
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2日、同国領土の2割をロシア軍が支配しているとの見方を示した。ロシアによる侵攻が始まってから、3日で100日となる。
ゼレンスキー氏は、ルクセンブルクの国会議員らに向かい、ビデオ回線で演説。その中で、領土の2割をロシア軍に占拠されていると述べた。また、戦争の前線は全長1000キロ以上に延びていると説明した。
そして、「戦闘可能なロシア軍のすべての編隊が、この侵略に関わっている」と述べた。
セヴェロドネツクの攻防
ロシア軍は、東部ドンバス地方のセヴェロドネツク市への攻勢を強めている。
イギリスの国防当局は、ロシアが同市の大部分を占拠しており、「大砲の集中砲火によって、着実に局地的に前進している」とみている。
セヴェロドネツク市があるルハンスク州のセルヒィ・ハイダイ知事は、ロシアが「あらゆる方向から」同市の防衛線を突破しようとしていると述べた。
ただ、ウクライナ軍は反撃に転じており、「いくつかの通りで敵を押し戻し、何人かを捕虜にしている」と話した。
ハイダイ氏はまた、同市では激しい市街戦となっており、避難が「極めて危険」になっていると述べた。
市民1万5000人動けず
ゼレンスキー氏は2日夜のビデオ演説で、ドンバス地方の状況は大きく変わっていないが、ウクライナがセヴェロドネツクの戦闘で「いくらかの成功」を収めたと述べた。
同市には約1万5000人の市民が取り残されている。多くは、大規模施設が広がるアゾット化学工場に避難している。
ロシア軍は砲撃で同工場を標的にしたとされており、ゼレンスキー氏はこれについて1日、ロシアの「狂気」だと非難した。
ロシア、協力拒否のマリウポリ公務員を処刑か
ロシアに占拠されている南部マリウポリ市では、ロシアの支援を受けた新たな市当局への協力を拒否した公務員をロシア軍が処刑したとして、ヴァディム・ボイチェンコ市長がロシア軍を非難した。
ボイチェンコ氏によると、数十人の住民がオレニフカ刑務所に収容されているという。また、住民らがロシア軍に拷問されているとの報告が届いているという。BBCは、こうした内容が事実か確認できていない。ボイチェンコ氏は、マリウポリの陥落前に市外に避難している。
ボイチェンコ氏の側近は先週、マリウポリ市に対するロシアの包囲と砲撃で、少なくとも2万2000人が死亡したと米CNNに話した。
一方、北東部ハルキウ州では、ロシアの砲撃で女性1人が死亡、男性1人が負傷した。州当局が発表した。
また、西部リヴィウ州では、ミサイル攻撃で民間人5人が負傷したと、マクシム・コジツキー知事が明らかにした。
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ウクライナの資産「国有化」=ロシア
南東部ザポリッジャ州を占拠しているロシア当局は、ウクライナの国家財産と資源を「国有化」すると表明した。
ロシアのインタファクス通信によると、ロシア政府が樹立した現地当局幹部のアンドレイ・トロフィモフ氏は、国有化のための法令が署名されたと述べた。
国有化の対象となるのは、経済戦略で重要な土地、天然資源、施設。ロシアが侵攻を開始した2月24日時点でウクライナが所有していた財産も対象となるという。
チェロ奏者も西側制裁の対象に
こうしたなか、西側各国の指導者たちは、ロシアと同盟関係にある主要国に対する制裁を強めている。
アメリカの財務省は2日、一連の新たな制裁を発表。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と関係があるとされるヨット2隻や、同大統領の海外資産を管理しているとされるチェロ奏者セルゲイ・ロルドゥギン氏などを対象にしている。
プーチン氏と関係のある新興財閥(オリガルヒ)5人と、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官も、アメリカ国内の資産を凍結され、アメリカ本拠の企業との取引を禁じられる。
他方、欧州連合(EU)では、ロシアに対する第6弾の制裁措置の内容を、外交官らが最終的に詰めたとみられている。
この制裁には、ロシア産石油の部分禁輸が含まれる。ハンガリーは、ロシア正教会のキリル総主教を制裁対象から除外するよう要求。EU当局はこれを受け入れ、合意に至ったとされる。
欧州議会のロベルタ・メツォラ議長は、議会の敷地内にロシアのロビイストが立ち入りることを禁止すると発表した。
メツォラ氏は、ロシアの代表者たちから「ウクライナ侵略に関するプロパガンダや虚偽、有毒な説明を広める」能力を奪い去ることが狙いだと、ツイッターに書いた。
アメリカのジョー・バイデン大統領は1日、ウクライナに最大射程距離70キロの新型長距離ミサイルを供給すると発表した。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、アメリカとその同盟国が意図的に戦争を長引かせているとし、ミサイル供与は「火に油を注ぐ」と非難した。