
マット・マーフィー、アリス・デイヴィース、BBCニュース
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は18日、首都キーウを出て、南部のミコライウとオデーサの前線を初めて訪れた。南部では同国軍が徐々に前進しているとされる。
大統領府によると、ゼレンスキー氏はウクライナ軍が持ちこたえているミコライウで、破壊された建物を視察。兵士や当局者、医療関係者らに会った。また、侵攻開始直後からロシア軍の定期的な砲撃を受けているオデーサも訪れた。
両都市は、黒海沿岸の掌握を目指すロシア軍の主要目標になっている。ロシア軍はここ数週間、ウクライナ東部ドンバス地方の完全制圧に向け、攻撃を集中させている。
ゼレンスキー氏はオデーサの部隊に、「あなたたちが生きていることが大事だ。あなたたちが生きている限り、この国を守る強固なウクライナの壁になる」と述べた。
また、「ウクライナ国民と国を代表して、あなたたちの見事な仕事と、完璧な軍務に感謝したい」と話した。
ウクライナ軍が反撃か
一方、ミコライウでは、ゼレンスキー氏は兵士にメダルを手渡し、「ウクライナを大切にする。私たちにはこれしかないので。そして、自分自身を大切にする。それをできるのはあなただけだ」と語りかけた。
ミコライウは長期間、ロシア軍の激しいロケット砲や砲弾の爆撃を受けている。ロシア軍が侵攻後まもなく制圧した南部の都市ヘルソンから、北西に約100キロしか離れていない。そのミコライウでは現在、ウクライナ軍がじりじりと徐々にロシア軍を押し戻しているとされる。
ゼレンスキー氏は、ウクライナを訪れる西側指導者らとキーウでたびたび面会している。東部ハルキウなど、戦闘が激化している前線地域にも行き、ロシア軍に屈しない姿勢を示している。
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ミコライウ州のヴィタリー・キム知事は最近、ロシア軍がウクライナ軍の反撃を遅らせるため、ヘルソン近郊の橋を爆破していると話した。
地元当局者らは、西側が約束した長距離兵器の輸送が間に合うかどうかに、ウクライナの前進がかかっているとしている。
こうした中、イギリスの国防省は18日、定例の戦況分析で、ロシアはドネツク州にさらに深く攻め込む可能性が高いとの見方を明らかにした。同州は、ルハンスク州と共にドンバス地方を構成している。
ウクライナ軍によると、ドネツク州クラスノピリヤとルハンスク州シロティネの付近で、同軍が「ロシアの攻撃をはね返した」という。また、同州セヴェロドネツク周辺で、作戦を継続しているという。
ルハンスク州のセルヒイ・ガイダイ知事はAFP通信に、ロシア軍がセヴェロドネツクの「部隊がいる位置を24時間体制で砲撃している」と述べた。同市は同州におけるウクライナ軍の最後の拠点となっている。
また、分離主義者が掌握している東部ドネツク市の親ロシア派当局者は、ウクライナによる砲撃で民間人5人が死亡、12人が負傷したと述べた。
こうした中、ウクライナ国家安全保障・国防会議のオレクシー・ダニロフ書記は、最大500人のウクライナ兵が連日死亡している可能性があるとする、一部の政府関係者らの報告を否定した。
ダニロフ氏は、そうした発言をする政府関係者が、該当情報にアクセスできる立場にいなかったと話した。ウクライナ当局はこれまで、1日あたりの死者は最大100人だとしている。
キーウではこの日、ヴィタリ・クリチコ市長が、ウクライナが和平交渉に入るのは「最後のロシア兵がウクライナを去った」後だけだと、BBCに語った。
元ボクサーのクリチコ氏は、ロシア国民はいずれ、自国の兵士がウラジーミル・プーチン大統領の野望のためだけに死んでいることに気づくだろうと述べた。
キーウを訪れていたイギリスのボリス・ジョンソン首相は、帰国した17日、「ウクライナ疲れ」が見え出していると警告。ロシアとの戦争においては、同盟国が長期的にウクライナ支持を示すことが重要だと述べた。
また、ロシア軍がすでに進撃している地域をプーチン氏が確保すれば「大惨事」になると述べた。
ロシアは2月24日にウクライナ侵攻を開始。隣国の「脱ナチス」と「非武装」が目的だと主張してきた。
その後の激しい戦争で、ウクライナでは民間人4500人以上が死亡し、5600人近くが負傷したと、国連はみている。戦闘員の死傷者は、双方で数千人に上っている。
国連によると、1300万人以上が自宅を出て避難している。
西側諸国は、ロシアに厳しい制裁を科し、ウクライナに兵器を供給している。だが、核保有超大国ロシアとの戦争には、直接介入はしていない。