2022年11月28日(月)

BBC News

2022年10月28日

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マット・マグラス環境編集委員

国連は27日、気候変動対策として世界の気温上昇を1.5度以下に抑え続ける「確実な道筋はみえていない」とする報告書を発表した。

専門家らは、地球温暖化の危険な影響を避けるには、気温上昇を1.5度以下に抑えることが必要だと訴えている。

しかし今回の国連報告書は、昨年11月に開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)以降、各国政府が示した炭素削減計画は「ひどく不十分」だったと指摘している。

その上で、大惨事を避ける唯一の手段は早急に社会を変化させることだけだと結論付けた。

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今年のCOP27は11月6日からエジプトで開催される。

昨年、英グラスゴー行われたCOP26以降、世界の関心は別のところに移っているが、今週に入り、気候変動はなくなっていないことを強調する報道が相次いでいる。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は今週、BBCの番組に出演した際、世界が再び気候変動を直視しなければ、大きな災難が待ち受けていると警告した。

専門家らの間にただようこうした暗い空気は、今回国連が発表した調査報告書でも強調されている。

13年目となるこの報告書では、各国の削減目標と、実態の差を分析。1.5度という気温上昇の上限目標は深刻な危機にひんしていると結論付けた。

報告書によると、気温上昇を1.5度に抑えるには炭素排出量を45%削減することが必要だと科学者が指摘している一方で、炭素削減のための新しい取り組みでは、世界の排出量は2030年までに1%未満しか減少しないという。

地球の気温は、現在の政策のままでは今世紀中に2.8度上昇することになる。

各国が財政支援を受け、計画通りに政策を進めたとしても、上昇幅は2.4度までしか抑えられないという。

この報告書を作成した国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は、「我々は徐々に状況を変えていく機会を得ていたが、もう終わりだ」と述べた。

「加速する気候危機から我々を救うのは、経済と社会を根本から変えることだけだ」

国連は、排出量の大幅な削減を達成することは、もはや至難の業だと認めている。しかし、電力や産業、運輸、建物といった分野では、化石燃料からの脱却を急速に進めることができると指摘している。

アンダーセン事務局長は、「どんな場所でも気候変動に立ち向かわなくてはいけない」とくぎを刺した。

「学校の教室でも、会社の役員室でも、投票所の投票ブースでも、夕飯の食卓でも。気候変動をなかったことにはできない」

今週には、各国の地球温暖化対策の遅れを指摘する報告書が次々と発表されている。

イギリスでは上下院議員による国家安全保障戦略共同委員会が政府に対し、気候の温暖化によって重要なインフラにもたらされるリスクを「把握」する必要があると指摘した。

この報告書では、2020年8月にスコットランドで起きた豪雨による列車脱線事故や、2021年11月の豪雨で約100万人に影響が出た電力喪失などに触れ、「異常気象や気候変動の影響に強いインフラの確保に責任をもって注力する閣僚がいない」と指摘した。

一方で、地球温暖化対策の進展を指摘する報告書もある。

運輸の領域では、持続可能な移動手段が拡大している。世界的には、2021年に販売されたバスのほぼ半数が、電気か水素を動力源としていた。

乗用車においても、電気自動車の販売台数は前年の2倍となり、新車販売台数の9%に近づいている。

国際エネルギー機関(IEA)の報告書にも、希望が垣間見えている。

この報告書では、ウクライナでの戦争を受けたエネルギー危機が、より安全で持続可能なエネルギーシステムへの移行を早める可能性のある変化をもたらしたと指摘。また、アメリカや日本、韓国、欧州連合(EU)加盟国などでの一連の新政策により、2030年までにクリーンエネルギーへの投資が現在より50%以上増加し、約2兆ドルに達する見込みだとしている。

追加取材:エスメ・ストーラード

(英語記事 UN warns key climate threshold slipping from sight

提供元:https://www.bbc.com/japanese/63422841

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