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BBC News

2022年6月17日

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ボリス・ジョンソン英首相の倫理顧問を辞任したクリストファー・ガイト男爵の辞表が16日、公開された。首相から受けた要求によって「不可能で不愉快な」立場に追い込まれたためと説明した。

倫理顧問は、閣僚行動規範について首相に助言する立場。ガイト卿は15日に辞任を発表した際、その理由を語っていなかった

政府のウェブサイトに掲載された辞表によると、ガイト卿は新型コロナウイルス流行によるロックダウン中の官邸パーティー問題をめぐり、辞任を検討したと説明。だが、首相の顧問として「信頼に足る活動を続ける」ことは可能だと、「ごくわずかな差ではあるが」判断していたという。

しかし、今週に入って助言を求められた別の問題が、規範に故意に違反しているも同然だったと明らかにし、「この要求が、私を不可能かつ大変不快な立場に追い込んだ」と述べた。

また、首相が「多少でも自身の規範を意図的に破る行動をしているかもしれない」という考えは、「政治的な目的のために」規範を停止させている点で侮辱的だと説明。

「これは規範に対する敬意をあざ笑うだけでなく、女王陛下の内閣に対する行動規範を止めることを認めることになる。私はこれに加担することはできない」とした。

首相の説明は

この辞表を受けてジョンソン首相は、 将来的に貿易救済調査局(TRA)に関して下すかもしれない決定について助言を求めたと説明。「必要不可欠な産業を守るという国益のため」だったと述べた。

その上で、この提案は「国内法に沿ったものだが、WTO(世界貿易機関)の下での義務に抵触すると見られる可能性がある」と付け加えた。

ジョンソン氏は、ガイト卿の助言を仰ぐことで「確実に、適切な行動を取りたかった」と述べた。

首相官邸は、首相は現在、ガイト卿の後任を指名するかを検討していると述べた。一方、ガイト卿が指摘した問題が、 WTOの義務に違反する可能性があるにもかかわらず、中国への鉄鋼関税を維持する計画に関連しているのではないかという質問にはコメントしなかった。

倫理顧問は首相に閣僚行動規範について助言を行うほか、首相から要請があった場合に限り、閣僚の規範違反について調査を行う。

イギリス政府の閣僚行動規範は、閣僚には包括的な順法義務があると定めている。行動規範に違反した閣僚は辞任するのが、イギリス政界での慣例になっている。

ジョンソン政権で辞任する倫理顧問はガイト卿で2人目。前任のサー・アレックス・アランは2020年、プリティ・パテル内務相が公務員を威圧しいじめたと認定する調査報告書をめぐり、ジョンソン首相がパテル内務相の続投を認めたことに抗議し、辞任した。

サー・アレックスはBBCのニュース番組「ニュースキャスト」に出演し、「ガイト卿のような名誉ある人物が、辞任するしかないと思うような立場に置かれたのは、恐ろしいことだ」と述べた。

また、ガイト卿の辞任は官邸パーティー問題を含む「複合的な問題」によるものだと理解していると述べた。

その上で、「どんな度合いであれ、閣僚が意図的に規範に違反したこの特別な問題」は、ガイト卿にとって「最後のわら」だったと語った。

しかし財務省のサイモン・クラーク首席政務次官は、ガイト卿が辞任した問題は、政府が「イギリスの産業部門を支援するために最善を尽くそうとしている」案件であり、「個人の倫理や行動の問題」とは関係がないと示唆した。

野党の反応は

最大野党・労働党のエミリー・ソーンベリー影の法務長官は、サー・アレックスに続くガイト卿の辞任によって「首相官邸の心臓部で何かが腐っている」ことが明らかになったと語った。

また、ガイト卿は「我慢の限界」で、首相を擁護することは「不可能」で「もうたくさんだ」と悟ったのだと述べた。

自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首は、ジョンソン氏が「単に彼の取り巻きを任命することができないように」、次の倫理顧問を議会が審査できるようにするべきだと述べた。

スコットランド国民党(SNP)のブレンダン・オハラ議員は、ガイト卿の辞任は「ジョンソン首相にとって新たな屈辱だ」と語った。


<解説>倫理顧問辞任とWTOとの関連は? ――BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)チーム

イギリスの貿易救済調査局(TRA)は比較的新しい組織だ。欧州連合(EU)離脱後に設立されたもので、イギリスの諸業界を保護するために取るべき方針を決定する。

同局が初めて下した大きな判断は鉄鋼業に関するものだったが、これは政府によって覆されている。政府は鉄鋼製品の保護品目を、当局が推奨していた10品目から15品目に拡大した。

この措置により、イギリス企業が一定量以上の外国製鋼材を購入する際のコストは上昇した。TRAは声明の中で、ガイト卿の辞表はこの件に「言及しているように見える」と述べている。

そしてジョンソン氏の書簡の内容と合わせると、閣僚らがイギリスの産業を保護するために、WTOの規則と国際法に明らかに違反する措置を取ることを提案し、ガイト卿が辞任しなければならないと感じたというように読める。

しかし、どうしてこのようなことが起こったのかは、全く不明だ。

WTOの規則も不透明である可能性がある。一般的には、ある国の活動に対して他の国が苦情を申し立て、WTOはルールが破られたかどうかを裁定する。

WTOが閣僚らにとって不利な裁定を下しても、閣僚が辞任するとは限らない。

ガイト卿の前任者であるサー・アレックスも、政府が2020年9月に国内市場法案を提出した際、閣僚は「特定的で限定的な」国際法違反の可能性を認めたものの、辞任しなかった。

さらに欧州委員会は、イギリス政府が英・北アイルランドとEU加盟国アイルランド間の通商について定めた「北アイルランド議定書」を守っていないことが国際法に違反しているとみている。


(英語記事 PM put me in odious position, says ex-ethics chief

提供元:https://www.bbc.com/japanese/61836804

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