
イギリスの2つの選挙区で23日、保守党現職の辞任と収監による下院議員の補欠選挙があり、どちらも与党・保守党が敗れた。これを受け、同党のオリヴァー・ダウデン共同議長が辞任した。
南西部デヴォンのティヴァトン・アンド・ホニトン選挙区では、野党・自由民主党が勝利。同党が補選で保守党に勝つのは、昨年7月以来、3度目になる。同選挙区は2019年の前回総選挙では、保守党が圧勝していた。
最大野党・労働党は、北部ウェストヨークシャーのウェイクフィールド選挙区で、2019年総選挙で失った議席を奪還した。
前文化相でもあるダウデン氏は24日早朝、保守党支持者は「現状を不安に思い、落胆している」と述べた。
ボリス・ジョンソン首相にあてた辞表でダウデン氏は、「何事もなかったかのようにこのまま続けるわけにはいかない。誰かが責任をとらなくてはならないし、この状況では私が職にとどまるのは正しくないと判断した」と書いた。
ダウデン氏はさらに、「私たちの党にとって非常によくない結果が続いた」ためだとして、「自分ひとりで決めたきわめて個人的な決断だ」とも書いている。
ジョンソン首相は現在、英連邦首脳会議のためアフリカ・ルワンダを訪問中。ジョンソン氏は訪問先で、「課題はまだあると認めなくてはならないし、もちろんそうする」と述べた。
「私たちは働き続ける。現状を抜け出るまで、国民の心配ごとに取り組み続ける」とも、首相は述べた。
これまでジョンソン首相に批判的だった保守党のサイモン・ホーア下院議員は、ダウデン氏は「名誉ある人」で、補選での敗北はダウデン氏の責任ではないと擁護した。
ジョンソン首相は、ロックダウン中に規則違反のパーティーが首相官邸で繰り返されていたことなどを、昨年末から非難され続けている。
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加えて、イギリス国内では急激なインフレと生活費急騰への懸念が高まっている。
保守党は今月6日に、ジョンソン氏の党首としての信任を問う投票を実施。与党議員の58.8%が信任に賛成したため、党首および首相としての留任が決まったものの、予想を上回る41.2%の与党議員が不信任に投票した。
保守党の地盤で野党勝利
選挙区の大半が農村部のティヴァトン・アンド・ホニトンでは、保守党のニール・パリッシュ前議員が下院でポルノを見ていたことが発覚し、辞任したことから、今回の補選に至った。自由民主党は保守党に6144票差をつけ、2万2537票で勝った。2019年の前回総選挙では、パリッシュ氏が2万4239票差で圧勝していた。
当選した自由民主党のリチャード・フォード氏は、「ティヴァトンとホニトンの人たちは今夜、イギリス全体を代弁し、強く明確なメッセージを発信した。ボリス・ジョンソンが去る時が来た。今すぐ去れ」と演説した。
党首のサー・エド・デイヴィーは、「この驚異的な勝利で、自由民主党は政治史を刻んだ。この国で最大の補選勝利だ」と喜んだ。
昨年7月以来この1年間で自由民主党は、南東部チェシャム・アンド・アマーシャム選挙区および中部ノース・シュロップシャー選挙区と、どちらも保守党の安定地盤だった地区の補選で勝利している。
保守党関係者はBBCに対して、ティヴァトン・アンド・ホニトンでの敗北は「残念だが予想外ではない」と述べ、次の総選挙では奪還できる自信があると話した。
北部ウェイクフィールド選挙区では、大方の予想通り、労働党のサイモン・ライトウッド候補が4925票差で勝った。この補選は、2019年に保守党から出馬して当選したイムラン・アフマド・カーン前議員が、15歳少年を性的に暴行した罪で有罪となり収監されたため、実施された。
労働党党首のサー・キア・スターマーは、「国民が保守党を信頼しなくなった」証拠だと述べ、「エネルギーもアイディアも途絶えた保守党に対する明確な審判だ。イギリスにはもっとまともな状態がふさわしい」と話した。
労働党は2019年総選挙で、かつて同党の盤石な地盤で「赤い壁」の一部と呼ばれていたこのウェイクフィールド選挙区の議席を、1932年以来初めて失っていた。
(英語記事 Conservative co-chair Oliver Dowden quits after by-election losses)