2022年8月11日(木)

BBC News

2022年8月3日

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米カンザス州で2日、人工妊娠中絶権の是非を問う住民投票が行われ、中絶の選択を尊重する「プロ・チョイス」派が「勝利」した。推計によると、保守的な同州の有権者の60%以上が、州憲法で女性の中絶権を認めるべきだとした。

アメリカでは6月、中絶を合衆国憲法上の権利だとした1973年の「ロー対ウェイド」判決が連邦最高裁で覆された。これを受け、各州が中絶権の是非を決められるようになり、プロ・チョイス派と「プロ・ライフ(生命尊重=中絶禁止)」派の間で激しい論争が起きている。

この問題をめぐって住民投票が行われたのはカンザス州が初めて。

もし中絶権を認めない結果となっていた場合には、州議会議員らが中絶の制限や禁止に向けた動きを強める可能性があった。

今回の住民投票の結果は、アメリカで11月8日予定されている中間選挙で、この問題がどれくらい影響するかの指標と目されている。与党・民主党はこの中間選挙で、連邦下院での過半数議席維持を目指している。

ジョー・バイデン米大統領は、カンザス州の結果が、「アメリカ人の大半が、女性には中絶の選択肢があるべきだと認めている」ことを示したと述べた。

カンザス州在住のテイラー・ヒースさんは、オーヴァーランド・パークで行われた開票結果を見守る会で、9歳の娘と共に中絶権が認められたことを祝った。

ヒースさんはBBCの取材に対し、「私はレイプ被害者です。自分の娘がいつか妊娠し、それに対して何もできない事態を想像すると怒りを覚えます」と語った。

「こうしたことがここで起こるとは思ってもいませんでしたが、一生懸命活動して、票を勝ち取りました。共和党は私たちを侮っていました」

カンザス州当局者は、投票率は州全体で予想よりもかなり高かったと話した。同州では通常、投票に訪れる人数は、保守派の共和党支持者が民主党支持者より2倍多いという。

投票までの1カ月間、同州では緊張状態が続いていた。キリスト教のカトリック教会や、聖母マリア像などが汚され、赤いペンキでプロ・チョイス派のスローガンが書かれるといった事件も起きた。

投票前日には、中絶を支持する場合は「賛成票を投じる」よう指示する誤ったメッセージが出回った。実際の投票はその逆だった。通信会社トゥイリオは、このメッセージを送信した匿名の送信者を、同社のプラットフォームから排除したと発表した。

カンザス州は保守的だが

カンザス州はかなり保守的な州だが、中絶に関する規則は、他の共和党が優勢な州よりも厳しくないのが現状だ。

中絶前に24時間の待期期間を義務付け、未成年の中絶には保護者の同意を必要とするなど、いくつかの制限はあるが、妊娠22週まで中絶が認められている。

州議会は中絶禁止派の共和党が過半数を占めているものの、知事のローラ・ケリー氏は民主党員だ。ケリー知事は政治的には弱い立場に置かれているが、州憲法の改正はカンザスを「暗黒時代に逆戻りさせる」と警告していた。

6月の連邦最高裁の判決以降、共和党が優勢の十数州が中絶の禁止や制限に動いている。

しかし、カンザス州を含む10州では、中絶権が州憲法で定められているため、これを変更するには住民投票による承認が必要となっている。

一方、カリフォルニア州やヴァーモント州といったリベラルな州では11月にも、州憲法で定められている中絶権の強化を目指して住民投票を行う予定だ。

中間選挙の予備選でトランプ氏の支援者が勝利

この日には、ミシガン、アリゾナ、ミズーリ、ワシントンの各州で、知事選や上院議員選などの予備選が行われた。中間選挙後にどちらの党が連邦上院で過半数を取るのかを占う選挙として注目を集めた。

ドナルド・トランプ前大統領は、これらの選挙で数々の候補者に支持を表明。支持を受けた候補者は、トランプ氏が2020年11月の大統領選で負けたのは違法行為があったからだという証拠のない主張を強調した。

ミシガン州の知事候補を選ぶ予備選では、トランプ氏が支持するテューダー・ディクソン氏が共和党の候補者に選ばれた。11月に民主党のグレッチェン・ウィトマー知事と対決する。

アリゾナ州でも、共和党の上院議員候補に、トランプ氏の支援を受けたブレイク・マスターズ氏が選ばれた。同じくトランプ氏が支持を表明した知事候補のカリ・レイク氏も、勝者となる可能性がある。

トランプ氏が2020年大統領選の結果を覆そうとした件について連邦議会の委員会で証言した同州議会のラスティー・ボウワーズ議長は、トランプ氏が支持する対立候補に議席を奪われるとみられている。

ミズーリ州で行われた共和党の上院議員予備選では、エリック・シュミット州司法長官が、元知事のエリック・グレイテンズ氏を下した。

投票前日、トランプ氏は「エリック」を支援すると発表したが、トランプ氏の広報担当者はどちらの候補者を意味したのか明言しなかった。

このほか、昨年のトランプ氏に対する弾劾訴追で、共和党から造反した3人の下院議員も、予備選が待っている。

ワシントン州のダン・ニューハウス議員とジェイミー・ヘレラ・ビュートラー議員、ミシガン州のピーター・メイジャー議員が、政治生命をかけている。

(英語記事 Kansas votes decisively to uphold abortion rights

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62402988

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