
国連は15日、ウクライナ東部ルハンスク州セヴェロドネツクで数千人の市民が身動きが取れずにおり、必需品が底を尽きつつあると警告した。
セヴェロドネツクに残る市民の多くはアゾト化学工場の地下にあるバンカーに避難している。
街から市外へと続く橋は今週初めに全て破壊され、1万2000人もの人々が街から出られなくなっている。
ロシア軍は現在、セヴェロドネツクの大部分を支配下に置いている。この数週間、同市の完全掌握がロシア軍にとって最優先の軍事目標となっている。
「水と衛生設備がないことが一番心配だ。水がなければ人は長く生き延びることができないので、我々はとても懸念している」と国連人道問題調整事務所(UNOCHA)の広報担当サヴィアノ・アブレウ氏はBBCに述べた。
また、セヴェロドネツクでは食料品や医療体制も不足していると付け加えた。
国連はセヴェロドネツクで身動きが取れなくなっている人々を援助したい考えだが、戦闘が続く中で女性や子ども、高齢者を含む一般市民の元へ安全にたどり着ける保証はない。
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ロシア国防省は14日、アゾト化学工場の地下から市民を避難させる「人道回廊」を15日に設置すると発表した。しかしこれまでのところ、市民を街の北側にあるロシアの支配地域に避難させるという人道回廊が実際に機能したかどうかは確認されていない。
親ロシア派の分離主義者は15日、ウクライナ軍が市民の避難を妨害したと主張した。
「アゾト化学工場で、(ウクライナ側の)武装勢力が避難を妨害しようとしている! 武装勢力は迫撃砲と戦車を使って攻撃を開始した」と、ウクライナ東部の自称「ルガンスク人民共和国」のロディオン・ミロシュニク駐ロシア「大使」はメッセージアプリ「テレグラム」に書いた。
BBCはこの主張について検証できていない。
ロシアメディアは、ウクライナ軍とともに民間人が工場の地下に閉じ込められていることについて、軍が地元住民を「人間の盾」に使っていると非難した。
ロシア国営の天然ガス大手「ガスプロム」傘下のテレビ局「NTV」は、工場の地下に子供を含む1200人が取り残されている可能性があると伝えた。
ロシア軍、 装甲部隊の2割以上を喪失か
米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、ロシア軍が装甲部隊の約20~30%を失っているとの見方を示した。
ミリー氏はベルギー・ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で、記者団に対し、「これは重要かつ大きな出来事」だとした。
東部ドンバス地方ではウクライナ軍は劣勢であるものの、「戦争は単なる数のゲームではなく、それをどう使うかが重要」だと主張。
ロシア軍は大規模な砲撃を行っているが、「必ずしも軍事的な効果を上げているわけではない」と述べた。
一方でウクライナ側については、「はるかに優れた砲撃技術」を駆使し、火力と戦術の両面で「戦術上非常に効果的に戦っている」とした。
毎日約100人のウクライナ兵が死亡し、100〜300人が負傷しているとのメディア報道については、アメリカ側の評価と「ほぼ同じ」だとした。
米国の武器供給はニーズ重視
ロイド・オースティン米国防長官は15日、アメリカがウクライナに対し、新たに10億ドル規模の武器の追加供与を行うと発表した。
供与する武器の量が「少なく」、供与スピードが「遅すぎる」のではないかと問われると、アメリカとその同盟国は「変わらず、ウクライナのニーズに焦点をあてている」とオースティン氏は答えた。
また、ウクライナ国防省などウクライナ指導部と緊密に連携し、戦場の状況を把握し、何が必要かを議論しているとした。
(英語記事 Thousands of civilians trapped in key Ukraine city /Live Page)