2022年9月27日(火)

BBC News

2022年9月13日

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ウクライナは、ここ数日で3000平方キロメートル以上の領土を奪還し、ロシア軍を押し返す大きな成果を上げたと発表した。これほどの成功をなぜ収められたのか。戦争に勝つためにウクライナ軍が今後直面するであろうハードルは何なのか。BBCのジョナサン・ビール防衛担当編集委員が詳しく見ていく。

「ウクライナの奇襲能力を見くびるな」。ある米軍幹部が私にそう言ったのは今年の夏だった。当時、ロシアはドンバス地方で前進を続けていた。

ウクライナの奇襲能力は、この戦争の特徴になっている。ロシアをキーウから撤退させたことに始まり、最近ではクリミアを攻撃した。現在はウクライナ東部で、新たな驚きが生じている。

これまでの進軍のほとんどは、ロシアによるものだった。過酷な状況で犠牲を被りながらも、ゆっくりと前進していた。しかし今、軍を前に進めているのはウクライナだ。わずか数日で、数千平方キロメートルの領土を取り戻した。

ウクライナにとって最も大きいのは、東部ハルキウ市周辺を奪還したことだ。イギリスの最新防衛情報の報告書によれば、ウクライナは英グレーター・ロンドンの2倍の面積を解放した。ただ、記者は前線での取材が認められておらず、進軍と戦闘がどれほどなのか確認するのは難しい。

ウクライナは、戦略的に重要なイジュームとクプヤンシクを占領したと説明している。ロシアはそれらを、ドンバス地方の部隊への補給拠点にしていた。この損失だけでも、ロシア軍にとっては大打撃だろう。


ウクライナの前進の鍵は「奇襲」だ。これと、米英の長距離多連装ロケット砲など西側兵器の賢い利用によって、ロシアの補給線、弾薬庫、司令部を破壊してきた。ロイド・オースティン米国防長官は先週、ウクライナ側の長距離砲が夏の間に、400以上の重要な標的に命中したと述べた。

これらの兵器が登場する以前は、ロシアは砲兵の面で常に数的優位に立っていた。しかし今や、形勢は逆転したように見える。米情報当局によると、ロシアは数百万発の砲弾を補給するのに北朝鮮の助けを借りなければならない。これは、半年にわたる戦闘で備蓄が著しく枯渇していることを示している。

西側からの兵器の効果と、領土を取り戻すことへの決意が相まって、ウクライナはロシア軍とその代理勢力を、混乱した退却と思える状況に追い込んでいる。ソーシャルメディア上の画像からは、戦車や装甲車、武器、弾薬が慌ただしく取り残され、放置された様子がうかがえる。

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興味深いのは、ウクライナの東部での前進が、南部でのヘルソン市に向かう攻勢よりも、はるかに速いペースで進んでいることだ。ウクライナは南部の攻勢についてかなり前から情報を発していたが、東部での計画は秘密にしていた。今考えれば、これも計画の一部だったようだ。東部で準備していたものを隠す目くらましだったのだ。

ロシアに不意打ちを食らわせたのは明らかだ。この数カ月、ロシアは南部の防衛を強化するため、東部の軍を振り向けている。その結果、どちらの前線も弱体化している。

しかし、ウクライナは南部での前進に苦労している。見通しのよい田園地帯で戦わねばならず、敵に見つかりやすい。ロシア側の防衛軍に打ち勝つには、より多くの兵力と火力が必要だ。

現在のウクライナにとっての危険は、戦争初期にロシアが直面したものと似ているかもしれない。複数の戦線で前進しようとすれば、弾薬、装備、兵力に犠牲が出る。戦果を上げるほど補給線は長くなり、防衛する側に狙われる。最も深く進軍した部隊が、相手に包囲される危険性もある。

楽観的な見方が出る一方で、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は東部のウクライナ軍について、ロシアの反撃に弱いかもしれないと警告している。領土を確保するだけでは不十分だ。地盤を固めなければならない。現地住民の支持を得られれば、それは容易かもしれない。

ウクライナの2正面攻勢はリスクが高い。簡単に失敗し得る。だがこれは、単なる領土奪還ではない。たとえそれが最終的な目標であるとしてもだ。

ウクライナは今、世界にシグナルを送っている。この戦争に勝てると本気で信じているのだ、というシグナルだ。ウクライナはすでに、一連の成果を強調して、西側にさらなる兵器供与を訴えている。攻勢は重要な時期に行われている。冬になれば戦闘は困難になり、西側諸国の意志が試される。今はその直前だ。戦争はまだ終わっていない。ウクライナは改めて、形勢をひっくり返して世界を驚かすことができるとアピールしている。

(英語記事 A successful surprise attack - but danger looms

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-62885087

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