
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は19日、イランの首都テヘランで同国とトルコの首脳らと会談した。2月にウクライナに侵攻を開始して以来、2度目の外遊となる。
具体的な発表はほとんどなかったものの、プーチン大統領にとっては、ロシアがどこでものけ者にされているわけではないと示す機会となった。
会談では、ウクライナの黒海経由での穀物輸出の再開が話し合われた。プーチン大統領は、協議に進展があったと述べた。
また、シリア内戦についても協議が行われた。トルコとロシアはこの内戦でそれぞれ反対勢力を支援している。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師はプーチン氏との会談後の記者会見で、イランはロシアとの関係を強化するべきだと発言。また、ウクライナ侵攻の非は西側諸国にあると示唆した。
ハメネイ師はプーチン氏に対し、「もしあなたがイニシアチブを取らなかったら、向こうがイニシアチブを取って戦争を起こしただろう」と述べたという。
プーチン氏とエルドアン氏が初会談
アメリカ政府はこの会談について、ウクライナ侵攻をきっかけにロシアがいかに孤立しているかを示していると指摘。
米当局は先週、イランがウクライナでの戦争に向け、ロシアに何百機ものドローンを供給することを計画していると主張した。ロシアのエネルギー大手ガスプロムも、イランの国営石油会社と数百万ドル規模の契約を結んでいる。
一方、プーチン氏とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の直接会談は今回が初めて。トルコは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だが、トルコは国際的な対ロシア制裁には参加しておらず、仲裁役になろうと努めている。
トルコ政府は特に、黒海経由の穀物輸出が停止していることについてロシアと交渉を重ねようとしている。現在、ロシア海軍が封鎖している海域以外のルートには、大量の機雷が設置されているという。
プーチン氏はこの日、この問題について進展が見られたと発言。ロシアとウクライナの橋渡し役を担うエルドアン大統領に感謝の言葉を述べた。
その後の記者会見では、「ロシア産穀物輸出のための空輸に関するすべての制限」が解除されれば、ロシア政府はウクライナ産穀物の輸出を促進すると話した。
BBCは先に、ロシア政府がウクライナ産穀物を盗み出し、輸出している証拠を報じた。
ウクライナ保安局での更迭が加速
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日、保安局(SBU)のウォロディミル・ホルベンコ副長官と地方治安当局のトップ数人を解任した。
17日には、SBUと検察当局でロシアに協力する反逆行為が多数見つかったとして、イワン・バカノフSBU長官ととイリナ・ウェネディクトワ検事総長を解任していた。
ゼレンスキー大統領は、ロシアが占領した地域で60人以上の元政府職員が、ウクライナに敵対し、ロシアに協力していると述べた。さらに、法執行機関の職員がロシアに協力したりウクライナに敵対したりした疑いで、計651件の事件捜査に着手していると話した。
バカノフ氏をめぐってはここ数週間、2月のロシアの侵攻を食い止められなかったとして、ゼレンスキー氏が解任を求めていたと報じられている。
バカノフ氏とウェネディクトワ氏は国家反逆罪には問われていない。しかし両氏共、ロシアの干渉によって開戦当初のウクライナの抵抗能力に影響を与えたと思われる機関を運営していた。
ウクライナのファーストレディーが訪米
ウクライナのファーストレディー(大統領夫人)のオレナ・ゼレンスカ氏が18日、アメリカに到着した。政府高官との協議に加え、連邦議会で演説を行う予定。
ゼレンスカ氏は18日にアントニー・ブリンケン国務長官と会談。19日には米ファーストレディーのジル・バイデン氏と面会した。
ジル氏は5月にウクライナを訪問しており、2人の会談は2回目となる。
連邦議会での演説は20日に予定されている。夫のゼレンスキー大統領も4カ月前、ビデオ通話で議会で演説し、武器供与を訴えた。
ゼレンスカ氏はウクライナ政府で公式な役職を持っていない。しかしロシアの侵攻開始から5カ月近くがたった今、ウクライナ政府はさらに、アメリカからの兵器供与と政治的な支援を必要としている。
米議会はすでに、ウクライナ支援に400億ドル(約5兆5000億円)を投入することを決めており、9月末までに完了する見込み。
ゼレンスカ氏は18日に米国際開発庁(USAID)のサマンサ・パワー長官とも会談。USAIDは人道面でウクライナ政府に数十億ドルの支援を行っているほか、ロシアの侵攻によって引き起こされている世界的な食糧不足にも対応している。
テニスのカサチナ選手がカミングアウト、ロシア政府を非難
女子テニスでロシア1位のダリア・カサトキナ選手(25)が、自身が同性愛者であると公表した。ロシア政府の同性愛者に対する態度を批判し、ウクライナ侵攻をやめるよう訴えた。
ロシアでは同性愛行為は違法ではないが、未成年に「同性愛のプロパガンダ」を広めることは禁止されており、同性愛嫌悪が広がっている。
現在、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国に住むカサトキナ選手は、「ロシアでは非常に多くの話題がタブーになっている」と述べた。
先に開催されたテニスの英ウィンブルドン選手権では、ロシアとベラルーシの選手の出場が禁止された。ツアーには参加できるものの、代表選手としては出場できない。
人生で最も望んでいることは何かという質問に対し、カサトキナ選手は「戦争が終わること」と答え、ウクライナ侵攻は「本当の悪夢」だと付け加えた。
また、ロシアに戻れないと「怖く」なることはないかと聞かれると、涙ぐみながら「はい、それを考えたことはある」と話した。
ロシアではウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と呼んでおり、「戦争」を含むその他の呼称は認められていない。