2022年9月27日(火)

BBC News

2022年9月5日

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イギリスの新首相に、リズ・トラス外相(47)が決まった。与党・保守党は5日午後12時半(日本時間同8時半)過ぎ、党員投票による党首選で、多数票を得たトラス氏が勝利したと発表した。トラス氏は6日、エリザベス女王から組閣の要請を受け、新しいイギリス首相になる。

保守党の党首選を采配する「1922年委員会」の委員長、サー・グレアム・ブレイディは、保守党関係者を前に、トラス氏が8万1326票、対立候補のリシ・スーナク前財務相が6万399票を得たと発表した。投票率は82.6%だったという。

勝利が予想されていたトラス氏の得票率は約57%で、思われていたより僅差の勝利だった。2019年にはボリス・ジョンソン氏が得票率66.4%で、2005年にはデイヴィッド・キャメロン氏が67.6%で、2001年にはイアン・ダンカン・スミス氏が60.7%で、それぞれ保守党党首選に勝っている。

エリザベス女王は現在、スコットランドのバルモラル城に滞在中のため、トラス氏はロンドンのバッキンガム宮殿ではなく、バルモラルを訪れ、組閣の要請を受ける予定。

イギリスではジョンソン首相の行動についてさまざまな批判が相次いだ後、多数の閣僚や与党関係者が抗議辞任するに至り、ジョンソン氏は7月初めに党首を辞任。党首選と次の首相選びは、それを機に始まった。保守党議員による投票を繰り返した末、リシ・スーナク氏とリズ・トラス氏が決選投票に残った。

「史上最長の採用面接」

保守党の新党首になったトラス氏は、党員のスタンディング・オベーションに歓迎されて壇上に上がり、党首になるのは名誉なことだと感謝した。スーナク氏や自分の支持者に感謝しながら、保守党が用意した「史上最も長い採用面接」にも感謝を述べて、会場を笑わせた。

ジョンソン首相がスーナク氏などに造反された後も首相を支持し続けたトラス氏は、壇上でジョンソン氏の指導力に感謝。ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)を実現したとたたえ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に立ち向かい、最大野党・労働党を前回の総選挙で「たたきつぶした」と評価した。

ジョンソン氏について「あなたはキエフ(ウクライナ語ではキーウ)から(イングランド北部の)カーライルに至るまで、尊敬されている」とも述べたが、会場の大勢が拍手するまでにしばらくかかった。

トラス氏は外相として、ジョンソン首相と同様、ウクライナを侵攻したロシアに対して、強硬姿勢を貫いてきた。

トラス氏はさらに、保守党の思想はイギリス国民に共鳴するものだと述べ、これは自分たちの生活を自分で決める自由と、低い税金を意味すると述べた。保守党の党首選でトラス氏は、物価高騰を前に、減税の必要性を訴え続けていた。


その上でトラス氏は、減税と合わせた経済成長の実現に向けて、「大胆な計画」があると強調。また、イギリスで深刻化する光熱費の高騰については、各家庭の支払額の上限導入に取り組むとともに、長期的なエネルギー供給問題にも抜本的に取り組むと述べた。

「私たちは実行する、実行する、実行する」とトラス氏は党首選の最中に繰り返した合言葉をここでも強調し、2024年の総選挙で再び労働党を破り、保守党を勝利に導くと約束した。

トラス氏はツイッターでも、「この厳しい時代をみんなで切り抜け、経済を成長させ、イギリスの可能性を解き放つため、大胆に行動します」と書いた。

https://twitter.com/trussliz/status/1566752887857991680


一方、敗れたスーナク氏はツイッターで、「この党首選で私に投票してくれた皆さん、ありがとうございます」と感謝を表明し、「保守党は一つの家族です。私はずっとそう言い続けてきました」と書いた。

そして、「厳しい時代にこの国のかじ取りをするリズ・トラス新首相を支えて、全員が団結するべきです」と述べた。

スーナク氏はジョンソン政権の閣僚を辞任することで、他の多くの政府要職者が一気に辞任するきっかけを作った1人。党首選では財政政策をめぐり、トラス氏と繰り返し対立した

トラス氏は、スーナク氏が財務相として4月から導入した国民保険料の引き上げを強く批判し、自分が首相になればこれを撤回すると公約したほか、大規模な減税策を示した。さらに、スーナク氏が財務相として昨年3月に発表した来年4月からの法人税引き上げも、中止すると公約した。

これに対してスーナク氏は、トラス氏のこうした経済政策は「おとぎ話」だと反論。新型コロナウイルスのパンデミックを経た国の財政を立て直すには増税が必要だとして、まるで「ただで何かを手にする経済」が現実に可能だとでもいうような言説をトラス氏が振りまいていると批判していた。

野党の反応は

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、トラス氏の勝利を祝福しつつ、「保守党政権が12年も続いた挙句、その成果として目の前にあるのは、低賃金と物価高と、保守党のせいで起きた生活費の高騰危機だ」と批判。

「この国が必要とする新鮮な再出発を実現できるのは、労働党だけだ」とも述べた。

野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首は、トラス政権はジョンソン政権と同じような「危機と混乱」をもたらすはずだと述べた。

リズ・トラス氏とは

1975年に数学教授の父親と看護師の母親のもとでオックスフォードで生まれたトラス氏は、後に両親を「左翼」と呼んでいた。幼いころに、スコットランドに引っ越し、リベラルとして育った。

オックスフォード大学に進学したトラス氏は、哲学・政治・経済のコースを専攻。様々な活動や政治運動に参加し、大学の自由民主党サークルの代表になった。

1994年の野党・自由民主党大会では、王制廃止を訴え、「私たち自由民主党員は、全員に機会が与えられることを支持します。生まれながらの支配者など信じません」と述べていた。

その一方で、「個人の自由と自己決定権」ならびに自由市場主義を支持するトラス氏は、卒業前に支持政党を保守党に切り替えた。これは両親に衝撃を与えたという。

今回の保守党党首選の渦中で、かつて左派で自由民主党員だったことを野次られると、「誰でも間違うことはあるし、誰でも10代に無謀なまねをすることがある」として、「若いころにセックスとドラッグとロックンロールにはまる人がいるように、私は(左派の)自由民主党に入っていた。ごめんなさい」と答えた。

大学卒業後は石油大手シェルなどの会計士として働いた。2000年には同じ会計士のヒュー・オリアリー氏と結婚し、後に子供2人をもうけた。

2001年に北部ウェストヨークシャー・ヘムスワース選挙区の保守党候補として初出馬したものの、敗退。2005年にも別の選挙区で落選した。その後は右派シンクタンクなどで働き、2010年に北部ノーフォークの保守党地盤から初当選。2012年に教育担当の閣外相になり、2014年には環境相として入閣した。

ブレグジットについては、国民投票に向けて欧州連合(EU)残留派として活動したものの、EU離脱が決まると、「物事の仕組みを刷新する」機会になると評価した。

テリーザ・メイ政権では女性として初の大法官と法相になり、ジョンソン政権では国際貿易相を経て外相に就任した。

外相としては、ウクライナ侵攻直前のモスクワを訪れ、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相に強硬姿勢を示し、侵攻後も厳しい対ロ姿勢を貫いてきた

(英語記事 Liz Truss to be next prime minister / Who is Liz Truss? From teenage Lib Dem to Tory PM

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62791639

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