2022年10月3日(月)

BBC News

2022年9月6日

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イギリス与党・保守党の党首選で新党首に選ばれたリズ・トラス外相(47)は5日、国内で深刻化するエネルギー価格高騰に取り組み、「大胆」な減税を実施すると、あらためて公約した。6日にエリザベス女王から組閣の要請を受け、新首相となった後、エネルギー対策の一部を8日にも発表する見通し。

保守党党首となったトラス氏は、ロンドンの国際会議場に集まった党員を前に、家庭への請求額に取り組むほか、イギリスの国産エネルギー供給を拡大することで、「エネルギー危機について対策を実行する」と述べた。さらにエネルギー対策のほか、停滞する経済の成長を促進し、景気後退を防ぐため、「大胆」な減税策を約束した。

8日に発表予定のエネルギー対策には、各世帯の光熱費を軽減するため、エネルギー供給業者に政府保証融資を提供して、家庭への請求額を補填(ほてん)する策が盛り込まれる可能性がある。

エリザベス女王は現在、ロンドンのバッキンガム宮殿ではなく、スコットランドの居宅バルモラル城に滞在中。歩行が困難な女王の体調を考慮し、新旧首相の交代は従来のバッキンガム宮殿ではなく、バルモラルで行われる。

トラス氏はバルモラルで女王から組閣の要請を受け、正式に首相となる。イギリスで女性の首相は3人目となる。首相就任後、内閣の顔ぶれを発表する。2019年の総選挙で圧勝した後は混乱が続いた、同じ保守党のボリス・ジョンソン首相の政権と入れ替わる。

多くの政府幹部の抗議辞任を受けて7月に辞任を発表したジョンソン首相は、トラス氏の勝利を祝し、「この党を団結」させられる計画の持ち主だと評価した。

トラス氏は保守党党首選の勝利が決まると、壇上からジョンソン氏を「友人」と呼び、壇上でジョンソン氏の指導力に感謝。ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)を実現したとたたえ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に立ち向かい、最大野党・労働党を前回の総選挙で「たたきつぶした」と評価した。

トラス氏は外相として、ジョンソン首相と同様、ウクライナを侵攻したロシアに対して、強硬姿勢を貫いてきた。

内政の諸問題に加えて、トラス氏は新首相として引き続きウクライナ支援と対ロシア制裁を課題として抱える。北アイルランドをめぐる欧州連合(EU)との対立解消も、継続する外交課題として取り組む必要がある。

エネルギー価格と減税

トラス政権にとって喫緊の課題は、世界的なエネルギー価格の急騰から、国内の家庭や企業をいかに守るかになる。トラス氏のチームは数週間前から、包括的支援策の策定に取り組んできたとみられる。

その支援策には、政府が保証する融資をエネルギー供給業者に提供し、供給業者は家庭の負担額を凍結する、もしくは引き下げる仕組みが盛り込まれる見通し。融資返済は今後10~20年かけて、利用者への請求額を通じて返済していく仕組み。

政府が保証する融資に賛成するスコットランドのガス・電力会社「スコティッシュ・パワー」によると、顧客の光熱費を2年間凍結した場合、その費用は1000億ポンド(約16兆円)に上る。


トラス氏はこのほか、イギリス経済の成長鈍化は税負担のせいだとして、今月末にも緊急補正予算に300億ポンド規模の減税を盛り込むと公約してきた。その中には、ジョンソン政権が今年4月から導入した国民保険料の引き上げを撤廃し、光熱費にかけられていたグリーン税を一時的に中止するほか、来年4月から予定されていた法人税引き上げも中止するなどの策が含まれる。

国民保険料や法人税の引き上げは、党首選の対立候補だったリシ・スーナク氏がジョンソン政権の財務相として導入したもので、党首選では両候補が食い違う争点になっていた。

スーナク氏はジョンソン政権の閣僚を辞任することで、他の多くの政府要職者が一気に辞任するきっかけを作った1人。今回の敗北を受けてBBCに対して、トラス政権を「全面的に支える」つもりだと述べた。

次の総選挙でも下院に再出馬する見通しだが、トラス内閣には入閣しないものとされている。

内閣の顔ぶれは

新政権の主要閣僚には、クワジ・クワーテング・ビジネス相が財務相に、党首選に出馬していたスエラ・ブラヴァマン法務長官が内務相に、ジェイムズ・クレヴァリー教育相が外相に就任する見通し。

トラス氏の勝利を受けて、ジョンソン政権のプリティ・パテル内務相とナディーン・ドリス文化相は、主要閣僚から辞任する方針を示した。

野党の反応は

最大野党・労働党はトラス氏に対して、国内のエネルギー価格を向こう半年間凍結するための財源として、石油・ガス企業の超過利潤への追加課税を拡大するよう呼びかけた。

トラス氏はこれまで、超過利潤への追加課税には反対し、「国際投資家へ誤ったメッセージを送ることになる」としていた。

労働党と自由民主党とスコットランド国民党の野党3党は、光熱費の凍結を求めている。

労働党のサー・キア・スターマー党首は、野党の間では光熱費凍結について超党派の合意があるとして、この実現のためトラス氏と協力していく用意があると述べた。

トラス氏の経済政策については、党首選の間ずっと国民の生活費危機よりも法人税引き下げを重視するかのような口ぶりだったと批判した。

野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首はBBCに対して、物価上昇についてトラス氏は「何の計画もないようだ」と述べ、イギリスの鈍い経済成長は与党・保守党のせいだと批判した。

スコットランド国民党の党首でスコットランド自治政府首相のニコラ・スタージョン氏は、光熱費上限制の対象に通常ならない企業についても価格凍結を適用するほか、支援を必要とする人への一時金支給を増額するよう求めた。

(英語記事 Liz Truss vows energy crisis action ahead of first day as PM

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62803885

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