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BBC News

2022年11月17日

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ゴードン・コレラ、安全保障担当編集委員、BBCニュース

イランがイギリス人またはイギリス在住者の拉致や殺害を狙った可能性がある事案が、今年少なくとも10件あったと、英情報機関が16日発表した。

この数字は、イギリスの情報局保安部(MI5)トップのケン・マカラム長官が、同国が直面する脅威に関する最新の年次報告で明らかにした。

マカラム氏は、イギリスが「今後何年にもわたってロシアの侵略に備える必要がある」とも警告した。

ロシアについては、ウクライナ侵攻直後にロシアのスパイが各国から追放されたため、ロシアの諜報活動にとっては大きな戦略上の失点になったと話した。

ロンドンのテムズ・ハウスにあるMI5本部で最新情勢を報告したマカラム氏は、「2022年に私たちがいかに多様で多岐にわたる脅威に直面しているか、勘違いしてはならない」と述べた。

そして、「どのような手口だろうと、決してためらわずに実行する」国々が脅威となっており、これこそMI5が注目する最大の変化だと警告した。

イランの脅威

イランについては、「攻撃的な情報機関」を通じて、イギリス国内で「直接」脅威を突き付けているとの見方を示した。

これには、イラン政府が敵とみなすイギリス人やイギリス在住者を対象とした、拉致や殺害の意図も含まれるという。

「こうした脅威の可能性を、1月以降だけで少なくとも10件は確認している」と、長官は明らかにした。

先週には、イギリス在住のイラン人ジャーナリストたちが、命が狙われている可能性があると警察に警告されていたことが明らかになった。

長官は、MI5が国内外のパートナーと協力し、「全く容認できない活動」を阻止してきたと述べた。

マカラム氏は、潜在的な謀略の詳細は説明できないとしながらも、イランは自国のスパイを使って活動することもあれば、代わりに他国のスパイを使うこともあると説明。さまざまな戦術を組み合わせ、西側諸国内で行動を起こしたり、標的の人物をイランに誘い戻したりしているとした。

また、近年はヨーロッパ各地で、イランがためらうことなく「無謀な」行動に出ていることが確認されていると述べた。

マカラム氏はさらに、イランはロシアも支援をしているとし、ウクライナで「悲惨な状況を招いている」ドローンなどを供給しているとした。

ロシアの脅威

ロシアのウクライナ侵攻については、「歴史書の中のことと思われていた国家安全保障上の問題を提起している」と警告。

ロシアが今後も、スパイやサイバー攻撃といった目に見えない脅威に加え、エネルギー価格への圧力や偽情報といった明白な手段をこれに組み合わせ、イギリスを狙い続けるだろうとして、マカラム長官は警戒を呼びかけた。

「ロシアは私たちを攻撃し続ける」

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その一方でマカラム長官は、ロシアのスパイによる活動を困難にする能力が各国にはあるとして、楽観的な見方を示した。

2月のウクライナ侵攻以降、世界中で600人以上のロシア政府関係者が追放され、そのうち400人以上がスパイとみられていると、マカラム氏は公表。「これはロシアの情報機関に対する、最近のヨーロッパ史で最も重大な戦略的打撃となった」と述べた。

イギリスは、外交官のふりをしていたロシアのスパイ23人を追放した。さらに、補充要員として外交ビザを申請したロシア人約100人についても、安全保障上の理由からビザ発給を拒否したという。

マカラム氏は、「私たちは気を抜いてはならない」と付け加えた。「今後数年間は、ロシアがイギリスに対して陰に陽に攻撃してくることを想定しておく必要がある」。

中国という難題

さらに長官は、中国を「いつまでも続く大きな難題」と呼んだ。中国は「あらゆる手段」を使って敵対者と見なす人々を監視し、時には威嚇するからだという。

英マンチェスターの中国総領事館では先月、民主化を求めて抗議していた人が襲われた

「そうした弾圧の兆候がますます見られる」とマカラム氏は述べた。そして、これは中国が国外に「警察署」を設置しているという指摘とどまらず、ほかにもさまざまな形で、中国政府に異を唱える人たちに圧力をかけているのだと話した。

「イギリス人やイギリスで暮らしている人々を脅し、嫌がらせをすることは許されない」とマカラム氏は述べた。

MI5は1月、中国がイギリスの政治に影響力を及ぼそうとしていることについて、異例の警戒を呼びかけた。長官は、中国の情報機関がイギリスの政治や公的機関の活動に影響を与えようとし続けていると主張。地方議員や議会議員候補になる前などのキャリアの早い段階で、工作員になりそうな人を勧誘していると説明した。

テロは

テロについては、依然として脅威だとマカラム氏は述べた。ただ、国際的なネットワークの脅威は、数年前ほど深刻ではないとした。

長官によると、MI5と警察は2017年以降、実行に近い段階の攻撃計画を37件阻止した。脅威について昨年報告した時点からは、8件増えたという。

37件の事案には、イスラム教主義者と極右のテロが混在していたという。

後者については、世界的に活動する右翼過激派のインフルエンサーが増え、陰謀論を増幅させていることをMI5として把握していると、マカラム氏は述べた。

また、国際的なテロ集団が再編成を試みており、「発見と破壊が極めて困難な、自己発生的な単独のテロリストという邪悪な問題」があることも、MI5として確認しているとした。

銃器を入手しようとする動きの増加が懸念されており、それには手製の武器や3Dプリンターで作った武器なども含まれるという。

(英語記事 Iran organised 10 kidnap and death plots, MI5 says

提供元:https://www.bbc.com/japanese/63658184

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