2022年6月30日(木)

BBC News

2022年6月10日

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ロシアの侵攻を受けているウクライナのために現地で戦い、捕虜になったイギリス人2人とモロッコ人1人が9日、ウクライナ東部で開かれたロシアの「代理法廷」で死刑を宣告された。

死刑判決を受けたのは、イギリス・ノッティンガムシャー出身のエイデン・アスリン氏(28)、同ベッドフォードシャー出身のショーン・ピナー氏(48)、モロッコ国籍のブラヒム・サウドゥン氏。イギリス人2人は、4月にロシア軍に捕らえられていた。

ロシアの通信社RIAノーヴォスチは3人について、雇い兵であること、暴力的に権力を奪ったこと、テロ活動実行の訓練を受けていたこと――の各罪で起訴されたと伝えた。

裁判は、ウクライナ東部の親ロシア派地域の「ドネツク人民共和国」にある裁判所で開かれた。同共和国も裁判所も、国際的に正当だと認められていない。

イギリスとウクライナは、戦争捕虜を保護する国際法に違反するとして、この判決を非難している。

イギリス人捕虜2人の家族らは、2人は共にウクライナ軍に長年所属しており、雇い兵ではないと主張している。

2人とも2018年からウクライナ在住で、アスリン氏にはウクライナ人の婚約者がいるという。

ロシアのタス通信によると、死刑を言い渡された3人は全員が上訴する意向だと、3人の弁護士が明らかにした。

英政府は非難

イギリス政府は、アスリン氏とピナー氏に対する死刑判決に「深い懸念」を抱いており、両氏の解放に向けてウクライナと協力し続けているとした。

首相官邸報道官は、戦争捕虜が「政治的な目的のために利用されてはならない」とし、ジュネーブ条約が定める「戦闘員免除」の対象になると規定されていると指摘した。

リズ・トラス外相は、今回の判決について、「正当性のまったくないでたらめな判決」だと非難。「私の思いは(捕虜の)家族とともにある。政府は全力で支援していく」と述べた。

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BBCのジェームズ・ランデール外交担当編集委員は、外交圧力が有意義な結果を生むとは考えにくいと説明。捕虜交換でイギリス人2人が解放される可能性はあるが、これまでの協議では前進がみられていないとした。

また、英政府が今回の判決への対応をウクライナ政府に任せるのではなく、自国の問題として大きく取り上げ、ロシアとの二国間の対立案件にした場合、イギリス人2人は雇い兵だとするロシア側の誤った主張を勢いづかせる恐れがあると、懸念の声が英政府内にはあるという。

法廷では

ウクライナの首都キーウから裁判を取材しているBBCのジョー・インウッド・ウクライナ特派員によると、捕虜3人はこの日、全員が黒い服を着て、法廷のおりの中で立っていた。判決が読み上げられると、集中して聞いていたという。

アスリン氏とピナー氏は、頭を下げ、身動きせずに立っていた。2人の間に立ったブラヒムさんは、不安そうに体を揺らしていたという。

ロシア国営インタファクス通信によると、アレクサンドル・ニクリン裁判長は、「判決を出すにあたって裁判所は、既存の規範や規則だけでなく、正義という不可侵の大原則によって導かれた」と述べた。

「法よりプロパガンダ」

ウクライナ外務省はBBCに対し、ウクライナ軍のために戦って捕らえられたすべての外国人は、国際人道法の下で戦争捕虜としての権利をもつと説明。ロシアが「捕虜に対して虐待、脅迫、非人道的な行動をすることは禁じられている」とした。

同省報道官は、3人の「いわゆる裁判とされるもの」は「ひどかった」と非難。ウクライナ政府として、「ウクライナ防衛者全員の解放のために全力を尽くしていく」と付け加えた。

そして、「こうした公開裁判は、法律や道徳よりもプロパガンダの利益を優先させ、戦争捕虜の交換制度を弱体化させる」と述べた。

親ロシア地域の状況

「ドネツク人民共和国」(DNR)は、2014年に親ロシア派の分離主義者たちによって設立された。

オーラ・ゲリン国際担当編集委員によると、DNRでこれまで処刑が行われたかどうか、今後実際に捕虜3人を処刑するのかどうかは不明だという。また、DNR当局がロシアのウラジーミル・プーチン大統領から直接命令されていることはほぼ間違いないという。

ゲリン編集委員は今回の判決について、ウクライナへの軍事支援をめぐって、イギリス政府に圧力をかけて困らせる、ロシア政府の戦術とみられると説明した。

プーチン氏は2月24日のウクライナ侵攻開始に先立ち、ウクライナ東部のドネツクとルハンスク両州の分離独立を認めると発表。北大西洋条約機構(NATO)や西側諸国は、これを非難した。

侵攻から1カ月の時点で、ロシアはキーウ制圧の野望を縮小し、東部ドンバス地方に焦点を移した。

ここ数週間、東部ルハンスク州セヴェロドネツクが戦争の焦点となっている。ウクライナ軍とロシア軍は支配権をめぐり、激しい市街戦を繰り広げている。

(英語記事 Captured Britons sentenced to death in Ukraine

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61754930

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