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BBC News

2022年11月24日

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サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会で、ドイツ代表選手らが23日、日本との試合前の写真撮影で、口を手でふさいだ。ハンジ・フリック監督は、「FIFA(国際サッカー連盟)が沈黙を強いているとのメッセージを伝えるため」だったと説明した。

今大会では、ドイツなど欧州7チームが、社会の多様性と包括性を促進するため、「OneLove」と書かれた腕章をキャプテンマークとして着用する予定だった。

しかしFIFAは、「OneLove」腕章を着けた選手には警告を出すと注意した

この日のドイツ選手の行動は、こうした経緯を受けたもの。ドイツに対する懲戒処分は予定されていない。

日本戦でドイツのマヌエル・ノイアー主将は、FIFAが用意した差別撤廃を訴える腕章を着けた。試合は1-2で日本に敗れた

ドイツのフリック監督は試合後、「私たちが発したいと思っていたサインであり、メッセージだった。FIFAが私たちを黙らせているというメッセージを伝えたかった」と述べた。

FWカイ・ハヴェルツ選手も、「正しい行動だった」と振り返った。

「もちろん、こうして声明を出すのは私たちにとって大事なことだ(中略)私たちは試合で何ができるのかを示したと思う」

「どこであろうと私たちが応援すると示すのは正しい行動だと思うが、FIFAがそれを難しくする」

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ドイツサッカー連盟(DFB)は、「政治的な声明を出そうというものではなかった」とツイート。

「人権は譲れないものだ。当然のことだが、まだそうなっていない。だから、このメッセージが私たちにとっては大事なのだ」と続けた。

「渦中の腕章を否定することは、私たちの発言を否定するのと同じだ。私たちは自らの立場を貫く」

DFBはまた、「私たちは自分たちで選んだキャプテンマークを使うことで、ドイツ代表チームが掲げる価値観の多様性と相互尊重を支持したいと思った」と表明した。

その上で、「他の国々と一緒になって発信したいと思っていた」と述べた。

FIFA警告の合法性を問題視

DFBでは、腕章を着用した選手に制裁を科すというFIFAの警告が合法かどうか、調べを進めているという。

DFBのメディアディレクターのシュテフェン・シモン氏は、「FIFAは多様性と人権を象徴する腕章の使用を禁止した」と指摘。

「FIFAはこの問題を、スポーツ制裁という強力な脅しと結びつけたが、制裁の具体的な内容は示していない」とした。

シモン氏は独メディア「ビルト」に、DFBとしてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に連絡したと説明。ノイアー主将が27日のスペイン戦で、「OneLove」腕章をつけられることを望んでいると述べた。

一方、デンマークサッカー協会のヤコブ・イェンセン最高経営責任者(CEO)は、「OneLove」腕章の着用を予定していた7チームが、今後の法的対応に関して協調していると述べた。

しかし同CEOは、この問題をCASに持ち込むのは「不可能」だと主張。CASに行く前に、FIFA内で申し立てをする必要があると説明した。

こうしたなか、ドイツのスーパーマーケットチェーンのレヴェは、DFBとの広告契約を停止した。FIFAと距離を置くのが狙いとされる。

主将により異なる見解

「OneLove」のキャンペーンは、多様性と包括性を促進し、差別に反対するメッセージを打ち出すものとして、サッカーの2020年欧州選手権(ユーロ2020)開幕を前にオランダで始まった。

そのオランダの代表チームのMFダフィ・クラーセン選手は、ドイツの抗議行動を称賛。「ドイツは自分たちの意見を表明するため、独自の方法を見つけた」と述べた。

一方、スイス代表のグラニト・ジャカ主将は、24日のカメルーン戦では同様の抗議行動はしないと説明。「私たちはルールを受け入れるだけだ」、「今はサッカーに集中しなければならない」と話した。

イングランド代表のGKジョーダン・ピックフォード選手は、チームとしてはハリー・ケイン主将に「OneLove」腕章を着けてほしいと思っていたと明かした。しかし、「決定はチームや選手がどうこうできるものでなくなった」と述べた。

カタールでは、同性同士の関係や、同性同士の関係を促進することは犯罪とされている。

こうしたなか、元イングランド代表のアンドロス・タウンゼント氏は、カタールで見られるLGBTQ+(性的マイノリティー)の権利に対する姿勢への抗議について、「少し落ち着かない気分だ」と表明した。同国の姿勢はイスラム教のシャリア法に基づくものだとし、外国人が他国に来てその国の信仰を尊重しない行動を取ることに違和感を示した。

「OneLove」腕章をめぐっては今年9月、欧州サッカー連盟(UEFA)のネーションズリーグとW杯カタール大会で、欧州10チームの主将が着用する予定だと発表された。10チームは、イングランド、ウェールズ、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、オランダ。

そのうち、ノルウェーとスウェーデンはW杯カタール大会に出場していない。また、フランスのウーゴ・ロリス主将は、カタールに「敬意を表したい」として、「OneLove」腕章は着けないと表明した。

アラブ諸国は否定的

ドーハで取材しているBBCのシャイマ・ハリル記者によると、今回のドイツの行動に対して、アラブ諸国はほぼすべてが否定的に反応しているという。

また、アラビア語のハッシュタグ「ドイツ-日本」がトレンドになり、多くの人はドイツ代表選手らのジェスチャーを「侮辱的」「挑発的」などと批判しているという。FIFAに対して、選手にもっと圧力をかけるよう求める声も出ているという。

そうしたことをふまえてハリル記者は、今回のW杯をめぐっては、特にLGBTをめぐる論争において、2つの並行世界が併存しているように感じられるとし、その緊張感が今大会の底流になり続けていると伝えた。

(英語記事 Germany players cover mouths amid Fifa armband row

提供元:https://www.bbc.com/japanese/63740006

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