2023年1月30日(月)

BBC News

2023年1月5日

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ジーン・マケンジー、BBCソウル特派員

北朝鮮にとって2022年は記録破りの年だった。

年間のミサイル発射はかつてない多さだった。2022年に空に放ったミサイルの数は、同国がこれまでに発射した全ミサイルの4分の1を占めるほどだった。また、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、北朝鮮は核兵器保有国となり、今後も核を保有し続けると宣言した年でもあった。

こうした動きを受け、朝鮮半島をめぐる緊張はドナルド・トランプ米大統領(当時)が「炎と怒り」で北朝鮮に応じると発言した2017年以来、最高潮に達した。

では、次に一体何が起こるのだろうか。

核兵器開発

北朝鮮は2022年、核兵器開発で大きな進展を遂げた。手始めに、韓国への攻撃を想定した短距離ミサイル実験を複数回行い、その後は日本を狙える複数の中距離ミサイル実験を行った。

そして2022年が終わるまでに、これまでで最も強力な大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験に成功した。このICBMは理論上、アメリカ本土全体に到達する能力を持つとされる。

金氏はまた、核兵器使用のハードルを下げた。昨年9月に北朝鮮の核保有国としての地位が不可逆的なものになったと表明すると、核兵器はもはや戦争の抑止のためだけでなく、戦争に勝つために先制的かつ攻撃的に使用できると明文化した。

12月26~31日に開かれた朝鮮労働党中央委員会の拡大総会では、2023年の核戦略を掲げた。

その最優先事項に挙げたのは、核兵器の製造を「指数関数的に増やす」というもの。韓国との戦争に使用できるより小型の戦術核兵器の大量製造も含まれると、金氏は発言した。

これは北朝鮮の核開発における最も深刻な進展だと、米シンクタンク「カーネギー国際平和基金」の核兵器専門家アンキット・パンダ氏は指摘する。

戦術核兵器を製造するには、北朝鮮はまず小型ミサイルに搭載できる小型化した核爆弾を製造する必要がある。北朝鮮政府がこれを実現できたという証拠を、国際社会はまだ確認していない。情報機関は同国がそうした装置の実験を行うと想定して2022年の大半を過ごしてきたが、結局1度も実施されなかった。2023年中に試すのかもしれない。

2023年の核戦略リストには、春ごろに軍事偵察衛星を太陽同期軌道に投入することや、アメリカを標的とした、より強固な固体燃料式ICBMの開発も含まれる。固体燃料式は発射直前に燃料を注入する液体燃料式に比べて発射時間が短縮され、事前の探知がより難しいとされる。

これらを踏まえると、2023年は昨年とまったく同じ雰囲気になると考えられる。北朝鮮政府は今後も、国連安全保障理事会の決議に反する形で核兵器の実験や改良、拡大を積極的に続けていくとみられる。

実際、北朝鮮は新年を迎えて3時間もたたないうちに今年最初のミサイル実験を行った。

しかし、「今後1年間に発射されるミサイルのほとんどは実験ではなく訓練かもしれない」とパンダ氏は指摘する。「北朝鮮は現在、起こりうる紛争でミサイルを使用する準備をしている」。

話し合いは?

これほど広範な目標リストがある以上、北朝鮮の指導者が今年中にアメリカとの話し合いのテーブルに戻るという選択をする可能性は低い。前回の非核化交渉が2019年に決裂して以降、金氏は協議を望んでいるような気配をみせていない。

金氏が自身の目的を達成するための最大限の力を獲得できる瞬間を待っているという見方もある。金氏は自分の思い通りに交渉を進めるために、紛れもなく北朝鮮にアメリカと韓国を破壊する能力があることを証明できるようになるまでは、交渉のテーブルに戻ることはないだろう。

一方で、昨年は中国やロシアに接近した。 北朝鮮は外交政策を根本的に変えようとしているのかもしれないと、米政府の北朝鮮アナリストを20年間務め、現在はオーストリアに本部を置く民間研究団体「オープン・ニュークリア・ネットワーク」(ONN)に所属するレイチェル・ミニョン・リー氏は述べた。

