
11月開幕のサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会への出場をかけた欧州予選プレーオフは5日、英カーディフでA組の決勝が行われ、ウェールズが1-0でウクライナを下し、1958年以来64年ぶり2度目のW杯出場を決めた。4大会ぶり2度目の出場を目指したウクライナ代表はピッチに崩れ落ち、涙を流した。
試合は34分にウェールズが先制。ウェールズのFWギャレス・ベイル主将のフリーキックを、ウクライナFWアンドリー・ヤルモレンコが頭でクリアしようとしてオウンゴールとなった。
その後、ウクライナには何度か同点のチャンスが生まれたものの、ウェールズGPウェイン・ヘネシーの驚異的なゴールキーピングとDFベン・デイヴィスのディフェンスに阻まれ、試合は1-0で終了した。
ウクライナ国内でロシアとの戦闘が続く中、この試合はウクライナ代表のオレクサンドル・ペトラコフ監督や選手、そして国全体にとって、サッカー以上の重要な意味を持つものとなっていた。
ウェールズのベイル主将が勝利を喜ぶのをやめて落ち込むウクライナ代表選手のもとへ歩み寄り、握手や抱擁で慰める姿からもそれが見て取れた。
「全て出し切った」
ウクライナ代表DFで英マンチェスター・シティのスター選手、オレクサンドル・ジンチェンコは、「今日は1人ひとりが全てを出し切り、ピッチに全てを置いてきた」と述べた。
「全体的に見れば負けに値する内容とは思わないが、これがサッカーというものだ。そういうこともある」
「サッカーは感情を動かすものであり、私たちはファンに素晴らしい感情をもたらすことができる。しかし残念ながら、今日は自分たちが望む結果を得ることはできなかった」
「誰もが戦い続ける必要がある。サッカー選手として、国を代表するためにベストを尽くさなくてはならない」
「誰もが平和に暮らす必要がある。戦争を完全に止める必要がある。今はウクライナがこうなっているが、明日どうなるかは誰にもわからない。私たちは団結する必要がある」
ペトラコフ監督は「やれることはすべてやったと思うが、ウクライナ国内の人たちに私たちのチーム、私たちの努力を覚えていてもらいたい」と語った。
「得点できずに申し訳ないが、これがスポーツというものだ」
監督は試合後の記者会見で立ち上がり、集まった報道陣にこう語りかけ、大喝采を浴びた。「ウェールズに感謝の気持ちをお伝えしたい。W杯でのウェールズ代表の幸運を祈っている。ウクライナ全体が、ウェールズにとても感謝している」。
ウクライナ代表は1991年の独立以降、2度目となるW杯出場を目指していた。
2月に始まったロシアによる軍事侵攻の影響で、ウクライナを拠点とする選手の多くはほとんど、あるいは全く試合に出場できずにいる。
長年の夢叶えるため「感情を抜きに」戦う
ウェールズはW杯出場という長年の夢を実現するため、ウクライナとの試合に向けて繰り返していたことがあった。たとえどんなに冷淡に思われようが、試合の場では感情を抜きにして、ウクライナへの思いやりを一時的に脇に置いておくというものだった。
ウェールズ代表には1958年のW杯出場以来、あと一歩のところで出場を逃してきた歴史があった。しかし黄金時代を迎えた今、ウェールズ代表選手がこうした過去に縛られる必要はなかった。
欧州予選でウクライナ代表は、ロシアによる祖国侵攻という現実を背負いながらプレーした。
そしてウェールズは、過去の経験から国を解放するという強い意志を持って戦ったと言える。
(英語記事 Ukraine 'gave everything' in defeat - Zinchenko/Wales edge Ukraine to end 64-year World Cup wait)