2022年8月14日(日)

BBC News

2022年7月21日

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アメリカのジョー・バイデン大統領は20日、異常気象や自然災害に耐えられるインフラの整備に23億ドル(約3200億円)を投じると発表した。しかし、大統領により大きい権限を与える「気候緊急事態」は宣言しなかった。

マサチューセッツ州で行った演説でバイデン氏は、熱波が欧州と北米に異常気象をもたらしていると説明した。

アメリカでは今週、20以上の州で高温警報が発令され、数千万人が影響を受けている。

同州サマセットの石炭発電所跡で演説したバイデン氏は、「気候変動は私たちの国と世界に、文字通り存亡の危機をもたらしている」と語った。

「市民とコミュニティーの健康が(中略)危機にさらされている。対処しなくてはならない」

資金は洪水制御の拡大、公共施設の補強、建物の改修、家庭の冷暖房費の支援に充てられるという。

ホワイトハウスによると、財源は連邦緊急事態管理庁の既存予算で、経済的・社会的に不利な地域に優先的に割り当てられる。

また、うち3億8500万ドルは住宅や、地域の人たちが涼むための冷房センターが使う、エアコン整備のため、州予算を補填(補填)するために使われる。

バイデン政権はさらに、メキシコ湾でのオフショア風力発電とエネルギー開発に追加支援を行うとともに、異常気象の中で働く労働者のために新たな職場安全基準を設けると発表した。

緊急事態は宣言せず

バイデン氏は、異常気象を「緊急事態」として扱うと述べたものの、正式な緊急事態宣言は発令しなかった。

大統領はかねて、民主党議員や環境保護団体から、宣言を発令するよう強く求められていた。先には、民主党の中でも保守派のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州選出)が、気候変動対策を目的とした法案を支持しないと発言し、バイデン氏の政策に大きな打撃を与えた。マンチン氏は理由として、インフレへの懸念を表明した。

バイデン氏は20日、議会が「しかるべく行動していない」ため、今後数週間のうちに追加の行政措置を発表する予定だと述べた。

「私たちの子供や孫は、私たちに期待している。もし私たちが(気候変動を)1.5℃以下に抑えなければ、すべてを失うことになる。取り返しがつかなくなる」


<分析>エズメ・ストーラードBBC気候記者

バイデン大統領は就任時、気候変動対策に関するアメリカの信頼を取り戻し、ドナルド・トランプ前大統領による環境政策の「後退」を覆すと約束した。

就任初日には、アメリカがパリ協定に再加盟するための大統領令に署名した。 昨年4月には、2030年までに米国の温室効果ガス排出量を少なくとも50%削減すると約束した。

しかし、こうした約束を行動に移す道のりは単純なものではない。今回の一連の大統領令は、通常の手続きで気候変動政策を成立させるのが、大統領にとっていかに難しいかの表れだ。

昨年11月に英グラスゴーで行われた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に先立ちバイデン大統領は、途上国の気候変動対策を助けるために2024年までに毎年114億ドルを投じると表明した。しかし今年3月、大統領は連邦議会でこのための予算をわずか10億ドルしか獲得できなかった。これは、トランプ政権時代の支出の3分の1にすぎない。

今回の大統領令は、バイデン大統領がこの政策に尽力していることを示している。しかし同時に、大統領権限を使いすぎないよう慎重になっているのかもしれない。

石炭を生産している19州は先に、失業を懸念し気候政策に異を唱える訴訟を起こした。連邦最高裁はこれを受けて6月、発電所の温室効果ガス排出量削減をめぐり、米環境保護庁(EPA)が一律制限できる権限を縮小する判断を下している。

気候変動対策にについて、アメリカ国内での戦線が引かれたのは明白だ。バイデン氏が就任期間中にその野心をどこまで実現できるかは、そのうち明らかになるだろう。


(英語記事 Biden unveils $2.3bn plan to fight climate change

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62248121

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