2022年9月27日(火)

BBC News

2022年9月2日

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ジョー・バイデン米大統領は1日夜、「アメリカの魂」と題した演説で、ドナルド・トランプ前大統領とその支持者たちがアメリカの民主主義を脅かしていると、強い調子で語った。18世紀後半にアメリカの独立宣言や合衆国憲法が採択された、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアの独立記念館前で演説した。

バイデン大統領は、トランプ氏とトランプ氏の「アメリカを再び偉大にしよう(MAGA)」スローガンを支持する「MAGA勢力」が、「何としてもこの国を後退させようとしている」と非難した。

これに対して野党・共和党のケヴィン・マカーシー下院院内総務は、バイデン氏が「アメリカの魂に重傷を負わせた」と反論した。

アメリカでは11月8日に連邦議会の中間選挙が予定されており、バイデン大統領の率いる民主党が、上下両院で多数党を維持できるかどうかが注目されている。また同時に、2024年大統領選で各州の投票や集計に大きな影響力を持つ、各州の知事や州議会の選挙も多数行われる。

2020年大統領選から「アメリカの魂を復活させる」と訴え続けているバイデン氏は、2年前の大統領選でトランプ氏を支持した有権者7400万人全員を非難しているわけではないと説明。「共和党員の全員がMAGA共和党員ではないし、それどころか共和党員の過半数は、MAGA共和党員ではない」と述べた。

「それでも、今の共和党がドナルド・トランプとMAGA共和党員に圧倒され、動かされ、威圧されているのは、まぎれもないことだ。そしてそれは、この国にとって脅威だ」と、バイデン氏は力説した。

大統領はさらに、2021年1月6日に連邦議会を襲撃した暴徒について、トランプ支持者はその行為を反乱だと非難するのではなく、「愛国者」だとたたえていると指摘。「もう長いこと我々は、アメリカの民主主義は確実に保証されたものだと自分に言い聞かせてきた。けれども、そんなことはない。我々はこの国の民主主義を守らなくてはならない。保護しなくてはならない。そのために立ち上がらなくてはならない。私たち全員、1人1人が」と強調した。


「MAGA共和党員は憲法を尊重しない。法の支配を信じない。民意を認めない。自由な選挙の結果を受け入れようとしない。そして、こうして私が話している今も、各地の州で次々と、偏った自分たちの仲間に選挙結果を決める権限を与え、選挙を否定する者たちに力を与えようとしている。民主主義そのものを損なうために」とバイデン氏は、これから続く選挙での混乱を警戒するよう呼びかけた。

さらに大統領は、「MAGA勢力は何としてもこの国を後退させようとしている。選択の権利がなく、プライバシーの権利がなく、避妊の権利がなく、愛する人と結婚する権利のないアメリカへ」とも述べた。

アメリカでは今年6月、保守派が多数を占める連邦最高裁によって人工中絶を受ける権利が認められなくなった。最高裁はさらに今後、避妊や同性愛行為の自由、同性婚などの合法性を認めた過去の判例を見直す可能性もあるとされている。

バイデン氏は続けて、「(MAGA共和党員は)強権的な独裁者を応援し、我々の個人の自由や正義や法の支配を脅かす、この国の魂そのものを脅かす、政治的暴力の炎をあおりたてる」とも非難した。

約25分間の演説の最中、拡声器を使った罵声と野次がずっと続くのを、現場で取材していたBBC記者が確認した。

演説をしながらバイデン氏はこの野次に2度、言及し、「とんでもない真似をする権利が彼らにはある。ここは民主主義の国なので。あの人たちは行儀よくふるまったことがないんだろう」と述べた。

国の分断を修復すると公約したバイデン氏は、中間選挙を控えて、トランプ氏とその支持者への批判を強めている。8月25日には、共和党内でトランプ氏を支持する「極端」な勢力の考え方について、「まるで準ファシズムだ」と発言した。

共和党の反論は

共和党幹部のマカーシー下院院内総務(カリフォルニア州選出)は、バイデン大統領の演説の少し前に、バイデン氏の出身地ペンシルヴェニア州スクラントンから演説し、大統領が「同胞のアメリカ国民を分断し、侮辱し、おとしめてきた」と批判。

「なぜか。ただ単に自分の政策に賛成しないからだ。そんなのは指導力ではない」とマカーシー議員は述べ、「何千万人ものアメリカ人をファシストと中傷した」ことについて大統領の謝罪を求めた。

議員はさらに、バイデ政権のせいでアメリカ国民はインフレ高騰に見舞われ、国境警備はおろそかになったと批判。新型コロナウイルス対策のための学校閉鎖で子供たちの教育が損なわれたほか、アフガニスタンからの米軍撤退は大失敗に終わり、犯罪発生率も過去20年で最悪になったと述べた。

「この2年間でジョー・バイデンはアメリカの魂と国民と法律と、この国で最も神聖な価値観を襲撃した。彼はこの国の民主主義を襲撃した。その政策はアメリカの魂に重傷を負わせ、アメリカの精神を損ない、アメリカの信頼を裏切った」とも、議員は述べた。

有権者の意見は

フィラデルフィアの政治コラムニスト、ディック・ポルマン氏は、中間選挙が過去2年間の民主党政治に対する信任投票にならないようにすることが、バイデン氏のねらいだとの見方を示した。

「中道派の有権者が絶対に受け入れないのは過激主義だが、その過激主義を選ぶのか、それとも実に地味で重要な統治の仕事を続ける民主党を選ぶのかと、そういう文脈だ」

フィラデルフィアから約190キロ北にあるペンシルヴェニア州のニューファウンドランド村で、BBCが取材した有権者たちは、民主主義への脅威よりも、ガソリン価格の高騰を心配していた。トランプ政権下の経済を、現状と比較する人もいた。

他方、長年にわたる共和党支持者だが、トランプ氏やトランプ氏が応援する候補には絶対投票しないという人もいた。

バイデン氏の支持率は

バイデン大統領の支持率は、昨年夏のインフレ悪化やアフガニスタンからの米軍撤退の混乱を機に、不支持が支持を上回り、低迷を続けてきた。各種世論調査の平均を記録する「RealClearPolitics」のまとめによると、今年7月21日の20.7%で底を打ってからは上昇を続け、現在の支持率は42%という。

加えて、バイデン大統領自身の支持率低迷をよそに、民主党は選挙では予想外の勝利が続いている。8月には共和党が長年圧倒的に有利とされてきたアラスカ州の連邦下院選補選で、共和党の元副大統領候補サラ・ペイリン元州知事が、民主党候補に敗れた。激戦が予想されたニューヨーク州の連邦下院補選でも、中絶の権利などを訴えた民主党候補が共和党候補に勝っている。

(英語記事 Joe Biden says 'Maga forces' threaten US democracy / Biden's picturesque setting with a dark twist

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62762481

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