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2022年11月7日

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ジェイムズ・ギャラガー保健・科学担当編集委員

研究施設でつくられた血液を人の体に入れる、世界初の臨床試験が実施された。イギリスの研究者らが明らかにした。

臨床試験では、スプーン2杯ほどの微量の血液について、体内でどう作用するかを調べている。

輸血に使われる血液はほとんどの場合、献血を頼りにしている。

研究者らは究極的には、極めて希少な血液型の血液の製造を目指している。

入手が困難なそうした血液は、鎌状赤血球症など、定期的な輸血に依存している人々が必要としている。

輸血の際に血液型が正確に適合しなければ、体が拒絶反応を起こし、治療がうまくいかない。血液型はA、B、AB、Oがよく知られているが、現在目標とされている組織適合のレベルは、それを超えるものだ。

英ブリストル大学のアシュリー・トイ教授は、血液型には「本当に、本当に珍しい」ものがあるとし、それを提供できるのは「イギリスで10人しかいないかもしれない」と話す。

インドで最初に確認された血液型「ボンベイ」の血液は、現時点ではイギリス全土で3ユニットしか存在しない。

血液はどのようにつくられるのか

今回の研究プロジェクトは、イギリスのブリストル、ケンブリッジ、ロンドン、国民保健サービス(NHS)のチームが共同で実施している。肺から全身に酸素を運ぶ赤血球に着目している。

流れはこうだ。

  • 通常の献血で血液1パイント(約470ミリリットル)を採取する
  • 磁気ビーズを使い、赤血球になりうる柔軟な幹細胞を探し出す
  • その幹細胞を研究施設で大量に増やす
  • その後、赤血球になるよう誘導する

このプロセスには約3週間かかる。最初に幹細胞を約50万個集めると、赤血球は500億個できるという。

それらをろ過し、移植に適した段階にある約150億個の赤血球を手に入れる。

「将来はできるだけ多くの血液を作りたい。私が頭に描いているのは、部屋いっぱいの機械が、通常の献血の血液から、血液をつくり続けている光景だ」とトイ教授は私に話した。

今回の試験では、少なくとも10人の健康なボランティアで血液を試す予定で、まず2人が参加した。少なくとも4カ月の間隔をあけ、5〜10ミリリットルの血液を2回提供される。1回は通常の血液で、もう1回は研究施設でつくられた血液だ。

この血液は、医療行為によく使われる放射性物質が付着されている。そのため研究者らは、それが体内でどのくらいもつのかわかる。

研究施設でつくられた血液は、通常の血液よりも強いと期待されている。

赤血球は通常120日ほどで交換が必要になる。一般的な献血では、若い赤血球と古い赤血球が混在している。一方、実験施設でつくられた血液はすべて新しいので、120日いっぱいもつはずだ。研究者たちは、この技術によって、将来の献血は量も回数も少なくて済むようになると考えている。

しかし、金銭面と技術面でかなりの問題がある。

平均的な献血では、NHSに約130ポンド(約2万2000円)の費用がかかる。血液をつくるとなると、それよりずっと多くの費用がかかる。ただ、今回の研究チームはそれがいくらかは明らかにしていない。

別の問題として、採取した幹細胞はいずれ消耗するため、つくられる血液の量が限られることもある。臨床現場で必要とされる量を生産するには、さらなる研究が必要になる。

NHS血液・移植部門の輸血メディカルディレクターを務めるファルーク・シャー博士は、「この世界最先端の研究は、鎌状赤血球症などの疾患がある人への輸血に安全に使用できる赤血球を製造するための基礎をつくる」と話した。

「この研究が、輸血が困難な患者たちに恩恵をもたらす可能性は非常に大きい」

(英語記事 Lab-grown blood given to people in world first

提供元:https://www.bbc.com/japanese/63538794

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