2022年9月26日(月)

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2022年9月22日

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米ニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ州司法長官は21日、融資取り付けやの節税のために所有不動産の価値を「数十億ドル」水増ししていたとして、ドナルド・トランプ前大統領と3人の子供などを詐欺の疑いで提訴した。

ニューヨークにあるトランプ・タワー内の居宅や、フロリダ州パームビーチの私邸兼リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」などの資産価値が書き変えられていた疑いがあるという。

州司法長官事務所は3年前から、トランプ一族が経営する「トランプ・オーガナイゼーション」の経営をめぐり、民事事件として捜査を行っていた。そして今回、同社が2011~2021年にさまざまな詐欺行為をはたらいていたと指摘した。

司法長官事務所は、今回の事案を刑事事件としては起訴できない。しかし、連邦検察当局と内国歳入庁に対し、刑事事件になり得ると報告している。

トランプ氏は、「新たな魔女狩り」だと反発している。

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今回提訴されたのはトランプ氏と、同氏の3人の子供のドナルド・ジュニア氏、イヴァンカ氏、エリック氏、そして「トランプ・オーガナイゼーション」幹部だったアレン・ワイセルバーグ氏とジェフリー・マコニー氏の計6人。

222ページにわたる裁判書類によると、トランプ氏と子供たちは、ホテルやゴルフ場といった不動産について、好条件の融資を取り付けたり納税額を低くしたりするために、その資産価値を偽った疑いがある。

たとえば、トランプ氏が「トランプ・タワー」内に所有している居宅は、広さを3倍に「誇張され」、「根拠のない」1平方フィート当たりの価格に基づいて、3億2700万ドルと記されていたと指摘。しかし実際には、トランプ・タワー内の不動産の最高売却額は1650万ドルだった。

「マール・ア・ラーゴ」についても、「トランプ・オーガナイゼーション」は最大で7億3900万ドルの資産価値があると報告していた。しかし州司法長官事務所は、実際の価値は7500万ドル近くであり、年間利益も2500万ドル以下だとみている。

また、トランプ一族が行っていた資産価値詐欺は、この10年で200件以上にのぼるとされる。資産価値が偽られた書類は1件ずつ、トランプ氏やトランプ・ジュニア氏、あるいは「トランプ・オーガナイゼーション」の財務トップだったワイセルバーグ氏が承認していたという。

当局は、トランプ一族がこうした操作で少なくとも2億5000万ドルに上る富を増やしたとして、返還を求めている。

ジェイムズ州司法長官は声明で、「ドナルド・トランプ氏は、子供たちやトランプ・オーガナイゼーションの幹部の助けを借りて、自分の純資産を数十億ドルも水増しし、自分を不当に豊かに見せかけ、制度を不正に利用した」と指摘した。

その上で裁判所に対し、トランプ氏と3人の子供について、ニューヨークで登記している企業で役員になるのを禁じるとともに、「トランプ・オーガナイゼーション」の不動産取引を5年間停止するよう求めている。

「新しい魔女狩り」

トランプ氏は提訴について、自身のソーシャルメディア「「トゥルース・ソ-シャル」で反発。黒人のジェイムズ氏を「人種差別主義者」だと批判した。

「人種差別主義者の州司法長官による新しい魔女狩りに対する国民の支持はほぼゼロだ。レティシア・ジェイムズは州知事選への立候補でも失敗した」と、トランプ氏は書いた。

トランプ一族は以前にも、ジェイムズ氏が2018年に州司法長官に選ばれた際、「不当な大統領」であるトランプ氏を訴追したいと話していたことをとりあげ、政治的な復讐を行っていると批判している。

トランプ・ジュニア氏はツイッターで、ジェイムズ氏は「政敵を捕まえるために事務所を武器化している」と非難した。

トランプ氏は11月の中間選挙には立候補していないものの、共和党内での支持は圧倒的で、2024年の大統領選に出馬するのではないかとの憶測がある。

8月には、州司法長官事務所で宣誓の下で事情聴取を受けたものの、質問に答えることを拒否した。ジェイムズ州司法長官によると、トランプ氏は刑事事件で自らに不利な証人になることを何者も強制されないと定めている憲法修正第5条の権利を行使すると繰り返し、自分の名前しか認めなかったという。

息子のエリック氏も、2020年の事情聴取で500回、同様の回答をした。

トランプ大学をめぐる別の裁判に関わっているトリスタン・スネル弁護士はBBCの取材に対し、この裁判が始まるまで1年はかかるだろうと述べた。

一方で、このような提訴によってトランプ氏は、ニューヨークで企業活動を行ったり利益をあげたりすることが難しくなると指摘。資金調達や信用度の維持にも関わってくるため、「間違いなく痛手になるだろう」と語った。

刑事裁判になるのか

ブルックリン法科大学院のミリアム・ベア副学長は、ジェイムズ氏が捜査資料を連邦検察当局などに渡したのは、トランプ氏にとって「不吉な兆し」だと述べた。

「ニューヨーク州司法長官はきょう、一歩踏み込んだ」と、ベア氏はBBCに語った。

「今回の民事提訴に加え、連邦警察当局に犯罪捜査のための照会を行っていることを発表した」

トランプ前大統領をめぐっては、このところ複数の捜査が進んでいる。

8月には、連邦捜査局(FBI)と国土安全保障省(DHS)が「マール・ア・ラーゴ」を家宅捜索し、「トップシークレット(最高機密)」を含む11組の機密文書などを押収した。トランプ氏が大統領退任時に無断で持ち出した疑いが持たれている。

この機密文書をめぐっては、裁判所が任命した職員が、弁護士と依頼人の間の特権や大統領特権が適用されるかどうかを見極めており、連邦捜査当局はその間、調査を凍結するよう命じられていた。

しかし今月21日には、連邦控訴裁判所が司法省に対し、マール・ア・ラーゴから押収した機密文書の調査を再開できると判断。トランプ氏にとって司法的な敗北となった。

このほかジョージア州では、2020年の大統領選の結果を覆そうとした疑いで捜査が進められている。

トランプ氏はいずれの件についても不正行為を否定している。

(英語記事 Trumps 'inflated net worth by billions' - lawsuit

提供元:https://www.bbc.com/japanese/62990288

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