2022年12月9日(金)

BBC News

2022年11月10日

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バーンド・デスマン・ジュニア、BBCニュース、ワシントン

ドナルド・トランプ前大統領は、ホワイトハウスからは去ったものの、米政界で依然として大きな存在だ。再び大統領選に立候補するとされるなか、今回の中間選挙の結果は同氏にどんな影響を与えたのか。

トランプ氏は7日、オハイオ州で大勢の支持者の前に立ち、15日に「重大発表」をすると約束した。共和党の「赤い波」による勝利が予想されていた中間選挙の、ちょうど1週間後に当たる。この選挙は、同氏の党への影響力を測る格好の機会とみられてきた。

しかし「赤い波」は、実際にはさざ波に近いものだった。

トランプ氏は2024年大統領選への立候補を発表するとみられる。しかしそのタイミングは、同氏が支持した候補の多くが中間選挙であまり振るわなかった、その直後ということになる。今回の選挙の結果、「アメリカを再び偉大にする」(MAGA)という米保守主義のブランド力が今なお有効なのか、疑問符がついている状態だ。

トランプ氏にとってさらに気がかりなのは、2024年大統領選のライバル候補とされる、フロリダ州のロン・デサンティス知事(44)の大成功だろう。同知事は、トランプ氏と関係がぎすぎすしていると表ざたになる中で、再選をかけた今回の選挙で「世紀の勝利」を収めた。

中間選挙はこれまでのところ、トランプ氏にとってどんな結果となっているのか、そして彼の政治家としての未来にどんな意味をもちうるのか。以下にみていく。

デサンティスに注目集まる

共和党候補が各地で予想外の接戦に直面するなか、デサンティス氏は民主党のチャーリー・クリスト氏を相手に、約20ポイント差の地滑り的勝利を収めた。ラティーノからも圧倒的に支持されていた。4年前の選挙で初当選した時は、次点との差は0.5ポイント未満だった。

この勝利で、デサンティス氏が2024年大統領選に立候補するとの見方は一段と強まるだろう。8日夜にタンパであった祝勝パーティー会では、支持者らが2年後を視野に、「もう2年!」と声を合わせた(知事の1期の任期は4年)。「中身のあるトランプ」「トランプ2.0」などとジャーナリストや共和党ウオッチャーの一部から呼ばれる同氏の、求心力が強く示された光景だった。

デサンティス氏について、トランプ氏よりも有力な大統領候補だという見方は少なくない。米政治ニュースサイトのポリティコに「不屈のトランプ応援団」と評されたこともある右派のコメンテーター、マイク・サーノヴィッチ氏もその1人だ。

「トランプの2024年の可能性はゼロだ。今夜以降、もう議論の余地はない」と、サーノヴィッチ氏は8日夜にツイートした。「2024年はデサンティスでなければ完敗する」。

2年後にデサンティス氏と候補指名を争うかもしれないと、トランプ氏は気づいている。同氏はデサンティス氏に対し、「痛い思いをするかもしれない」と警告。デサンティス氏について「あまりよいとは言えないようなこと」を暴露するかもしれない、などと述べている。

共和党の世論調査担当で戦略家のパトリック・ラフィーニ氏は、デサンティス氏が選挙で大勝したことをふまえ、トランプ氏は「手負いの動物」のようなものだとした。

トランプ氏が支持した候補たち

トランプ氏は中間選挙を前に、多数の下院議員候補や知事候補、州議会議員候補を支持した。

選挙の最終結果はまだ判明していないが、トランプ氏にとっての結果は、よく言っても、勝ちもあったし負けもあったという程度だった

彼が支持した注目の候補のうち、上院選で勝利を確実にしたのは、オハイオ州の共和党候補JD・ヴァンス氏だけだ。ペンシルヴェニア州の上院議員候補のメフメト・オズ医師や、ミシガン州知事候補のテューダー・ディクソン氏らは敗れた。当落がまだ確定していない候補も多い。

米シンクタンク・ブルッキングス研究所のシニアフェロー、ジョン・フーダック氏は選挙前、トランプ氏が支持した候補が敗れれば、同氏の潜在的支持者や浮動層が、「彼の政治的な才覚を疑い始める」かもしれないと述べていた。

トランプ氏はこれまでのところ、推薦候補落選の責任を問われるのではないかと言われても、そんなことはないと一蹴している。自らのソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」では、昨夜は候補者たちにとって「素晴らしい夜」だったと称賛。自分が後押しした候補者174人が勝利し、敗れたのはわずか9人だったと自慢した。

トランプ氏は選挙当夜、勝利はすべて自分のおかげで、敗北は「まったく自分のせいじゃない」とも述べた。

それでも、今回の結果についてトランプ氏を非難する声はすでに出始めている。

喜ぶべき理由

トランプ氏には、8日の結果を喜ぶべき理由がまだあるかもしれない。

最も大きいのは、共和党がおそらく下院の多数党になることに関係する。そうなれば共和党は、トランプ氏と昨年1月6日の連邦議会襲撃事件との関係を長く調べてきた特別委員会を、解散させるかもしれない。同委員会は最近、トランプ氏に今月14日(「重大発表」の前日)までに証言するよう命じる召喚状を出した

米シラキュース大学政治学教授のグラント・リーハー氏は、特別委は「おそらく解散される」とみている。「そうなれば(トランプ氏は)自分の正当性が証明されたと主張するだろう」。

加えて、今回の選挙ではすでに、2020年の選挙結果を否定する数多くの候補者らが、連邦下院や各州の公職に当選している。前回大統領選の正当な勝者はトランプ氏だと信じるこの人たちの存在は、トランプ氏にとって、頼りになる政治的な味方が相当数できたことになる。

トランプ氏が大部分の共和党支持者の間で依然として人気があることは、世論調査でも示されている。デサンティス氏であれ、他の著名共和党議員であれ、トランプ氏に代わって大統領選の党候補になろうとする者は誰もが、この事実に立ち向かなくてはならない。

米誌アトランティックの編集者で、ジョージ・W・ブッシュ政権のスタッフだったデイヴィッド・フラム氏は、「トランプに代わって共和党のトップに立とうとする人は、トランプの存在を無視することはできない。トランプは巨大な存在で、あらゆる争いを、政策ではなく人間としての在り方そのものの争いにしてしまう」書いた。

「関わらないという選択肢はない。対立する相手がどう思っていようと、狙いを定めた相手にトランプは関わってくる。やり返す以外の選択肢はない」

(英語記事 How bad was Donald Trump's night?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63579637

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