
世界保健機関(WHO)は14日、欧米や中東で拡大している「サル痘」について、専門家と一緒に新たな名称を検討していると明らかにした。名称をめぐっては30人以上の科学者が先週、「差別的でなく、烙印を押すようなものではない名称が緊急に必要」だと表明していた。
サル痘は、西アフリカやアフリカ中部に多いウイルス性感染症で、発疹や発熱などの症状が出る。このところ、欧州やアメリカ大陸などで感染が確認されている。
サル痘の自然宿主はサルではなくネズミであると考えられている。
科学者たちは、サル痘をアフリカ系のものだと呼び続けることは不正確かつ差別的だと指摘。新たな名称として「hMPXV」を挙げた。だが、WHOがどう判断するか待つ必要がある。
この数週間で、約1600人の感染が世界中で報告されている。サル痘がすでに流行していた国々では72人が死亡している。一方で、イギリスなど新たに感染が確認された32カ国では死者は出ていない。
最新のデータによると、6月12日時点のイギリス国内の感染状況はイングランドで452人、スコットランドで12人北アイルランドで2人、ウェールズで4人となっている。
サル痘の症状は軽いとされるが、英政府はさらなる感染に備えるため天然痘ワクチンを購入している。
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「公衆衛生上の緊急事態」を協議
WHOは来週に緊急委員会を開き、サル痘について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当するかどうか判断するという。
これまでに、豚インフルエンザやポリオ、エボラ出血熱、ジカ熱、新型コロナウイルスの流行を受けてPHEICが宣言されている。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、「サル痘の感染拡大は異常で懸念すべきだ」と述べた。
「そのため、私はこの感染拡大が『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』にあたるかどうかを評価するために、国際保健規則に基づく緊急委員会を来週招集することを決めた」
サル痘とは?
サル痘は天然痘と似ているが、症状は軽く、感染力も低い
症状
- 発熱、頭痛、腫れ、筋肉痛、倦怠(けんたい)感
- 顔や手足にかゆい発疹や傷ができる
感染経路
- 感染しているヒトや動物との濃厚接触
- 発疹が出ている人の衣服や寝具への接触
治療
- 天然痘ワクチンや抗ウイルス薬で症状を緩和できる
(出典:WHO)