2022年7月2日(土)

BBC News

2022年6月4日

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ロシアのウクライナ侵攻開始から100日がたった3日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシア軍に対して持ちこたえているウクライナ軍は「不可能を成し遂げた」とたたえた。他方、ウクライナに大量の穀物が滞留し、世界的な食品価格の高騰を引き起こしている問題について、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアがそうさせているわけではなく、西側の制裁解除を条件に、ベラルーシを経由して輸出するのが最善の解決策だと述べた。

ゼレンスキー大統領は政権幹部と共に首都キーウで大統領府の外に立ち、「世界で2番目に強い軍隊」を100日間も食い止めたウクライナ軍は「不可能と思われていたことを実現した」と述べる動画を、インスタグラムに投稿した。

https://www.instagram.com/tv/CeVl2T-DELG/?igshid=YmMyMTA2M2Y=


ゼレンスキー氏たちのこの姿は、侵攻開始直後の2月25日夜、同じ場所で政権幹部と共に立ち、国民に連帯と抵抗を呼びけた動画に呼応している。

2月末の動画と同様、ゼレンスキー氏は自分の周りにいるダヴィド・アラハミア与党代表、アンドリー・イェルマーク大統領府長官、デニス・シュミハリ首相、ミハイロ・ポドリャク大統領顧問を、ひとりひとり「ここにいる」と紹介した後、「大統領もここにいる。みんなここにいる」と述べた。

さらに「ウクライナの軍隊もここにいる(中略)この国の国民もここにいる。私たちはすでに100日間、この国を守った。勝利は私たちのものになる。ウクライナに栄光を」と、国民に語りかけた。


ゼレンスキー大統領はこの後、通信アプリ「テレグラム」に投稿し、ロシアが「戦略的目標を何ひとつ達成できていない」と批判。ロシアはその代りに「自分の無力を、民間インフラや市民に仕向けようとしている」と書いた。

さらに、「(ウクライナは)領土の一部を解放し、占領者に真っ向から反発し続けている」として、大統領は「みなさんのおかげで、ウクライナは生き延びて、100日目にも国を守り続けている。私たちは勝ちます」と書いた。

ウクライナのシュミハリ首相も侵攻開始100日についてコメントを発表。「ウクライナは100日間、欧州の家族の中で、自由な民主国家として生きていくという目標に向けて、自信をもって前進してきた。一方のロシアは明らかに、鉄のカーテンの後ろでの暮らしと、発展した世界からの孤立へ向けて進んでいる」と述べた。

これに対してロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ロシア軍が「一定の成果を達成」しており、「ウクライナの親ナチス軍勢」から一部地域を「解放した」と反論した。

ウクライナの健闘をたたえる欧州

侵攻開始から100日がたったのを機に、欧州からもウクライナの健闘をたたえるコメントが相次いだ。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「100日前にロシアはウクライナへの不当な戦争を開始した。ウクライナの人たちの勇気を、私たちは尊敬し、称賛する。欧州連合(EU)はウクライナを支え続ける」と述べた。

ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は、「ウクライナを英雄的に守り続ける戦いが100日目を迎えた(中略)ロシアの犯罪的な侵略に対抗する、ウクライナの人たちを支えられることを、私たちは誇りに思う」と述べた。

イギリスのメリンダ・シモンズ駐キーウ大使は、「ロシアが違法にウクライナを侵略し、何千人もの罪のない民間人を殺害してから100日(中略)これはウクライナの人たちにとって長く厳しい戦いになる。イギリスは皆さんを支え続けます」とコメントした。

この戦争に勝者はない=国連調整官

国連でウクライナ危機管理の調整官を務めるアミン・アワド氏は、開戦100日を受けて、「この戦争に勝者などいないし、今後も同様だ。むしろ私たちはこの100日間、失われたものを見続けてきた。命や家、仕事、希望などだ」と調整官は述べ、「必要なのは平和だ。この戦争は直ちに終わらなくてはならない」と強調した。

アワド調整官は、ウクライナで少なくとも1570万人が、喫緊の人道支援と保護を必要としていると指摘した。

国連によると、ウクライナでは人口の約3割にあたる1400万人近くが避難を余儀なくされ、500万人近い子供が教育を受けられなくなっている。

民間人の死傷者については、国連が厳密に確認しただけでも、4183人が死亡し、5014人が負傷した。

世界保健機関(WHO)によると、ウクライナ国内の医療機関への攻撃は269回に上り、少なくとも76人が死亡した。

世界食糧計画(WFP)によると、戦争による穀物の輸出封鎖と食品価格高騰のため、世界中で17億人が飢餓に直面する危険が高まっている。「急性の飢餓」に直面する人数は4700万人増えるおそれ。

穀物の輸出封鎖を否定=プーチン氏

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナに滞留する大量の穀類の出荷をロシア軍が黒海で阻止しているという事実はないと主張した。さらに、最善の解決策は、西側の制裁解除を条件に、ベラルーシを経由して輸出することだと述べた。

国営テレビのインタビューに対してプーチン氏は、「ウクライナの穀物輸出の問題を解決したいなら、頼むから、一番簡単な方法はベラルーシ経由だ。誰も止めてなどいない。しかしそれには、ベラルーシへの制裁を解除しなくてはならない」と述べた。

