかもしれない生々しい内容が出てきます

オレクサンドルさんは、ヘルソン州地方の小村ビロゼルカで暮らしていた。村を代表する立場の1人だった。若いころは軍の徴集兵だったが、現在は会社を経営している。

妻とともに、反ロシアを公言していた。妻は親ウクライナの集会に参加。オレクサンドルさんは、ロシア軍が村に入るのを食い止めようとした。

ロシアが村を制圧すると、まもなくして兵士たちが彼を探しに来た。

「首と手首にロープをかけられた」と彼は振り返る。尋問を受ける間、両足を大きく開いて立つよう、ロシア兵たちに言われたという。

「答えないでいると、股間を強打された。倒れ込み、息苦しさを感じた。立ち上がろうとすると、殴られる。そして、また質問される」

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ロシア軍は戦争の初期に、ヘルソンを制圧した。ウクライナのテレビ局は、すぐにロシアの国営放送局に替えられた。西側の製品は、ロシアの代替品に取って代わった。

BBCが複数の人から直接得た証言によると、人々も姿を消すようになったという。

ヘルソンで何が起きているのかを突き止めるのは難しい。この州ではロシアが支配を強め、人々は声を上げるのをいっそう恐れている。

どうにか州外に出た人は、携帯電話からすべての写真や動画を削除していることが多い。ロシアの検問所で止められ、拘束されるのを恐れてだ。オレクサンドルさんは、自らのけがの画像を海外にいる息子に送り、安全に保管させてから、携帯電話の中身を消した。

そのため、こうした証言が事実だと判断するには、拷問の被害に遭ったという複数の人から話を聞く必要がある。

折れたあばら骨

オレフ・バトゥリンさんは、私たちが話を聞いた1人だ。ヘルソン州の独立系新聞の記者だった。ロシアの侵攻が始まってから数日のうちに、拉致されたという。

「『ひざまずけ』と怒鳴られた」と彼は言う。「私の顔を覆い(中略)私の両手を背中に回した。背中、あばら骨、脚を殴られ(中略)機関銃の台尻で強打された」。

あとで医者に診てもらったとき、あばら骨を4本折られたことがわかった。監禁は8日間にわたったという。その間、他の人が拷問を受けているのを聞き、若者の模擬処刑を目にしたという。

オレクサンドルさんとオレフさんは現在、ウクライナの管理地域にいる。彼らはBBCに、虐待についての警察の報告書を撮ったものだとする写真を提供してくれた。

拷問の訴えには、極めて生々しいものもある。私はヘルソンの病院で勤務していた医師を取材した。彼は匿名を希望したが、病院のIDの写真を私に見せた。

「体の切断が行われた形跡があった」と彼は言った。そして、血腫(ひどいあざのように見える血管外の局所的な出血)、擦り傷、切り傷、感電させた跡、手を縛った跡、首を絞めた跡なども見たと話した。

また、足や手のやけどを目にし、ある患者からは、砂を詰めたホースで殴られたと聞いたという。

「中でもひどかったのは、性器に残ったやけど跡、レイプされた少女の頭にあった銃創、ある患者の背中と腹にあったアイロンによるやけどだ。その患者は、車のバッテリーと彼の股間が2本のワイヤでつながれ、湿った布切れの上に立つように指示されと言っていた」

この医師は、治療を受けなかった重傷者が他にもたくさんいたと考えている。

外に出るのが怖くて、家に閉じこもっている人もいる。また、ロシア人から「心理的プレッシャー」を受けている人もいると、彼は言う。「家族を殺すと脅し、あらゆる方法で恐怖を感じさせる」。

彼は患者たちに、なぜロシア当局に選ばれたのか聞いたという。

「その人たちは、ロシア側に行くのを望まなかったために拷問を受けていた。集会に参加した、領土防衛隊に参加した、家族の1人が分離主義者と戦った、というのが理由にされた人もいた。無差別に選ばれた人もいた」

愛する人が次の被害者になるかもしれないと恐れている人もいる。

ヴィクトリアさん(仮名)は、まだヘルソンにいる両親の身を案じている。父親はかつてウクライナの領土防衛隊に参加しており、すでに一度、拉致され殴られたことがあるという。

「父は農場の真ん中に置き去りにされた。感情に左右される人ではないのに、家に戻ると、まもなく泣き出した。私は助けたいが、少女のような気分だ」と、ヴィクトリアさんは述べた。

そして、同じことがまた起こるかもしれないと心配している。

ヘルソンで起きていることを調査しているのはBBCだけではない。国連ウクライナ人権監視団と人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)も、拷問と強制失踪の訴えに対して懸念を示している。

HRWのベルキス・ウィル氏は、BBCが集めた証言は、HRWが聞いているものと一致していると言う。

同氏はまた、ロシア軍が占領地域で、「地元住民を恐怖に陥れ、恣意(しい)的な拘束や強制失踪、拷問などの虐待を使う」ことを一定程度続けていることが懸念されると述べている。

「私たちが目にしているのは、戦争犯罪の可能性があるものだ」

ロシア国防省は、BBCのコメント要請に応じなかった。ロシア政府の報道官はこれまで、首都キーウ郊外のブチャにおける戦争犯罪の疑惑について、「明らかな虚偽であり、中でも最もひどいものは『やらせ』だ。そのことは、ロシアの専門家によって説得力をもって証明されている」としている。

ヘルソンで何が起こっているのかを、外部から正確に把握することは不可能に近い。しかし、多くの証言が集まっており、多くの人が恐怖、脅迫、暴力、抑圧について語っている。

ヴィクトリアさんは、両親の脱出を図っている。

「ヘルソンでは今、人々が絶えず行方不明になっている。戦争が続いているが、この地域だけ爆撃がない」

(英語記事 Torture and fear in Russia-controlled Ukraine

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61658222

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