「北朝鮮がもはやアメリカを自国の安全保障や存亡にとって必要な存在として見ていないのであれば、将来的な核交渉のかたちやあり方に多大な影響を与えることになるだろう」

朝鮮半島をめぐる緊張

こうした中、北朝鮮をめぐる状況は不安定さを増している。

北朝鮮による「挑発行為」だと認識されるたびに、韓国は、そして時にはアメリカも報復措置を取っている。

こうした動きは2022年5月に、北朝鮮に対して強硬姿勢を取ると約束した尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が韓国の新大統領に就任したことで始まった。尹氏は軍事力で対応することが北朝鮮を阻止する最善の方法だという信念に導かれ、対北朝鮮政策を取っている。

アメリカとの大規模合同軍事演習を再開させ、これに反発した北朝鮮はさらなるミサイルを発射した。これが軍事による報復措置のきっかけとなり、互いに南北軍事境界線近くまで戦闘機を飛行させたり、海に向けて砲撃したりした。

先週、北朝鮮はドローン5機を南北軍事境界線を越えて韓国の領空に侵入させた。この予想外の出来事によって状況はエスカレートした。韓国軍は戦闘機と攻撃用ヘリコプターを発進させたものの撃墜できず、その防衛能力の弱点を露呈するかたちとなった。普段は北朝鮮側の活動に動じない韓国の一般市民の間に不安が広がった。

尹大統領は北朝鮮によるあらゆる挑発行為に対して報復措置を取り、北朝鮮を処罰すると誓った。

北朝鮮を監視する分析サービス「コリア・リスク・グループ」のチャド・オキャロル最高経営責任者(CEO)は、2023年には南北間の緊張が直接対決に発展し、死者が出る可能性さえあると予測している。

「南北どちらかの反応がエスカレートし、意図的であろうとなかろうと、実際に砲撃の応酬が繰り広げられる事態になるかもしれない」

たった1つのミスや誤算が事態を一変させる可能性はある。

北朝鮮国内の状況は

北朝鮮の人々にとって、2023年はどんな年になるのだろうか。

国民は3年もの間、新型コロナウイルスのパンデミック対策の厳しい国境閉鎖の影響を受けてきた。新型ウイルスが流入しないよう貿易さえも停止され、深刻な食料・医療品不足を招いたと人道支援団体はみている。金氏は昨年、食糧難に直面していることを認める、異例の発言をした。

同年5月には、国内で初めて新型ウイルスの感染が確認されたと認めた。しかし、わずか数カ月後には新型ウイルスを撃退したと主張した。

では、2023年にはついに中国との国境を再び開き、人や物資の流入を認めることになるのだろうか。

北朝鮮にとって最も重要な貿易国の中国は、入国者に義務づけてきた新型ウイルス対策の隔離措置を2023年1月8日に終了する。中国の国境再開は北朝鮮に希望をもたらすことになる。北朝鮮は国境沿いの地域の住民を対象としたワクチン接種を実施していると報じられている。ただ、同国の不安定な医療状況から、ONNのリー氏は慎重な見方を示す。

「経済が破綻寸前になるなどの緊急事態が発生しない限り、世界的なパンデミックやとりわけ隣国である中国でのパンデミックが収束したとみなされるまでは、北朝鮮が国境を完全に再開することはないだろう」

注目すべき展開がもう1つある。それは、金氏の後継者として誰が北朝鮮を率いていくのかという疑問を解くヒントだ。金氏が描く後継者計画は明らかになっていないが、同氏は昨年11月に初めて、公の場に実の子供の1人とみられる女の子を連れて登場した。この少女は「ジュエ」という名前の娘だとされる。

少女はこれまでに、3つの軍事行事で撮影された写真で姿が確認されている。元旦にはさらに多くの写真が公開され、彼女が選ばれし者ではないかと推測する人もいる。

北朝鮮が予測不可能な国であることは言うまでもない。2023年も昨年と同様に、予測不可能かつ不安定な年になりそうだ。

(英語記事 What we can expect from Kim Jong-un in 2023

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64159592


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