2022年6月25日(土)

BBC News

2022年6月6日

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英与党・保守党は6日夜、ボリス・ジョンソン英首相について党首としての信任投票を秘密投票で行った。与党議員の58.8%が信任に賛成したため、党首および首相としての留任が決まった。ただし、41.2%の与党議員が不信任に投票したため、今後の党内対立や政権運営の行方が注目される。ジョンソン氏については、新型コロナウイルス対策のロックダウン実施中に官邸内で繰り返されていたパーティーをめぐり、与党内でも批判が高まっていた。

議員の要請にもとづき党首選の実施を決める保守党1922年委員会のグレアム・ブレイディー委員長が午後9時(日本時間7日午前5時)、信任投票の結果を発表した。それによると、投票した保守党の下院議員全員359人のうち、211人が信任を支持。148人が信任に反対した。


留任が決まった首相は、「説得力のある決定的な結果で、これで政府と国は前に進める」、「メディアがとても長いこと注目しがっていたことをもう後にして、国民が本当に求めていると私が思うことに注力できる」と結果を歓迎した。さらに、「私を支持してくれた同僚たちに感謝する」として、「今やるべきなのは、政府として、そして党として結束することだ」と話した。

首相官邸も、今回の結果で「首相の信任が更新された」と歓迎。政府は今後「有権者にとって大事な諸問題に、徹底的に集中」していくことができるとコメントした。


ジョンソン首相が過半数の信任を得たため、保守党の現行規則では、向こう1年は党首選は行われない決まり。

ただし、首相が今回党内から得た信任票の割合58.8%は、2018年12月の党首信任投票で当時のテリーザ・メイ首相が得た63%よりも低いことが、注目されている。

ジョンソン首相については、新型コロナウイルス対策のロックダウン実施中に首相官邸などで飲酒を伴うパーティーが相次いでいたことや、それについて下院で繰り返し「ルール違反はなかった」と答弁していたことが、与党内でも問題視されており、このところ複数の議員が不信任投票を求める書状を1922年委員会に送っていた。

前回の保守党信任投票では

保守党は2018年12月、当時のメイ首相について党首信任投票を行っている。メイ氏は同党下院議員317人のうち63%の200人から信任を得て、留任した。保守党は当時、メイ政権によるブレグジット交渉の進め方をめぐり党内で激しく対立していた。

ただし、メイ氏はその半年後の2019年5月に党首辞任を発表。これを受けて6月に党首選が行われ7月下旬にジョンソン氏の勝利と首相就任が決まった。続いて同年12月の総選挙では、ジョンソン首相が率いる保守党が大勝し、保守党は全野党より80議席多い、1987年以来最大の過半数を占めることになった。

BBCのクリス・メイソン政治編集長は、「政界のリーダーにとって、信任投票は常によろしくないものだ。党内の不穏な状態を示すものだし、下院議員は怒りを公然とあらわにしたりする。さらに過去の事例を見ると、たとえ信任投票に勝ったとしても、多くの場合それは始まりの終わりを意味する。このため今晩ジョンソン氏が勝っても、それで一件落着にはならないはずだ」と指摘している。

イギリスの次の総選挙は、2025年1月24日より前に実施されなくてはならない決まり。


<解説> クリス・メイソンBBC政治編集長

ボリス・ジョンソンにとって数字の上では勝利だが、いやはや、すごい数字だ。148人の保守党下院議員が、ジョンソン氏がいない方が国のためになると、そう考えたという結果だ。浮動票の有権者ではなく、148人の保守党議員が。

テリーザ・メイの信任投票で彼女を追い出そうとした与党議員の割合よりも、今回の方が大きい。そしてメイ氏は、信任投票の半年後には辞任していた。

ジョンソン氏の支持者たちは、当時と今とでは状況が大きく違うと言う。しかし、今回の投票結果から、この問題は消えてなくならないことが明らかだ。党内の反ジョンソン派はそもそも今回勝てるとは思っていなかっただけに、これは彼らにしてみると上出来の結果だ。

戦いには負けたが、ジョンソン氏を交代させるための戦争は続く――と、反乱分子はそう受け止めるはずだ。



与野党の反応

ジョンソン氏の留任決定を受けて、閣僚は次々と歓迎のコメントを出した。

ナディーン・ドリス文化相は「国を治めるという仕事に戻る時」だと述べ、「(労働党党首の)スターマーが選挙で対決したくないのは、1987年以来最大の勝利を保守党にもたらした、そして1979年以来どの政党より多い投票率(43.6%)を1400万票で獲得した、ボリス・ジョンソンだ」とツイートした。

