2022年7月5日(火)

BBC News

2022年6月16日

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ボリス・ジョンソン英首相の倫理顧問、クリストファー・ガイト男爵が15日、辞任を発表した。ガイト卿は先月、ロックダウン中の官邸パーティー問題をめぐり首相が閣僚行動規範に違反したかどうか「当を得た疑問」があると報告していた。

女王の秘書官から昨年4月に内閣倫理顧問となったガイト卿は、「遺憾ながら、『閣僚のための独立顧問』の職を辞することが正しいと感じる」と辞任を発表した。理由は示さなかった。

ガイト卿は前日には下院行政委員会で、ジョンソン首相の行動に「いらだって」いたと発言している。

ガイト卿の辞任発表を受けて政府報道官は、「ガイト卿は自らの役目と首相に前向きに尽くしていただけに、今回の決断に驚いている」とした上で、「残念なことだが、ガイト卿にはこれまでの公への奉仕に感謝する」と述べた。

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報道官はガイト卿の辞任理由については触れなかったが、政府は今週ガイト卿に対し、「国益につながり、かつて超党派の支持を得ていた、商業的にデリケートな案件について、助言を求めていた。これについて政府はまだ決定をしていない」と明らかにした。

首相官邸は、これがどのような内容なのか明示していない。

官邸の情報筋はBBCに対して、ガイト卿の辞任はジョンソン首相にとって「まったく予想外でなぞ」だと話した。「つい先日の13日に卿はあと6カ月、留任できないかと尋ねていたばかりだ」という。

ガイト卿の前任者、サー・アレックス・アランは2020年11月に辞任している。プリティ・パテル内務相が内務省をはじめ複数省庁の公務員を威圧し、いじめたと認定する調査報告書をめぐり、ジョンソン首相がパテル内務相の続投を認めたことが、辞任のきっかけになった。

先月に辞意か パーティー問題で首相に説明要求

報道によるとガイト卿は先月下旬、新型コロナウイルス対策のロックダウン中に官邸などで飲食を伴うパーティーが相次いでいた問題に関する政府調査報告書が発表されたのを機に、ジョンソン首相が自分の行動を国民に説明しない限り、自分は抗議辞任すると首相に伝えていたという。

ガイト卿は今月14日には下院行政委員会に出席し、「辞任は、顧問に与えられた数少ない、いささか直接的な武器だ。自分のいらだちへの対応があのように形になったことはありがたいと思っている」と述べた。

そのガイト卿の今回の辞任について、最大野党・労働党のアンジェラ・レイナー副党首は、「もはや首相が自ら選んだ倫理顧問さえ、あきらめて辞任するところまで、首相に追い込まれてしまった」と批判。「首相自身が選んだ倫理顧問さえ、その行動を弁護できないなら、彼に政府を率いる資格があるなどといったい誰が信じられるというのか」と述べた。

野党・自由民主党のウェンディ・チェンバレン院内幹事は、「ボリス・ジョンソンが選んだ倫理顧問が2人とも辞任したとなれば、職を去るべきなのは本人だというのは明らかだ」と述べた。

2002年から3年間、公務員トップの官房長を務めたアンドリュー・ターンブル男爵は、ジョンソン首相について「行動のパターンがある。自分を批判したり妨害したり、変化を強いる者は誰だろうと、その力を奪ったり圧力をかけたり、最後にはわきに追いやろうとする」のだとBBC番組ニューズナイトに述べた。

その上でターンブル卿は、「ボリス・ジョンソンの問題行動リストはもうあまりにたくさん積みあがっているので、新たな指摘がいまさら一つ増えたところで何も変わらない」として、首相は下院によって与党党首として解任されない限り、辞任しないだろうとの見方を示した。

首相の行動が規範違反にあたるか


ジョンソン首相は、ロックダウン中の2020年6月に首相官邸で開かれ、自分も出席した自分のサプライズ・バースデー・パーティーについて、今年4月にロンドン警視庁から罰金を科せられた

当時これを受けて首相はガイト卿に書簡で、「コロナ規制に違反しようという意図はなかった」と書き、自分は「議会とイギリス国民にすべてを説明してきた」と述べていた。

イギリス政府の閣僚行動規範は、閣僚には包括的な順法義務があると定めている。

行動規範に違反した閣僚は辞任するのが、イギリス政界での慣例になっている。

5月31日に公表された閣僚の利害に関する年次報告書でガイト卿は、「自分自身の行動を(閣僚規範に)照らして判断されることを、首相は受け入れないかもしれないという印象」が生じていると指摘していた。

さらに、官邸でのパーティーについて首相自身が警察の罰金処分を受けたことから、「その事実だけをとっても、閣僚には包括的な順法義務があると定める閣僚行動規範の違反にあたらないのかと、当を得た疑問が出ている」と述べていた。

ガイト卿は閣僚倫理顧問の前は女王秘書官、さらにその前は陸軍情報将校や外交官を歴任していた。女王秘書官を辞任後、一代男爵に叙任され、「Lord(卿)」と呼ばれるようになった。


<解説>見るからにやりにくそうだった――クリス・メイソン政治編集長

ガイト卿は15日夜、首相の首席秘書官に電話で、辞意を伝えた。ジョンソン氏が知らされたのは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話を終えて間もなく。午後6時半ごろのことだった。

官邸にはこのタイミングに意表を突かれた人も一部いたものの、ガイト卿はしばらく前から見るからにやりにくそうだった。

ジョンソン首相がコロナ関連法に違反したのは、閣僚行動規範に抵触しないのかと問いただすのは当を得てことだと、先月の報告書で指摘したばかりだ。

さらに自分の役職について「現状の取り決めから、独立性が不十分なため、国民の信頼を獲得できない」と不満を漏らしていた。

ただし、今のところはまだなぜガイト卿が辞任したのか、決定的には分かっていない。辞表が公表されていないからで、それ自体も異例だ。

首相は16日朝にはガイト卿に返信する予定で、それは公表されるかもしれない。


(英語記事 Lord Geidt quits: Boris Johnson's ethics adviser resigns

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61820913

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