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BBC News

2022年11月17日

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ジョージーナ・ラナード、気候変動・科学記者、BBCニュースシャルム・エル=シェイク

ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ次期大統領は16日、エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で演説し、熱狂的な聴衆に対し、気候変動対策に取り組む国際舞台に「ブラジルが戻ってきた」と語った。

ルラ次期大統領の演説会場には、ルラ氏の名前を連呼する支持者が集まった。アマゾンの熱帯雨林を回復させ、気候変動に加担する者を追いつめると、ルラ氏は約束した。

演説を聞こうと大勢が集まり、ルラ氏はCOP27でのスーパースター的存在の1人となった。

6日からエジプトのシャルム・エル=シェイクで始まったCOP27には120以上の国と地域が参加し、気候変動の影響を抑えるための対策を協議している。

ルラ氏は約2週間前の10月30日に行われたブラジル大統領選の決選投票で、現職で極右のジャイル・ボルソナロ大統領に勝利したばかり。COP27でアメリカや中国、欧州連合(EU)の指導者と面会するなど、当選後初となる国際舞台の場に登場した。

気候変動が最優先課題と

ルラ氏は「我々は、奈落の底に突き進むのを止めなくてはならない。アマゾンを守らなければ、世界の気候安全保障はありえない」とし、気候変動が新政権の最優先課題になると述べた。

「我々は何としても、森林破壊とバイオーム(生物群系)の縮小をゼロにする」

ブラジルの次期大統領が気候変動対策に意欲的なのは間違いない。しかし、公約実現こそが課題だと、複数の専門家は指摘する。

2003年から2期8年大統領を務めたルラ氏の復権をめぐっては、国内で深い分断が生じている。ルラ氏が国をまとめるのはたやすいことではない。

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国内の分断と気候変動への取り組み

ルラ氏はCOP27で、環境を破壊せずに富を生み出すことが可能だと、ブラジルは証明すると表明た。また、地球温暖化対策と貧困を切り離すことは不可能だとした。

気候変動対策のための資金を発展途上国が確実に受け取れるよう、ブラジルは取り組んでいくと、ルラ氏はより厳しい口調で述べた。

また、ボルソナロ現政権下で土地を狙われている先住民の保護も約束した。伝統的な衣装を着た先住民たちは立ち上がり、マラカスを振りながら歓声を上げた。

ただ、ルラ氏はブラジル議会での強い反発や社会の分裂など、国内で苦しい戦いに直面している。

来年1月にルラ氏に政権を譲るボルソナロ氏のもと、アマゾンでの森林破壊は記録的な高水準に達した。

激しく森林破壊が進む北部パラ州の先住民族のリーダーは、ボルソナロ氏がアマゾン保全の法律を完全に崩壊させたとBBCニュースに語った。

アメリカのジョン・ケリー気候変動問題担当特使は15日、ルラ氏がブラジルの環境問題への取り組みを完全に好転させると確信していると述べた。

ブラジルのイザベラ・テイシェイラ元環境相はBBCニュースに対し、「世界は」いま、COP27でブラジルを受け入れようとしていると述べた。

ルラ氏は国内での課題を念頭に、ブラジルは1つであり、自分はすべての人のために政治を行うと述べた。

テイシェイラ氏派、ルラ氏のアジェンダを進展させるには、国民と議員を説得し、互いに反対するのではなく同意する必要があると指摘した。

ルラ氏は環境保護機関の再建や、自然保護を推進するアマゾン基金の凍結解除、アマゾンでの犯罪行為に対処するなどし、ボルソナロ氏が残したレガシーを覆さなければならないと、ブラジルの気候観測ネットワークのマルシオ・アストリーニ事務局長は指摘する。

アストリーニ氏は、新政権が約束を守らなければ、市民社会は躊躇(ちゅうちょ)なく異議を申し立てるだろうとした。

「政府が成功していれば私たちはそれを支持し、失敗すれば、批判する」

一方で、非営利団体アラピャウ研究所の会長でビジネスリーダーのロベルト・ワーク氏は、ブラジルと世界は「過ちと失敗」に備えておかなければならないと指摘する。

「気候問題は複雑だ。ルラ氏は野心的な約束をしているが、ブラジルの政治情勢のため、私たちは失望することになる」

「森林破壊をやめると言っただけで、次の日には問題が解決しているなど、あり得ないので」

COP27に参加したブラジルの若い活動家たちは15日、ルラ氏と面会した。「とてつもなく感動的で、たくさん泣いてしまった。自分がブラジルの一員だと思えるなんて、信じられない」と、環境連合「クリマ・デ・ムダンサ」のメンバーで環境人種を研究するガブリエレ・アルヴェス氏はBBCニュースに語った。

COP27では18日あるいは19日の最終合意に向けて国家間の交渉が続いているが、重要課題については各国間に大きな隔たりが残っている。

気候変動による不可逆な損害救済の資金を誰が払うのか、依然として熱く議論が交わされている。そして途上国は、損失補填(ほてん)の資金を緊急に確保したいと考えている。

しかし、歴史的に二酸化炭素(CO2)の大半を排出してきた国々が補償すべきだという意見に、先進諸国は抵抗し続けている。

多数の科学者は、気候変動による最悪の影響を避けるためには、気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃度以内に抑えることが、不可欠だと指摘する。しかし、この目標達成が危うくなっていることも懸念されている。

(英語記事 Brazil is back, Lula tells climate summit

提供元:https://www.bbc.com/japanese/63657734

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