ウクライナには現在、国際市場に出荷できない穀類約2000万トンが滞留している。さらに、今年の収穫開始が目前に迫っている。

ウクライナが穀物を出荷できずにいる影響で、世界中で食品価格が急騰しており、世界的な飢えの悪化が懸念されている。

ウクライナのドミトロ・クレバ外相はこの問題について、「ウクライナはオデーサ港からの輸出再開のため、必要な条件を整備する用意がある。問題は、再開する輸送路をロシア軍がオデーサ攻撃に悪用しないかどうかだ。ロシアからの保証は今のところなにもない。国連やパートナーと共に、解決を模索している」とツイートした。

歴史的な間違いだとプーチン氏に伝えた=仏大統領

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は3日、フランスのメディアに対して、自分はプーチン氏に、ウクライナ侵攻という「歴史的で根本的な間違いを犯した」せいで、今ではロシアが「孤立」してしまっていると伝えたと明らかにした。

「国民と自分自身と歴史にとって、歴史的で根本的な間違いをしたと、本人に伝えた」と、マクロン氏は述べた。

近くキーウへ向かう可能性について質問されると、マクロン氏は否定しなかった。

マクロン氏は開戦後も他の西側首脳に比べると頻繁にプーチン氏と会談している。

最近では5月28日にドイツのオラフ・ショルツ首相と共に、電話で80分にわたりプーチン氏と語り合い、ウクライナの大統領と「真剣な直接対話」をするよう強く促した。さらに、世界的な食料価格高騰の中、ウクライナに滞留する大量の穀物などを出荷できるよう、南部の主要港オデーサの封鎖解除を求めた。

戦闘を拒否するロシア兵も=ウクライナ州知事

ウクライナ東部ルハンスク州のセルヒィ・ハイダイ州知事は3日、東部の主要都市セヴェロドネツク周辺で、ウクライナ軍はロシア軍の攻勢を押し戻しており、いったん制圧された地域の約2割を奪還したと話した。

知事が国営テレビに話したこの内容を、BBCは独自には検証できてない。

さらにハイダイ氏はインタファクス・ウクライナ通信に対して、「ロシア軍がセヴェロドネツクを完全制圧したとしきりに言われているが、完全に制圧したわけではない」と述べた。

ハイダイ知事によると、ロシア軍は多くの兵士や装備を失っており、ウクライナ東部の主要都市セヴェロドネツク制圧に「特定の部隊を再派遣しようとしている」ものの、自称「ドネツク人民共和国」の兵士たちが、自称「ルガンスク人民共和国」のために戦くことを拒否しているという。

知事のこの主張を、BBCは独自に確認できていない。

一方、BBCが取材した複数のロシアの人権活動家や弁護士によると、一部のロシア兵はウクライナの前線での経験を理由に、再派兵を拒否しているという。


BBCが取材したセルゲイさん(仮名)はこれまでに5週間、ウクライナでの戦闘を経験した。前線へ戻されるのを避けるため、弁護士に相談しながら、今ではロシアに帰国している。同様に、法的な保護を求めるロシア兵はほかにも大勢いるという。

「(ウクライナに戻って)殺し、殺されたくない」とセルゲイさんはBBCに話し、ウクライナでの経験がトラウマになっていると述べた。

「自分たちは世界最強のロシア軍だと思っていた」と苦々しく言うセルゲイさんは、実際の現場では暗視スコープなどの最も基本的な装備すらない状態で、行動を強いられていたと明らかにする。

「自分たちはまるで目の見えない子猫だった。この国の軍隊にショックを受けている。兵士にきちんと装備を与えるのに、それほど金はかからないはずなのに。どうしてそうしないのか」

チョルノービリ原発で破壊と略奪

ウクライナ政府によると、ロシア軍はチョルノービリ原発(ロシア語でチェルノブイリ)の施設内で、1000台以上のコンピューターを破壊し、複数のトラックや放射線の線量計などを盗んでいったという。

ただし、原発のウィタリ・メドヴェド広報部長によると、原子炉など発電施設そのものへの損傷はなく、「放射能に関しては、すべてが無事だ」という。

ただし、立ち入り禁止区域にはいくつかのホットスポットがあり、原発関係者は、ロシア兵が塹壕(ざんごう)を掘ったり、数千台の軍用車両が汚染土壌の上を走ったりしたからだとしている。

長距離砲はロシア国内に使わない約束=米大使

アメリカのウクライナ大使として着任したばかりのブリジット・ブリンク氏はBBC番組「ニューズアワー」に対して、アメリカは「ウクライナの自衛とロシアの侵略阻止を支援する」ことに集中していると述べた。

ブリンク大使は、アメリカがウクライナに長距離ロケット砲の提供を約束したのは、「状況の変化を(米政府が)認めた」ことのあらわれで、ウクライナ軍が必要としているものだからだと話した。

その上で大使は、ウクライナ軍は長距離砲を「ロシア領内にあるロシアの標的に対して」使用しないと、米政府はゼレンスキー大統領から「保証された」のだと明らかにした。

ブリンク氏はさらに、アメリカのヘンリー・キッシンジャー元国務長官が、ロシアとの和平実現にはウクライナが領土割譲に応じなくてはならないと発言したことについて質問され、「言い切るのは難しい」と答えた。

「2月24日の時点なら、ウクライナ政府は倒れてロシアが間もなくウクライナを占領し、多くの欧州諸国の国境まで迫ると、多くの人が言ったと思う。しかし、そうはならなかった」と大使は続けた。

「今後いずれは交渉が行われる。ゼレンスキー大統領自身がそう話している。いずれそのとき交渉するのは、ウクライナとロシアでなくてはならない」

(英語記事 Ukraine updates

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61688008

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