2022年11月28日(月)

BBC News

2022年11月4日

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米共和党のトップ議員らが、中間選挙で連邦議会の過半数議席を同党が獲得した場合、ウクライナへの支援を削減するかもしれないと語り、選挙に火種をまいている。しかし実際、中間選挙の結果でアメリカのウクライナへの対応は変わるのだろうか?

ウクライナ国防省が投稿したある動画は、ロシアとの戦争をめぐる象徴的な光景を映していた。アメリカ製のロケットが次々と発射され、標的に当たって夜空で火球が光るその動画では、アメリカのメタルバンド「メタリカ」の楽曲が使われていた。

この発射には、ハイマース(高機動ロケット砲システム)と呼ばれる兵器が使われた。アメリカからウクライナにこれまでに送られた18基のうちの1基だ。アメリカは520億ドル(約7.7兆円)という大規模な支援パッケージを提供している。これは、他の国々によるウクライナ支援を全て合わせた額の2倍以上だ。

軍事専門家やウクライナ政府は、アメリカの支援がウクライナの作戦において極めて重要だと話す。

元米海軍将校で戦略・国際研究センターの防衛専門家、マーク・キャンシアン氏は、「アメリカの支援がなければウクライナは占領されていただろう」と語る。

しかし、この支援のパイプラインに影が差している。一部の共和党議員が、アメリカ国民が生活費に窮している中でウクライナを支援するメリットに疑問を投げかけたのだ。

共和党議員の主張は?

共和党の連邦下院トップのケヴィン・マカーシー院内総務は10月初め、共和党が議会を掌握した場合、ウクライナに「白紙小切手」を渡すことにはならないだろうと示唆した。

同党は現在、中間選挙で下院の過半数議席を獲得する勢いだ。アメリカの憲法によると、下院は全ての予算決議を行う。過半数を取れば、下院議長となったマカーシー氏がどの法案を採決にかけるかを決められる。

ウクライナ支援に対して同じような懸念を示す共和党員は他にもいる。ジョシュ・ホーリー上院議員(ミズーリ州)は、ウクライナ支援は「アメリカの利益にはならない」とし、「ヨーロッパにただ乗りを許している」と述べた。

この発言は、共和党内の分断を示すものでもあるようだ。マイク・ペンス前副大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の「擁護者」や、「アメリカを広い世界から切り離してしまう」共和党員を、強い口調で非難した。

今春の4000万ドル規模のウクライナ支援策に反対したのは全員、共和党議員だった。下院では57人、上院では11人が反対票を投じた。

アメリカは本当に支援をやめるのか?

欧州では、この可能性について懸念が広がっている。イギリス議会で国防特別委員会の会長を務めているトバイアス・エルウッド議員は米紙ワシントン・ポストに対し、「アメリカが撤退すれば、プーチンは敗北間際で勝利を奪ってしまうだろう」と話した。

しかし、ウクライナ当局やアメリカに拠点を置くオブザーバーらは、中間選挙の結果にかかわらず、支援が短期間で大きく減らされる可能性は少ないとみている。

ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は首都キーウでBBCの取材に応じ、アメリカの共和党と与党・民主党双方の議員との話し合いで自信を持ったと話した。

「誰が議会を動かそうと問題ないというシグナルを受け取った。(中略)ウクライナへの党派を超えた支援は続くと信じている」

2003~2006年に駐ウクライナ米大使だったジョン・ハースト氏はBBCに、マカーシー氏は党の右派の利益のために政治的な見せかけを行った責任を問われる可能性があると指摘した。

「共和党のポピュリスト(大衆主義者)側、ドナルド・トランプ前大統領側の人々が、ウクライナ支援に疑問を持っているのは間違いない。そこには例えほんのわずかではあっても、ウクライナへの敵対心や、プーチン氏のロシアへの隠れた尊敬の念がある」

その上でハースト氏は、中間選挙後に共和党のポピュリスト層が力を増す可能性は十分にあると説明。だが、その圧力が支援削減につながるかは疑問だと述べた。

マカーシー氏の発言を受け、民主党はウクライナへの支援方針を改めて強調した。だが、同党にも造反者がいる。

民主党の左派は先に、交渉による戦争解決を求める書簡を提出した。ただ、ジョー・バイデン大統領の評価を下げるものだとの批判を受けて取り下げている。

アメリカ国民はどう思っている?

世論調査では、ウクライナ支援の支持率はなお高いものの、戦争が長引くにつれ低下の兆候がみられる。

10月にピュー研究所が行った調査によると、アメリカ人の20%がウクライナを支援しすぎだと答えた。3月には7%、5月には12%だった。

一方で、ロイターとイプソスの調査では、11月初めの時点で回答者の73%が引き続き支援するべきだと述べている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが3日に発表した調査では、ウクライナ支援への意見は支持政党によって大きく異なることがわかった。

支援しすぎだと答えた共和党支持者は30%にのぼり、侵攻開始直後の3月(6%)から大きく増えている。

アメリカの対ウクライナ支援の長期的な見通しは不明だが、政治家が説得力のある意見を提示できれば、国民の支持は続くだろうとハースト氏は述べた。

「アメリカではどちらも党も、超党派的な発言で(ウクライナでのロシアの行いに関する)危険を指摘できるだろう」

「そうなれば、たとえ2、3年後であっても、アメリカ人は今と同じような資源の提供に大賛成すると、私は信じて疑わない」

(英語記事 Could US elections change Ukraine war?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63509246

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