
ロシアのエネルギー大手ガスプロムは30日、ラトヴィアへのガス供給を停止したと明らかにした。ウクライナをめぐって緊張が続く中でラトヴィアは、ロシア産ガスの供給停止を経験する、新たな欧州連合(EU)加盟国となった。
ガスプロムはラトヴィアについて、購入条件に違反していると非難した。ただ、違反の詳細は明らかにしなかった。
ラトヴィアは天然ガスの輸入を隣国ロシアに依存している。しかし、ラトヴィアでガスは、エネルギー消費の27%でしかない。
同国の経済省高官は、今回のガスプロムの動きによって大きな影響が及ぶことはないだろうと、ロイター通信に話したという。
ルーブルでの支払いを拒否
ロシアは2月にウクライナを侵攻し、西側からの制裁が強まって以降、ロシア産ガスを購入する国に対し、ユーロではなくルーブルでの支払いを求めている。
しかしEUは、ルーブルでの支払いは契約で定められていないとして、これを拒否している。
ラトヴィアのガス事業者ラトヴィア・ガスも28日、ロシア産ガスの購入に当たってはユーロで支払っていると述べていた。
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ガスプロムはこれまでに、ブルガリア、フィンランド、ポーランド、デンマーク、オランダの各国に対し、支払いをルーブルでしていないとして、ガス供給を停止している。
ロシアはまた、ドイツにあるエネルギー企業シェル・エナジー・ヨーロッパへのガス販売も停止している。
欧州へのガス供給を大幅減
ガスプロムは27日、ロシアからドイツに続くパイプライン「ノルド・ストリーム1」を経由するヨーロッパへのガス供給量を、最大限の20%程度まで大幅に減らした。
ロシアはウクライナ侵攻をめぐって、西側各国から広範囲な制裁を科されており、それに対抗した措置とみられている。EU諸国は、ロシアがガス輸出を武器にしていると非難している。
EUは現在、ロシア以外からのガス輸入を増やすことに努めている。その一環として、ノルウェー、カタール、アメリカから液化天然ガス(LNG)を購入している。
北大西洋条約機構(NATO)は、ラトヴィア、エストニア、リトアニアのバルト3国の部隊を強化している。この地域は以前から、ロシアとの衝突地点となる可能性があるとみられている。
バルト3国はすべて旧ソヴィエト連邦の構成国で、ロシア系住民が少数派ながら存在感を示している。3国とも来年には、ロシア産ガスの輸入を停止する予定。
「ロシア兵170人を死亡させた」
一方、ウクライナ当局は30日、過去24時間でロシア兵170人を死亡させたとした。
また、南部の主要な戦略都市ヘルソン周辺で、ロシア軍の武器庫2カ所を破壊したと説明した。
BBCは、こうした主張の真偽を確認できていない。
ウクライナはこのところ、ヘルソンを占拠しているロシア軍を追放しようと攻勢を強めている。最近も、ロシア部隊の補給に重要なヘルソン市内に続く橋をロケット弾で破壊した。
イギリス国防省は30日、ロシア軍がこれを受け、浮き橋2基と渡し船を整備したとの戦況分析を明らかにした。
国防省はさらに、ロシア政府は占領下のウクライナ南部に設けた暫定的な「民・軍行政府」に対し、年内に「ロシア参入」の是非を問う住民投票を実施するよう圧力をかけており、現地当局は有権者名簿を作成するため、現地住民に個人情報の開示を強制しているようだともしている。
(英語記事 Gazprom stops Latvia's gas in latest Russian cut to EU)