2022年6月28日(火)

BBC News

2022年6月13日

»著者プロフィール

アイーシャ・ブクシュ、BBCニュース、ロンドン

ロンドン西部の高層公営住宅グレンフェル・タワーの火災で72人が亡くなってから、14日で5年になる。5年たった今も、助かった住民や活動家は、正義を求めていると話す。

2017年6月14日未明、24階建て127戸のタワー棟から出火し、大火災となった。刑事事件としての捜査は続いているものの、ロンドン警視庁は、独立調査委員会による中間報告が公表されるまでは、訴追に動かない方針を示している。

内務省によると、具体的な立法措置につながった独立調査委による勧告は、半数以下にとどまっている。

こうした対策の遅れから、多くの被害者や遺族は、先に進めないと感じている。

「正義の遅れは正義の否定だ」

エド・ダファーンさんは火災当時、グレンフェル・タワーの17階に住み、消防士に救助された。火災が起きる前から、建物の外装材に関連した火事の危険について発言していたという。

「グレンフェルを契機に社会が変わると本気で信じていた。なのにあれから5年たって、進歩したと言えるものは少なすぎる」

今では被害者や遺族を代表する団体「グレンフェル・ユナイテッド」で積極的に活動しているエドさんは、建築基準などの改正や、火災の責任者の起訴を求めて闘っている。

「自分にとって正義とは真実で、刑事訴追で、失われた72人のためにこれを実現したという成果を作り出すこと」だと、エドさんは言う。

<関連記事>


独立調査委は、タワーの外装に使われていたアルミ複合材(ACM)が、炎が急速に燃え広がる原因になったと発見した。イギリス国内では今なお多くの集合住宅が、類似の外装材を使っているとみられている。

「いまだに多くの人が今晩も、グレンフェルと同じ外装材を使った住宅やアパートで、眠りについているなど、まったく容認できない」と、エドさんは話す。

「未解決の案件がこれだけたくさん残ったままで、先へ進むのは難しい」ともエドさんは言い、「意味のある変化が必要だ。正義の遅れは正義の否定だ」と批判する。

「がんばり続けるのは大変だけれども、やらなくてはという思いがあまりに強いし、自分にとってはこうすることが癒やしのプロセスの一部でもある」

「時間がたてば楽になると言うけれど……」

ムニラ・マフムードさんは、夫や子供2人と一緒に炎から逃げた。

「私たちはまだ、あの時から立ち止まったまま。時間がたてばたつほどつらくなる。時がたてば楽になると言うけれども、私にはその逆だと思う」

正義を求める運動によって変わったことはあまりないと、ムニラさんは考えている。

「そこが何よりもつらい。何も変わらないし、正義もない」

「今でも多くの家族が危険にさらされて、『またグレンフェルと同じことが起きるのか?』と不安なままでいる。グレンフェル・ユナイテッドや生存者や遺族のおかげでみんながんばって、同じことが起きないように日夜闘っている」

「それでもいまだに、(危険な)外装材に覆われた家で寝ている人たちがいる。まるで悪夢だ」

正義が実現したと思えるようになるには、誰かが責任をとらなくてはならないとムニラさんは言う。

「もう証拠は出ていて、みんな見たし聞いたのに、まだ何を待っているのか。誰にも分からない」

「本格的な進展をまだ待っている」

モハメド・ラスールさんはムニラさんの夫だ。グレンフェル・タワー調査委員会で最近、証言した。

「大勢が大変な思いをしている。調査は延々と続いて、5年たつのにまだ誰も起訴されていない」

「確かに委員会の調査を通じて明らかになったことはたくさんあるし、警察の側から本格的な進展が出てくるのをまだ待っている」

モハメドさんにとっての正義とは、「多面的」なものになるという。

「正義には色々なレベルがある。究極的には、(安全管理の)責任者が起訴されて、その過失や怠慢、場合によっては意図的な人命軽視の責任をとらされることがそうだ。これにかかわった全員が」

待ち続けることで、気持ちの上で「くたびれ果ててしまう」とモハメドさんは言う。

「何も本格的な変化がないとなると、自分の心にとっても、このコミュニティーにとっても、大打撃になってしまう」

(英語記事 Grenfell Tower survivors: 'Justice delayed is justice denied'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61781223

関連記事

新着記事

»もっと見る