2022年6月29日(水)

BBC News

2022年6月7日

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アイルランドの格安航空ライアンエアーが、南アフリカからイギリスへの便内で南アフリカ人の乗客にアフリカーンス語のテストを受けさせていることが発覚し、差別的だと非難を受けている。

アフリカーンス語は南アの11の公用語の1つだが、白人によるアパルトヘイト(人種隔離政策)の一環で使用されていたもので、今では多くの南ア人が理解できないという。

テストには、南アに関する一般的な質問が含まれている。

ライアンエアーは、南アフリカの偽パスポートで渡航する人を除外するために必要だと、このテストを擁護。声明で、「南アフリカのパスポートの不正利用が多発しているため、イギリスに渡航する乗客にはアフリカーンス語で書かれた簡単な質問票に答えてもらっている」と説明した。

「質問票に答えられない場合には、搭乗をお断りし、全額返金することになっている」

「不安と怒り感じた」

5月にスペインのランサローテ島からロンドンへの便に搭乗した南ア国籍のディネシュ・ジョセフさんは、ライアンエアーの乗務員にパスポートと搭乗券を取り上げられ、アフリカーンス語のテストを渡されて「ショックを受けた」と語った。

このことに抗議すると、乗務員に「これはあなたの言語です」と返されたという。

BBCの「ニューズアワー」の取材でジョセフさんは、「歯がゆく、とても感情的になるのを感じた(中略)自分の中に不安と怒りが湧いてくる感じがした」と語った。

「アパルトヘイトの言語はアフリカーンス語だった。多くの感情を呼び起こすようなテストを強要するのは、無配慮かつ無神経だ」

ジョゼフさんは「抑圧を感じ」たと述べた上で、アフリカーンス語を話すことと、その人が南アフリカ人であるかどうかは関係ないと主張した。

ネットでも怒りの声

インターネット上でも、ライアンエアーに対する怒りの声が上がっている。

ある人は、ライアンエアーの方針を「偏見の塊のようなごみ」と表現した。ツイッターでは、南アフリカは「もはやアパルトヘイトの時代ではない」、「自分たちを教育しろ」と同社に訴える人もいた。

2011年の国勢調査によると、アフリカーンス語を母語として話す人は約13%に過ぎない。母語の話者数としては、ズールー語、イシコサ語に次いで3番目になる。

BBCはライアンエアーに、なぜ他の南アフリカの言語ではなく、アフリカーンス語のテストを用意したのか尋ねたが、回答はなかった。

また、このテストはイギリスの国境当局が課しているものではない。アイルランドの国境当局も、南ア紙「デイリー・マーヴェリック」に掲載した声明で、このようなテストを要求していないと表明した。

中止は表明せず

このテストについては、ライアンエアーの欧州便すべてに適用されるという報道もあれば、イギリスとアイルランド路線だけだという報道もある。

別の報道によると、このテストには文法やつづりの間違いが多いという。南アフリカの国際電話コードは何か、首都はどこか、現大統領は誰かといった問題が含まれている。

南アのアフリカーンス語協会のコンラッド・スティンキャンプ会長は、このテストを「不条理」だと指摘。アフリカーンス語のイメージを向上させる試みを妨害していると述べた。

一方、同国外務省の報道官は、この論争には関与したくないと述べた。

クレイソン・モニエラ報道官はBBCの取材に対し、「これは内務省の問題だ。また、イギリス政府ではなく、民間の航空会社が行ったことだ。我々の理解では、その航空会社はその後、この行為をやめた」と話した。

しかし、ライアンエアーから6日の朝にBBCに届いた電子メールは、テスト中止には一切触れていない。


なぜアフリカーンス語が問題となるのか

  • 少数の白人が多数の黒人を支配していたアパルトヘイト時代、人々はアフリカーンス語の学習を義務付けられたほか、英語と共にアフリカーンス語での授業が強制された。これについて、全国で黒人系南ア人による抗議が起こっていた
  • 現在は学校では必修ではないが、選択科目として学ぶことができる
  • アフリカーンス語を母語としているのは南アフリカ人の約13%に過ぎない。その多くはカラード(南アのさまざまな民族を祖先に持つグループ)と、17世紀に欧州から移住したオランダ人やドイツ人、フランス人を祖先とする白人系南ア人だという
  • アフリカーンス語を理解できる人もいるが、多くは11ある公用語のうち1つしか話せないという
  • 2011年の国税調査によると、公共機関やビジネスの場で最も頻繁に使われているのは英語

「私はこのテストを通らないだろう」 ――ノムサ・マセコ記者、BBCニュース(ヨハネスブルグ)

南アフリカの人口の大半を占める黒人は、アフリカーンス語を抑圧者の非友好的な言語、さらには白人の人種差別主義者の言語とみなしている。地元の学校で強制的に覚えさせられた経験からくるものだ。黒人系南ア人はこれに反抗した。

中でも1976年6月16日のソウェト蜂起では、非白人地域の学校に通う黒人の何千人もの子供たちが抗議運動に参加し、アフリカーンス語での授業に反対した。

私がこの言語で何かを書いたりしゃべったりしたのは、高校時代が最後だ。

元々は白人向けだった学校での第2言語クラスで、私たちは学生として、進級のためにアフリカーンス語で良い成績を取らなければならなかった。

この経験から、私は高校を卒業して大学に進学した後、二度とアフリカーンス語を話さないと誓った。頭の中で、この言語を遮断した。

ライアンエアーの質問状を見ると、学生時代の思い出がよみがえる。私ならこのテストは不合格で、5問しか正解できなかっただろう。


(英語記事 South African outrage over Ryanair language test

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61715003

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