リズ・トラス外相も、「同僚たちが首相を支援して良かった。私も首相を100%支持している。これからは仕事を進めなくては」とツイートした。

他方、最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は投票結果を受けて、「分裂する保守党は皆さんが直面する様々な問題に取り組む計画を何も持っていない」とツイートし、「イギリスの針路をもとに戻すのは労働党だ」と支持を呼びかけた。

スターマー党首は投票前、仮に今晩の投票でジョンソン氏が信任されたとしても、前例からすると、信任投票にかけられた首相は留任したとしても、「すでに打撃を受けており」、「これは終わりの始まりになる」と述べていた。

野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首も、ジョンソン氏は権力にしがみついたかもしれないが、「その評価はぼろぼろで、権限も今や完全に失墜した」と述べた。さらに、今回の結果から、保守党議員たちは「首相の振る舞いに完全に責任を負う」ことになったと指摘。「法律に違反しうそをつく人間を首相官邸に留めておくと、ギリギリながら投票したわけだ」と批判した。

野党・スコットランド国民党も、「イギリスはいまや国民の信頼と、自党議員40%以上の信頼を失った、何もできない総理大臣を抱えて、身動きが取れない状態にあるわけだ」と述べた。

党首信任投票実施

ブレイディー委員長は6日午前、ジョンソン首相への信任投票を求める与党議員の書状が、委員会規則で必要な54通を超えたため、現地時間同日午後6時~8時(日本時間7日午前2時~4時)にかけて、投票を実施すると発表した。


信任投票の実施が決まった時点で首相官邸は、ジョンソン首相が「自分の言い分を下院議員たちに伝える機会を歓迎する」とコメント。この後の投票は、「これまで何カ月も続いた憶測を終わらせる機会だ。これを機に政府は線を引き、先へ進めるようになる」と述べた。

BBCの取材で、ジョンソン首相が保守党議員たちに支持を呼びかける手紙を送ったことが分かった。首相は、「我々の敵が望む話題」ではなく、有権者にとって「本当に大事な」ことに集中できるようにする機会だと書いた。

党内の批判と支持

5月25日に公表された、パーティー問題に関する政府報告書は、感染対策の規則に沿わない数々のパーティーを許した官邸内の風潮について、官邸幹部に責任があると指摘していた。官邸パーティー問題のほかにも、政府による増税や、生活費上昇への対応に、与党内で不満が高まっていた。

首相は信任投票前に保守党議員たちと会談。保守党筋がPA通信に明らかにしたところ、英南部選出のチャールズ・ウォーカー議員は自分は官邸パーティー問題について首相の謝罪を受け入れており、「首相を放り出すのは残酷で血なまぐさい、衝撃でひどい、恐ろしいことだ」と述べた。一方、マーク・ハーパー元幹事長は、首相が留任するなら保守党議員たちは「擁護できないものを擁護」しなくてはならなくなると批判。これに首相は激しく反論したという。

ブレイディー委員長の発表に先立ち、かつてジョンソン首相の支持者だった元閣外大臣のジェシー・ノーマン下院議員が、官邸で「気楽に違法行為を行う風潮」のトップにジョンソン氏がいたと批判。そのほかにも、北アイルランドについて決まっていたブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)関連の取り決めを欧州連合(EU)との合意なく一方的に変更しようとしたり、イギリスに亡命を求める人たちをアフリカのルワンダへ移送したりする政府の方針についても、ノーマン議員は強い調子で批判した。

ほかにも、ジョンソン政権で汚職対策のかじ取りを担当してきた保守党のジョン・ペンローズ下院議員が6日、5日付の辞表を公表。官邸パーティー問題と政府報告書をめぐり、首相が指導力を示さなかったのは、閣僚行動規範に相当するとして、「それは私にとっては、辞職理由になるし、首相にとってもなるべきだ」として、書いた。

2019年夏の党首選で決選投票までジョンソン氏と争って敗れたジェレミー・ハント元保健相は、「自分は変化のために投票する」とツイート。これを受けてドリス文化相が、ハント氏による保守党の感染症対策を公然と激しく批判。党内対立があらわになった。


ほかの閣僚からは、ドミニク・ラーブ副首相が、「大問題への(首相の)対応は正しかった。命を助けるワクチンを確保し、この国の経済を活性化させ、ウクライナではプーチンの侵略に立ち向かった」と、ジョンソン氏を擁護した。

リシ・スーナク財務相も、「ワクチン接種事業からロシアの侵略に対する対応に至るまで、首相はこの国にとって必要な強い指導力を示してきた」と支持。「今日の投票で私は首相を支えるし、今後も支持して、経済の成長に注力し、生活費の問題に取り組み、新型コロナウイルスのせいで積みあがった他の医療の遅れなどをしっかり済ませていく」と述べた。


(英語記事 Tory MPs to vote on Boris Johnson's leadership / UK Politics live page

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61702545

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