
フランスの行政裁判の最高裁にあたる国務院は21日、ムスリム(イスラム教徒)女性が肌を覆う水着「ブルキニ」について、公共プールでの着用を禁止した政府方針を支持する判断を示した。南東部グルノーブル市が先月、ブルキニを含むあらゆる水着を許可すると発表したことで、政府との司法闘争に発展していた。
「ブルキニ」は、ムスリム女性が顔を隠す装束「ブルカ」と、「ビキニ」を組み合わせた造語。顔と手足以外が隠れる水着を指し、これを着用すれば信仰を守りながら泳げるとされている。
一方、フランスでは公共の場で宗教的象徴をまとうことに厳しい目が向けられている。ジェラール・ダルマナン内相は、グルノーブル市の政策について、フランスの世俗主義に反する「受け入れがたい挑発」だと述べていた。
こうした中で国務院は今回、「宗教的な要求を満たすための選択的な例外」を認めるわけにはいかないとの判断を示した。
フランスでは、公務員は職場で宗教的な象徴を身につけることが禁じられている。しかしグルノーブルのエリック・ピオール市長は、この禁止措置はプールを含む公共機関の利用者が服装を自由に選ぶことには及ばないと主張した。
グルノーブルの裁判所は、公共サービスにおける中立性の原則を著しく損ねるとして、ブルキニの着用許可を停止。その後、判断は国務院に委ねられていた。
ブルキニめぐる議論
フランスでは2016年、複数の地方自治体が禁止条例を発表したことからブルキニをめぐる議論が高まった。
反対派は、ブルキニがフランス社会の分離主義的な視点を提供していると考えている。また、ムスリム女性にブルキニを着用するよう圧力をかけることにもなると主張している。
極右「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首は、ブルキニは「イスラム原理主義のプロパガンダの服装だ」と非難している。
公共プールでのブルキニ禁止の背景には衛生的な側面もある。フランスでは男性は通常、ぴったりとした水泳パンツを着用しなければならない。グルノーブル市は長めの水泳パンツを許可することでこの規則を覆すそうとしたが、これも失敗に終わっている。
一方でブルキニ支持者は、女性が体を隠すことを望むなら、その選択は残すべきだと主張。宗教的な過激さを示唆するものではないと述べている。