2022年8月18日(木)

BBC News

2022年7月22日

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スリランカの治安部隊は22日、首都コロンボで反政府の抗議デモを強制排除した。キャンプを撤去したほか、参加者を逮捕した。

大統領公邸の外に集まっていたデモ参加者は解散する予定だったが、その数時間前に数百人の軍隊や警察の特殊部隊によって移動させられた。

このさなか、BBCのビデオジャーナリストが兵士に殴られた。兵士の1人はジャーナリストの携帯電話を奪い取り、動画を削除した。

警察は9人を拘束したが、うち2人は負傷しているという。

スリランカでは、政府に対する大規模な抗議行動を受け、先週にゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領が国外に逃亡し辞任。20日には議会がラニル・ウィクラマシンハ首相を新たな大統領に任命したばかりだ

しかし、ウィクラマシンハ氏も国民の人気は低い。また、抗議デモに厳しく対応していくと述べている。

スリランカでは数カ月にわたり、経済危機を受けた政情不安が続いている。多くの国民が、前政権の財政政策に原因があると非難している。

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抗議デモは、ウィクラマシンハ氏が大統領に就任した20日以降も平和的に続けられていた。深い不信感はあるものの、デモ参加者の多くは経済危機脱却のために、同氏に国を率いる機会を与えたいと話していた。

就任演説でウィクラマシンハ氏は、政府転覆や政府機関の建物を占拠しようという動きは「民主主義ではない。法に反している」と述べた。

22日午前1時ごろ、治安部隊は大統領公邸に設置してあった抗議者のキャンプを撤去し、建物を奪還した。参加者はそれに先立ち、建物を明け渡すと約束していた。

治安部隊はその後、この建物へつづく道路を完全に封鎖した。

警察はこの件について、「大統領府を取り戻すための特別作戦」だと説明している。

BBCのジャーナリストへの攻撃について質問されると、報道官の1人はそうした出来事を把握していないと語った。

暴力に抗議の声

政府による抗議者への暴力については、すでに市民団体や司法関係者から抗議の声があがっている。

スリランカの弁護士協会のサリヤ・ペイリス会長は声明で、「不必要な暴力の使用はこの国にも、国際的なイメージにも貢献しない」と述べた。

イギリスのスリランカ上級コミッショナーを務めるサラ・ハルトン氏も、抗議の場からの報告に懸念を表明している。

「平和的な抗議の権利の重要性について、明白にしておく」と、ハルトン氏は述べた。

スリランカは事実上の破産状態にあり、食料や燃料、その他の生活用品が深刻な不足に直面している。ここ数カ月間は抗議行動で荒れた状態になっている。

同国では緊急事態宣言が発令されており、警察や軍隊は逮捕状なしに逮捕・拘束ができる。

また、証拠の存在や推定無罪の原則を無視しての拘束も許されているほか、表現の自由や移動の自由といった基本的人権が厳しく制限されている。


BBCジャーナリストへの攻撃 ――アンバラサン・エシラジャン、BBCニュース(コロンボ)

コロンボの反政府デモの現場に、深夜に部隊が突入するかもしれないと聞き、我々はスリランカ大統領府のすぐ前の地点に向かった。

すぐに、重装備の兵士と警察特殊部隊数百人が、顔を隠した状態で、2方向からやって来た。

デモ参加者たちが抗議の声を上げると、部隊は前進し、攻撃的になった。抗議者たちは押し戻された。

数秒後には、兵士らが叫び、仮設テントなどを破壊・撤去し始めた。部隊は、先週多くの群衆が押し寄せた大統領府内にも立ち入った。

抗議者らは先に、22日の午後にはこの建物を明け渡すと述べていた。兵士たちについていくと、彼らが目の前にあるものを全てなぎ倒していくのが見えた。

デモ参加者らは100メートル弱離れた抗議拠点まで押し戻された。そこにはデモ参加者らを足止めさせるための鉄製のバリケードが設置された。

我々がその場所から戻ってくると、部隊に取り囲まれた平服の男が、私の同僚に向かって、携帯電話の動画を削除させろと叫んだ。直後にその男は同僚を殴り、携帯電話を奪った。

我々はジャーナリストで仕事をしているだけだと説明しても、彼らは効く耳を持たなかった。同僚はさらに攻撃され、我々は強く抗議した。別のBBCの同僚が持っていたマイクも取り上げられ、放り投げられてしまった。

携帯電話は、動画を削除した後に戻された。別の軍人が介入し、我々は解放された。

同僚は震えていたが、数百メートル先のホテルまで歩いて戻ることができた。

BBCは軍隊と警察にこの攻撃について回答を求めているが、誰も応じていない。スリランカでは先週から緊急事態宣言が続いている。


スリランカの基本情報

  • スリランカはインドの南方に浮かぶ島国: 1948年にイギリスから独立した。人口2200万人で、その99%をシンハラ人、タミル人、イスラム教徒の3つの民族が占めている
  • ラジャパクサ兄弟が何年も政権を握っていた: シンハラ人とタミル人は長年、内戦を繰り広げていたが、2009年に多数派のシンハラ人のマヒンダ・ラジャパクサ首相(当時)がタミル人分離派を下し、一躍英雄となった。弟のゴトバヤ・ラジャパクサ氏は国防相を務めた後、大統領となった。
  • 経済危機を受けた抗議運動が広がっている: インフレの高騰により、一部の食品や医薬品、燃料が不足しているほか、計画停電も行われている。一般市民は街頭に出て、多くの人がラジャパクサ一族とその政府を非難し、怒りを露わにしている。マヒンダ氏は今年5月に首相を辞任している
  • 大統領の権限:大統領はスリランカの国家元首で、政府と軍のトップだが、議会で与党を率いる首相と多くの行政責任を共有している

(英語記事 Sri Lankan forces raid anti-government camp

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62260986

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