
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は3日、石油・ガス企業に特別な税を課す必要があると述べた。ロシアのウクライナ侵攻により燃料価格が高騰する中、石油・ガス産業が大きな利益を上げている事態に言及した。
グテーレス氏は、企業がウクライナの危機から利益を得るのは「非倫理的」だと指摘した。
ロシアが2月にウクライナに侵攻して以降、石油・ガスの主要産出国であるロシアからの供給が阻まれ、世界的な不足が生じ、燃料価格が高騰している。
消費者が光熱費の値上げに苦慮する一方で、企業は大きな利益を上げている。
英石油大手BPは先に、過去14年で最高益をあげたと発表。英蘭シェルの4~6月期の利益も、過去最高となった。
さらに、エクソン、シェブロン、シェル、トータルエナジーズの最大手4社は、直近の四半期で前年同期比2倍にあたる合計510億ドル(約6兆8200億円)を売り上げている。
「グロテスクな強欲」
こうした事態を受け、グテーレス氏は「このグロテスクな強欲は、最も貧しく最も弱い人々に危害を加えるとともに、私たちの唯一共通の家を破壊している」と指摘した。
「すべての政府に対し、こうした過剰な利益に課税し、その資金をこの困難な時期に最も弱い立場にある人々の支援に使うよう強く求める」
また、世界中の家庭や政府が重圧に苦しむ中、エネルギー価格が高くなればさまざまな影響が出ると警告。
「負債を抱え、財政支援にたどりつけず、新型コロナウイルスのパンデミックからの回復に苦慮している多くの途上国で、取り返しのつかないことになるかもしれない」と述べた。
「すでに経済的、社会的、政治的な混乱の予兆が出ており、影響を受けない国はないだろう」
各国、業界の対応は
イギリス政府は7月、エネルギー企業に対し25%の「超過利潤税」を課すと発表。課税は1度きりだが、これによって約250億ポンド(約4兆円)を確保し、高騰する家庭の光熱費相殺に充てられるとしている。
イタリアなどでも、同様の対策が取られている。
一方、フランス議会は石油・ガス企業への特別課税を拒否。アメリカでも一部の下院議員が超過利潤税を提案したものの、政治的な追い風はほとんど起きていない。
業界団体アメリカ石油協会(API)のフランク・マッキアローラ副会長は、超過利潤課税を求めるのは間違いだと主張。
「政治家はエネルギー供給を拡大し、アメリカ国民のコストを下げることに注力すべきだ。業界への新たな課税は真逆の方向性で、一番必要とされている時期に投資を敬遠させることにしかならない」と語った。