
アメリカの元国民的コメディアンのビル・コスビーさん(84)に対する民事訴訟で、カリフォルニア州の裁判所の陪審は21日、コスビーさんが1975年にロサンゼルスの「プレイボーイ・マンション」で未成年に性的暴行をはたらいたと認定した。
原告のジュディー・フースさん(64)は裁判で、16歳だった当時、コスビーさんから性行為を強要されたと証言していた。
陪審はこの日、コスビーさんに対し、50万ドル(約6800万円)の損害賠償の支払いを命じた。
コスビーさんは1980年代のテレビ番組「コスビー・ショー」の出演で最も知られ、「アメリカのお父さん」と呼ばれた。
しかし2014年以降、50人以上の女性がコスビーさんから性的被害を受けたと告発し、問題となった。うち1件は刑事裁判になり、コスビーさんは2018年に禁錮3~10年の実刑判決を受けた。だが、2021年7月にペンシルヴェニア州最高裁が有罪判決を覆し、釈放された経緯がある。
フースさんは2014年にコスビーさんを相手に民事訴訟を起こしたが、刑事裁判のため進行が遅れていた。
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訴状によると、コスビーさんはフースさんともう一人の未成年の友人を邸宅に連れてきて、フースさんを寝室に誘い込み、性的に暴行しようとした。フースさんが抵抗すると、今度は性行為を強要されたという。
裁判で涙を流しながら証言したフースさんは、事件の後は「頭にきて、だまされた、ばかみたいだ」と感じたと述べた。フースさんの弁護士は、邸宅内でコスビーさんとフースさんが一緒に写った写真を公開した。
この裁判では、コスビーさんは出廷を命じられず、一度も姿を現さなかった。フースさんの弁護士が2015年に録取した宣誓証言では、コスビーさんはフースさんのことを覚えていないとし、未成年者と性交しようとしたことはないと述べていた。
一方、コスビーさんの弁護士は、フースさんが当初、事件当時15歳だったと話していたのに、裁判の数週間前にそれを変更したと指摘し、フースさんの主張の穴を突こうとした。
また、フースさんがカネ目当てに、コスビーさんと一緒に写った写真をタブロイド紙などに提供したと主張した。
裁判では、米誌プレイボーイ創設者の故ヒュー・ヘフナーさんが2016年に行った宣誓証言の動画も公開された。ヘフナーさんはその中で、未成年の少女がプレイボーイ・マンションに入れるのは「非常に異例な」ことだっただろうと述べた。ヘフナーさんは1970年代、コスビーさんと親交があった。