2022年8月19日(金)

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2022年8月5日

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2012年に米コネチカット州のサンディーフック小学校で26人が殺害された銃撃事件について、事件はうそだと主張し続けた著名司会者に対して、テキサス州の地裁は4日、410万ドル(約5億5000万円)の損害賠償を遺族に支払うよう命じた。

裁判の原告は、事件で死亡したジェシー・ルイスさん(当時6歳)の両親。サンディーフック小学校銃撃事件はでっちあげだと、自分の極右ラジオ番組とウエブサイト「インフォウォーズ」で主張し続けたアレックス・ジョーンズ被告による名誉棄損の被害を訴え、少なくとも1億5000万ドルの損害賠償を請求していた。

事件では、殺傷力の高いアサルトライフル(自動小銃)を乱射した男によって、子供20人と教職員ら大人6人が殺害された。

この事件がでっちあげで、遺族を名乗る人たちは俳優だなどと長年にわたりジョーンズ被告が番組やウエブサイトなどで吹聴し続けたせいで、自分たち遺族は周囲から嫌がらせを受けたり、精神的苦痛を覚えたりしたのだと、原告のスカーレット・ルイスさんとニール・ヘスリンさんは訴えていた。

ジョーンズ被告の番組とウエブサイトが拠点を置くテキサス州オースティンの裁判所で、陪審団は損害賠償として410万ドルの支払いを命じた。今後さらに、懲罰的賠償の支払いを命じるかどうかを検討する。

被告は、サンディーフック事件は合衆国憲法が保障する武器の所有権を国民から取り上げるために仕組まれた、うそでやらせだと長年主張し続けていたが、今回の口頭弁論では、事件は「100%本当」だと認める発言をしていた。

ジョーンズ被告はすでに、自説を裏付ける証拠を法廷に提出しなかったことから、遺族に訴えられた複数の名誉棄損訴訟に敗訴している。しかし、陪審団が金銭的な損害賠償の支払いを命じたのは、今回が初めて。

原告側のマーク・バンクストン弁護士は同日、賠償命令後に裁判所の前で記者団に対して、被告に命じられた賠償額に、原告側は不満ではないと述べた上で、「こちらが本気で、やる気だと陪審に理解してもらうためには、月を目指すほどの高額な賠償額を請求する必要があると、最初から分かっていた。明日以降、(被告は)もっとたくさん請求されることになる」と話した。

2年分のメール情報が原告側に

3日の口頭弁論では、原告側のバンクストン弁護士が、証人席に座るジョーンズ被告に向かって、被告の弁護士が誤って、被告のスマートフォン内の全デジタルデータの複製を自分に共有したのだと伝えた。データの中身を自分が見てもいいのか、被告の弁護士に問い合わせたが、回答がなかったという。データの中には、被告の2年分のテキストメールのデータが含まれており、被告のこれまでの供述と食い違う内容もあったと、弁護士は本人に告げた。

バンクストン弁護士によると、昨年1月6日の連邦議会襲撃事件を調べている下院特別委員会からすでに、ジョーンズ被告のメールを委員会に提供するよう要請があったという。

下院特別委は、議会襲撃の直前にホワイトハウス近くで開かれたドナルド・トランプ大統領(当時)の支援者集会をめぐり、ジョーンズ被告がその開催にどうかかわったか調べるため、被告を公聴会に喚問し証言を求めたものの、被告は委員会に対して100回以上、黙秘権を主張している。

「頼むからうそをつかないで」

ジョーンズ被告は、サンディーフック小学校の事件はでたらめではないと、従来の主張を撤回したものの、引き続き自分のウエブサイトなどでこの裁判の裁判長や陪審員たちを攻撃し続けていた。

被告はさらに、自分はすでに破産しているため、賠償金の支払い能力はないと主張。しかし、被告の関連会社はダイエット・サプリメントや銃器関連の部品、サバイバル用の道具などの販売を通じて、1日80万ドル(約1100万円)の売り上げがあると、証拠が提示されている。

2週間にわたる裁判でジョーンズ被告は、自分の表現の自由が脅かされていると争っていた。

しかしこれに対して、遺族側の弁護団は「表現は自由でただでも、うそについては代償を払う必要がある」と反論していた。

3日の口頭弁論では、被告は小学校の事件が「100%本物」で、「大勢の気持ちを傷つけた」ことについて謝罪した。

これに対して、殺害されたジェシー・ルイスさんの母、スカーレット・ルイスさんは、「ジェシーは本物で、私は本物の母親です」と発言。また被告に対して、自分は俳優だと思うのかと問いただすと、被告は「俳優だとは思わない」と答えていた。

ルイスさんは、「こんなことをやらなくてはならないなんて、考えられない思いだ」と被告を批判。「あなたがうそをつくのをやめさせるため、うそをつかないでと懇願しなくてはならない、懇願どころかあなたに罰を与えなくてはならないだなんて」と述べた。

ジェシーさんの父、ニール・ヘスリンさんは、ジョーンズ被告が自分の息子の「名誉と思い出を汚した」と非難し、被告のせいで事件後10年近く、「生き地獄」を味わったと述べた。

両親の弁護団によると、今回の裁判に際してルイスさんとヘスリンさんは、ジョーンズ被告の支持者による危害を懸念し、自費で警備を雇わざるを得なかったという。

裁判では司法精神科医が、両親は「複雑な心的外傷後ストレス障害(PTSD)」を患っており、戦場を経験した兵士や児童虐待の被害者に似た状態だと証言した。

両親の弁護団は、被告が証拠を隠そうとしたり、事件に関するメールを送っていないと偽証したと主張している。

被告の番組「インフォウォーズ」の親会社は先週、破産を申請した。「インフォウォーズ」は、憎悪表現を理由にユーチューブ、スポティファイ、ツイッターへの投稿を禁止されているが、更新を続けている。

(英語記事 Alex Jones must pay $4m in damages for Sandy Hook hoax claims

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62431527

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