
ヨランダ・ネル(エルサレム)、ラフィ・バーグ(ロンドン)
パレスチナ自治区ガザ地区で5日、イスラエル軍よる空爆があり、パレスチナ人過激派グループの最高司令官など少なくとも10人が死亡、数十人が負傷した。地元保健当局によると、死者には少女1人が含まれている。
イスラエル側は1日夜、パレスチナの武装組織イスラム聖戦(PIJ)のメンバー1人を逮捕しており、イスラエルのヤイル・ラピド首相は同組織からの「差し迫った脅威」に対する作戦だったと説明した。
PIJは「初動対応として」、100発以上のロケット弾を発射して反撃した。そのほとんどはイスラエルのミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」で迎撃された。イスラエルの複数の都市でサイレンが鳴り響いた。
イスラエル国防軍(IDF)は5日遅くに、過激派の拠点を標的とした攻撃を再開したという。
イスラエルのラピド首相は先のテレビ演説で、「イスラエルは差し迫った脅威に対して、正確な対テロ作戦を行った」と述べていた。
IDFは、PIJに関連する場所を攻撃したと発表した。攻撃対象にはガザ地区の高層ビル「パレスチナ・タワー」も含まれ、大きな爆発で建物から煙が上がった。
地元保健当局によると、今回の空爆でタイシール・ジャバリ司令官を含むPIJの過激派4人と、5歳の少女が死亡した。また、55人が負傷したという。
イスラエル軍報道官は、IDFは「約15人の過激派が死亡したとみている」と述べた。
イスラエルのアイェレト・シャケド内相はチャンネル12ニュースに対し、「状況が今後どう展開するのか、わからないが(中略)しばらく続くかもしれない。(中略)今回は長期にわたる、しかも厳しい対立になるかもしれない」と述べた。
イランの首都テヘランを訪問中のPIJのジアド・アルナハラ総長は、「この攻撃に我々は強力に対抗する。戦いに勝つのはこちらだ」と述べた。
「この戦いに、超えてはならない一線は存在しない。(中略)テルアヴィヴは抵抗のロケット弾にさらされることになる」
こうした中、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは、複数の武装集団が戦いに臨むにあたって「団結」しており、このまま黙ってはいないとした。
イスラエルとPIJの対立
イスラエルは1日夜、PIJのヨルダン川西岸の幹部とされるバッサム・アルサアディ氏を逮捕した。イスラエル人17人とウクライナ人2人の死者を出したイスラエルのアラブ系市民とパレスチナ人による一連の襲撃事件の後に行われていた逮捕作戦の一環で、ジェニン地区で拘束されたという。襲撃犯のうち2人はジェニン地区の出身だった。
アルサアディ氏の逮捕後、イスラエルは、PIJが民間人や兵士を攻撃しようとしているとして、ガザ地区との境界付近で保安対策を強化した。道路が封鎖され、イスラエル南部の町や村との行き来はできなくなった。
イランの後ろ盾を受けるPIJは、シリア・ダマスカスに本部を置く、ガザ地区で最も強力な武装グループの1つ。イスラエルに対するロケット弾発射や銃撃など、多くの攻撃に関与している。
2019年11月、イスラエルがPIJの司令官を殺害したことをきっかけに、同国とPIJとの戦闘が勃発し、両者は5日間にわたる紛争を繰り広げた。イスラエルは殺害したPIJ司令官について、切迫した攻撃を計画していたとした。この戦いでパレスチナ人34人が死亡、111人が負傷した。イスラエル側では、63人が治療を必要とした。
イスラエルは、死亡したパレスチナ人のうち25人は過激派で、ロケット弾の発射準備に関わった者も含まれていると発表した。
追加取材: ヤロスラヴ・ルコフ