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2022年7月22日

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ゴードン・コレーラ、BBC安全保障担当編集委員

イギリス対外情報部(MI6)のリチャード・ムーア長官は21日、ロシアはウクライナ侵攻作戦の遂行に苦労するだろうとし、ウクライナが反撃する可能性もあると述べた。

MI6のムーア長官は米コロラド州で開かれているアスペン安全保障フォーラムに出席。ウクライナにおけるロシアの当初目標は、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領を失脚させ、首都キーウを制圧し、西側諸国の不和と分断を引き起こすことだったが、実際にはこの目標を達成できず、「とてつもない失敗」をしたと指摘した。MI6長官が公の場で発言するのは異例。

ムーア長官はロシアによる侵攻を、「第2次世界大戦以降の欧州における(中略)もっとも言語道断であからさまな侵略行為」と呼び、ロシアがこのところ得ている戦果は「極小」だと評価。さらに、ロシアは「近く失速しそうだ」とも述べた。

「ロシアは今後数週間で、人員と物資の補給が難しくなり、状態は悪化するだろうと、我々は判断している」と、長官は述べた。「そのためロシアは何らかの形で一時休止せざるを得なくなり、ウクライナは反撃の機会を得ることになる」。

ムーア長官の分析は楽観的な見方と受け止められるかもしれないし、ウクライナの反攻能力は西側の武器供与が拡大するかどうかにかかっているかもしれない。ウクライナ側はこれまで、西側の武器が実際に届くのが遅すぎると不満を繰り返し表明している。

中国が注目

長官は、ウクライナ側が戦場で一定の成果をあげれば「これは勝てる戦いだと、他の欧州諸国に念押しする、重要な意味を持つ」だろうと述べた。特に冬になれば、ロシア産の天然ガス供給が厳しくなると予測されるだけに、それ以前にそうした合図が現場から出ることは大事だと長官は指摘した。

「これから厳しくなる」とムーア氏は強調。ウクライナが勝利できるよう、あるいは「少なくとも相当に優勢な立場から交渉できるよう」にウクライナを支え続けることは重要で、それは中国の最高指導者・習近平国家主席が状況の展開を「鷹(たか)のような鋭い目で」注視しているからだと説明した。

加えてムーア長官は質問に答えて、「(ウラジーミル)プーチン大統領が体調不良だと示す証拠はない」と答えた。同じフォーラムでは前日、アメリカのウィリアム・バーンズ中央情報局(CIA)長官も同様の発言をしていた。

ムーア長官はさらに、欧州各国で身分を伏せて活動するロシアの情報工作員約400人が国外追放されているため、欧州におけるロシアの諜報活動能力は半減していると話した。

ロシア政府の現状に不満を持つロシア当局者を、イギリスのスパイとして採用するかどうかについては、「私たちのドアは常に開かれている」と述べた。

MI6は中国に注力

中国について長官は、「MI6は共産主義国家の中国に、これまで一度も何の幻想も抱いてこなかった」と述べた。

その上で長官は、現在のMI6が最も注力しているのは中国だと明らかにした。取り組みの内容は、対テロ活動以上のものになったばかりだという。

長官は、ウクライナにおけるプーチン大統領の行動から中国がどのような教訓を得るか判断するのは「まだ時期尚早」だとしながらも、中国政府の担当者たちは状況分析に必死になっているようだと述べた。「(中国政府が)どう考えているのか、今はかなり読みにくい」という。

ムーア氏は、仮に中国が同じように台湾に侵攻した場合、どのような失敗があり得るか中国指導部に念押しするのは、「大事なこと」だと強調した。中国政府幹部はアメリカ側の決意と力を過小評価しているため、それが中国による誤算につながり得るとも指摘した。

台湾をめぐる大規模な紛争の可能性については、「不可避ではないと思う」と答えた。

イランとアフガニスタン

イランについては、核合意の実現は「もちろんあり得る」としつつ、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が合意を望んでいるかは疑わしいと話した。

かつての核合意には数々の限界があったものの、イランの核兵器開発を制約するには最善の方法だったとも述べた。

昨年夏に西側諸国がアフガニスタンから撤退したことについては、この影響でテロの脅威に対応しにくくなったかどうか質問が出た。長官はこれに対して、「当時は状況の大転換だったし、今はさらに状況が厳しくなっている」と認めた。アフガニスタン撤退を機に、イスラム原理主義テロの脅威に対して、かつてては「違う形」で対抗する方法を見つける必要があり、MI6が通常はやりとりしない相手と協力する必要もあるかもしれないと説明した。

アメリカについては

現在のアメリカの政治と暴力の状況について意見を求められると、長官は直接答えることは避けながら、自分はアメリカで勉強し、10代の時に初めてアメリカで有給の仕事に就いただけに、アメリカのことが「とても大好きだ」と答えた。

司会者が、アメリカでのその有給の仕事とは海水浴場のライフガード(監視員)だったと述べると、長官はそれを訂正し、「ビーチの受付係だった」と説明。

「(ライフガードになれるだけの)体じゃなかったので」と言い、聴衆の笑いを呼んだ。

(英語記事 Russia about to run out of steam in Ukraine - MI6 chief

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62261154

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