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BBC News

2022年11月24日

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高齢化するベビーブーマー(1950年代~1964年ごろ生まれ)世代が労働市場から離れていく中、カナダはその穴を移民で埋めようとしている。しかし、誰もがこの計画に乗り気なわけではない。

カナダ政府は11月初め、2025年まで年間50万人の移民を受け入れる野心的な計画を発表した。向こう3年で150万人が移住する計算だ。

これにより、カナダは毎年、人口当たりでイギリスの約8倍、隣国アメリカの4倍もの永住者を受け入れることになる。

しかし最近の世論調査では、これほど多くの移住者を迎えることへの不安もあらわになっている。

カナダは大きく出ている

カナダは長年、人口と経済拡大のため、永住者(国籍は取得しないが永住権を持つ移民)の獲得に力を入れてきた。昨年には史上最多となる40万5000人を受け入れている。

この政策はある意味、単純な算数に基づくものだ。多くの西側諸国と同様、カナダも少子高齢化問題を抱えている。こうした国家が縮小ではなく成長を求める場合、移民を受け入れなくてはならない。

政府の発表によると、移民はすでに同国の全ての労働分野で人数拡大に貢献している。2032年までには人口増にも寄与することになるという。

今月発表された年間50万人という数字は、2021年に迎え入れた移民数より25%多い。

世界でも特異な場所

現在のカナダでは、国民の4人に1人が移民としてこの国にやってきた。これは主要7カ国(G7)の中で、最も高い割合だ。一方、人種のるつぼとも言われるアメリカでは、外国で生まれて移民した人の割合は14%、イギリスも約14%となっている。

英オックスフォード大学・移民研究所のマデレーン・サンプション所長は、イギリスが移民政策で遅れているのではなく、カナダが「とっ種している」のだと説明する。

イギリスは小さな島国で、人口はカナダの2倍。人口密度はすでにかなり高い。一方、世界でも特に広い国土にわずか3800万人超が住むカナダには、人口を増やすの余地がある。

「一般的にイギリスは、カナダのようには、人口を増やそうとしていない」と、サンプション氏は述べた。

カナダ・マクマスター大学の政治学者、ジェフリー・キャメロン博士は、少子高齢化を抱える多くの国にとって、移民政策が成功するには、国内でいかに支持されるかが鍵になると話す。

「ほとんどの国では世論が、移民受け入れを制限する要因になっている」

アメリカでは、南側の国境からの移民が史上最多を記録する中、移民の数が求人件数を上回るのではないかと広く心配されている。

イギリスでも欧州連合(EU)離脱以前は、EUに加盟する東欧諸国からの移民が大勢イギリスに移住していた。これが、イギリス国内で移民に否定的な世論を作り出していた。しかしサンプション氏によると、移民に好意的な意見がここ数年で増えてきた。これには、イギリス国内に誰がどう入ってくるのか、イギリス政府が前よりしっかり管理できるようになったと、思われていることが影響しているという。

一方、カナダでは歴史的に、非常に多くの人が移民受け入れを支持してきた。

「その理由のひとつにカナダでは、政府が移民をしっかり管理しているし、カナダの利益になるように管理されていると、国民がある程度、信頼しているからだと思う」と、キャメロン博士は話した。

だが、移民への懸念が全くないわけではない。

近年のアメリカ国境での移民の流入が議論を呼ぶ中、カナダでは2018年にの新党「カナダ人民党」が出現。2019年の連邦選挙まで、国内の関心を集め続けた。

地域によっても、移民への考え方は異なっている。

政府が年間50万人という積極的な移民目標を打ち出した際、独自に移民数に上限を設けているケベック州は、年間5万人までしか受け入れないという方針を示した。つまり、カナダの人口の23%が住む同州が受け入れるのは移民の1割のみという計算だ。

フランソワ・ルゴール州首相は、移民が増えると州内のフランス語が弱くなるのが心配だと話す。

「(年間)5万人でもすでに、フランス語話者の減少を止めるのは難しい」

また、カナダにはまだ人口拡大の余地が面積的には確かにあるかもしれないが、住宅事情が圧迫されている場所もある。人口の1割が住むトロントやヴァンクーヴァーといった大都市は、住宅価格の危機に直面している。

カナダの調査会社レジェールとカナダ研究協会がカナダ人1537人を対象にした調査によると、回答者の75%が、新たな移民策が住宅や社会福祉に与える影響が少しに気になる、あるいはとても気になると答えた。また、移民受け入れ目標が高すぎると答えたのは49%だったのに対し、ちょうどいいと答えたのは31%だった。

カナダ独自のアプローチ

経済移民に注力していることも、カナダが他の西側世界と異なる点だ。カナダの永住者の約半数が、家族と一緒に暮らすためではなく、能力を見込まれて移民してきた人々だ。

政府は、2025年までにこの割合を60%にしたいとしている。

前出のマクマスター大学のキャメロン博士は、これはカナダの移民システムが理由だと説明する。同国では1960年代、国ごとに移民数を割り当てるシステムから、カナダ経済に寄与する可能性の高い高技能移民を優先するポイント制度に切り替わった。

「今でも同じ原則が、この仕組みを動かしている」とキャメロン博士は言う。

オーストラリアやニュージーランドも似たような制度を持っているものの、これは世界的にもユニークなシステムだという。

イギリスでは、経済移民が永住者に占める割合は4人に1人よりわずかに多いといったところだ。アメリカでは、グリーンカード保有者のうち経済的理由で移住を認められているのはわずか20%ほどだという。両国とも経済移民の割合を増やしたい意向を示してはいるものの、カナダとの大きな違いは、経済移民は雇用者に保証人になってもらう必要がある点だ。

カナダでは、雇用契約の有無はポイントに加算されるものの、必須項目ではない。

イギリスもこのほどポイント制度に切り替えたが、サンプション氏によれば、実質的には、すでに雇用契約のある移民を優先していた旧制度に近いままだという。

カナダは目標を達成できるのか?

カナダは他の主要国に比べて経済移民を多く受け入れているだけでなく、難民の再定住でも上位にあり、2021年には2万428人の難民を受け入れた。

しかし、将来に向けて野心的な目標を掲げているものの、これまで常に予定通りだったわけではない。カナダは2021年、約5万9000人の難民を再定住させるとしていたが、これは実際の受け入れ人数のほぼ3倍だった。

同国のショーン・フレーザー移民相はカナダの公共放送CBCのインタビューで、この主な原因は、カナダと世界各地で相次いだ、新型コロナウイルス関連の国境閉鎖だったと述べた。

カナダは2023年までに、7万6000人の難民の再定住を支援することを目標としている。

(英語記事 Why Canada aims to bring in 1.5m immigrants by 2025

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63712582

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