
ウクライナ南部の街ミコライウで7月31日夜、ロシア軍による「大規模な」砲撃があり、ウクライナで最も裕福な実業家の1人とその妻が死亡した。地元当局が発表した。
死亡したのは実業家のオレクシー・ワダトゥルスキー氏(74)と妻ライサ氏。ワダトゥルスキー氏は穀物の輸出を手掛けるニブロンのオーナーで、「ウクライナ英雄」の称号を授与されていた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ワダトゥルスキー氏の死は大きな損失だと述べた。
ミコライウ州のヴィタリー・キム知事は、ワダトゥルスキー氏の「農業と造船業の発展および地域の発展への貢献は計り知れない」と述べた。
ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、ロシアが意図的にこの実業家を狙ったとの見方を示した。
ポドリャク氏はミサイルの1つがワダトゥルスキー氏の寝室に命中したとし、ミサイルが誘導されたものであることは「疑いの余地はない」とした。
ミコライウ市のオレクサンドル・センケヴィチ市長は、同市に対するロシア軍の砲撃としては恐らく最も激しいものだったと述べた。
この砲撃で住宅のほかホテルやスポーツ施設、学校2校、給油所も被害を受けた。
ミコライウは、黒海に面したウクライナ最大の港があるオデーサへと続く主要ルートに位置する。2月24日の侵攻開始以降、同市は繰り返し攻撃を受けている。
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ニブロン社は穀物輸出のため多くの貯蔵施設やその他のインフラを建設してきた。
ウクライナとロシアは小麦などの穀物の主要輸出国だが、ロシアのウクライナ侵攻により輸出が途絶え、世界的に食料価格が高騰している。
両国は交渉仲介を担ったトルコで7月22日、黒海に面したウクライナの港から農産物の輸出再開を可能にするための個別の合意文書にそれぞれ署名した。しかし、この翌日にウクライナの貿易拠点のオデーサ港がロシア軍に攻撃され、合意が頓挫(とんざ)しそうになった。
輸出の再開はセキュリティーチェックのため遅れている。トルコは7月31日、翌8月1日朝には穀物を載せた船の第一陣がオデーサを出発する見込みだと発表した。
ウクライナ国内に滞留する穀物をめぐっては、ロシア軍が占領地の農場から穀物を盗み、2014年に一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島を経由して国外に輸出していると、ウクライナは非難している。ロシア側はこの主張を否定している。
ウクライナ北部では第二都市ハルキウが再びロシア軍の攻撃を受けたと、イホル・テレホフ市長が明らかにした。ロシアの地対空ミサイル「S-300」3発が市内の学校に着弾し、学校の本館が破壊されたという。
BBCはこの最新の報告について検証できていない。
「ロシア海軍の日」に打撃
こうした中、ロシアはクリミア半島での「海軍の日」の祝賀行事を中止した。
クリミア半島・セヴァストポリのミハイル・ラズフォザエフ知事は、ロシア黒海艦隊司令部を標的としたウクライナのドローン攻撃の疑いが浮上したことが中止の理由だとしている。黒海艦隊は長らく、セヴァストポリを拠点としてきた。
ロシアが占領するクリミアの上院議員は、ドローンはセヴァストポリから発射されたもので、夕方までに犯人は見つかるとした。
ウクライナの高官セルヒィ・ブラチュク氏はロシア側の主張は「挑発」だと一蹴した。
「我々のクリミア半島解放は、別の方法で、より効率的に行われることになる」
ラズフォザエフ知事は落ち葉が散乱した中庭に立つ写真を投稿したが、この写真からは構造的被害ははっきりわからない。知事は祝賀行事が安全上の理由から中止されたと説明した。
ロシアの祝日にあたる「海軍の日」には毎年、ロシア全土で祝賀行事が行われている。ウラジーミル・プーチン大統領は故郷サンクトペテルブルクでのイベントを監督している。
プーチン氏は、アメリカをロシア政府の主要ライバルと位置づけ、北極圏や黒海など、国際海洋への野心を示した新たな海洋戦略に署名した。
ウクライナは4月、ウクライナ製の対艦ミサイル「ネプチューン」でロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」を攻撃。「モスクワ」は沈没し、黒海艦隊は打撃を受けた。ロシア側は、艦内で火災が発生し弾薬が爆発したと、ウクライナの攻撃とは無関係だとしている。沈没については、「荒れた海」が原因だとした。