2023年1月30日(月)

BBC News

2023年1月6日

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アメリカ連邦議会下院(定数435)の議長選は5日、異例の3日目の投票に入り5回投票が行われたものの、多数党・共和党の強硬右派が造反を続け、ケヴィン・マカーシー議員が必要な過半数票を得られなかった。ドナルド・トランプ前大統領を擁立する共和党議員も出た。投票はこれで計11回となり、連邦議会が奴隷制をめぐって対立していた1859年以来、初めて10回を超えた。

昨年11月の中間選挙の結果を受けて3日に招集された新しい顔ぶれの下院では、共和党議員は222人。マカーシー議員が議長になるには、議員218人の支持が必要だが、党内の強硬右派約20人が造反を続けている。

この日の投票でも新議長は決まらず、下院共和党幹部のスティーヴ・スカリース議員(ルイジアナ州)が、6日正午までの一時休会を提案。スカリース議員はマカーシー氏の後任として今年1月の会期から、共和党院内総務に選ばれている。

民主党は休会に反対したもの、採決の結果、下院はいったん休会した。

マカーシー氏に造反する共和党の強硬右派はこの日、前日に続きバイロン・ドナルズ下院議員(フロリダ州)を主に支持。11回目の投票では、マカーシー議員が200票、ドナルズ議員が12票、ケヴィン・ハーン議員(オクラホマ州)が7票を得た。マット・ゲイツ議員(フロリダ州)が推挙したトランプ前大統領には、ゲイツ議員のみが投票した。

10回目の投票では、マカーシー議員が200票、ドナルズ議員が13票。9回目投票では、マカーシー議員が200票、ドナルズ議員が17票。8回目は、マカーシー議員が201票、ドナルズ議員が17票。7回目は、マカーシー議員が201票、ドナルズ議員が19票だった。

民主党の下院議員212人は引き続き、全員が一貫して自党のハキーム・ジェフリーズ院内総務(ニューヨーク州)に投票した。

下院が議長選出でこれほどもめるのは、奴隷制をめぐり国内が激しく対立していた1859年以来。当時は、議長を選出するのに投票を44回重ね、年末年始をまたいで1860年にようやく決まった。

1回目の投票で議長が決まらなかった1923年以来で、この年は投票9回を経て数日かけてようやく新議長が決まった。今回の議長選は、その記録を破ったことになる。

下院議長は、下院の議事進行を統括し、議題や議論の規則、どの法案を採決にかけるかなどを決める。大統領権限の継承順位では副大統領に続くため、米政界有数の有力者になり得る。

下院は、投票の過半数を得た議長が決まるまで投票を続ける。議長が決まるまでは、新人議員の宣誓就任も行えず、新規則や法案の採決などの議事にも着手できない。

譲歩しても情勢変わらず

昨年11月の中間選挙で共和党は下院多数党になったものの、民主党との議席差は10議席にとどまった。このため、マカーシー院内総務が議長の席を確保するには、党内の支持を固める必要があった。その状況で強硬右派は、マカーシー議員の議長就任を駆け引き材料に、さまざまな要求を突き付けていた。造反勢力はマカーシー議員が、中道寄り過ぎる、あるいは権力志向過ぎると批判を続けてきた。

これに対してマカーシー氏はそうした議員たちの支持を得ようと、現職議長を解任するための手続き簡素化を受け入れるなど、大きく譲歩する姿勢を見せていた。

4日夜から5日にかけて、マカーシー氏は実際に、造反組に複数の有力委員会の主要ポストを提示。特に、本会議の議事日程を決める規則委員会での役職は、造反組にとって大きな成果とみられていた。

マカーシー氏はこのほか、議長解任請求の手続きについて、わずか1人でも下院議員がそれを要求すれば、解任案を本会議の採決にかけるという変更を受け入れたとされる。

しかしそれでも情勢は変わらなかった。

BBCが取材した造反組の1人、ラルフ・ノーマン下院議員(サウスカロライナ州)は、一貫してマカーシー氏の議長就任に反対している。

「我々は脅された。委員会ポストを取り上げると言われた。あらゆる特権を失うと言われた。なので、『こちらに何も質問させないなら、就任させる最強の人物の身体検査が許されないなら、我々はおさらばする』と伝えた」のだと、ノーマン議員はBBCに話した。

ノーマン議員は、ともかくマカーシー議員が信頼できないのだとも述べた。自分のような保守派は党幹部を支持して当然だと軽視されており、票目当ての譲歩姿勢もおざなりだと批判した。

造反組が抵抗する理由には、議事手続きや委員会ポストを求める駆け引きだけでなく、マカーシー議員の人となりに対する反発も含まれているとみられる。

たとえ今後マカーシー議員が過半数を得て議長になったとしても、下院の共和党は任期満了までの2年間、穏健派と強硬右派が激しい対立を続ける可能性があると、多くのアナリストが警告している。

トランプ氏擁立も

共和党内の強硬右派はこの日、マカーシー院内総務に代わる候補として新たに、トランプ前大統領も擁立した。合衆国憲法は、下院議長の候補は、下院議員の推挙を得る必要があるものの、下院議員でなくてはならないとは明記していない。下院はこれまで常に下院議員を議長に選んできたものの、過去に議員以外を候補にしたことはある。たとえば2019年には当時、前副大統領で元上院議員だったジョー・バイデン氏が推挙された。

マカーシー氏の議長就任に強く抵抗する「Never Kevin(ケヴィンは絶対に認めない)」造反組1人のゲイツ議員はこの日、2度にわたりトランプ前大統領を擁立。トランプ氏が暮らすフロリダ州の選挙区選出のゲイツ氏は、「(トランプ氏は)まず下院をまた偉大にできる」と述べた。

ゲイツ氏がこの日最初にトランプ氏を擁立した際には、議場に驚きの声が響いた。

マカーシー氏にも共和党内強硬派にも影響力をもつとされていたトランプ前大統領は、議長選初日の直後は沈黙していたものの、4日にはマカーシー氏への支持を呼びかけていた。

自らのソーシャルメディアでトランプ氏は、「ケヴィンに投票しろ。取引をまとめろ。勝利をつかめ」とすべて大文字で強調して書いた。

さらに「共和党員、偉大な勝利を、巨大で恥ずかしい敗北にするな」とすべて大文字で書いたほか、「ケヴィン・マカーシーはいい仕事をする。もしかするとすごい仕事をするかもしれない。見てるといい!」と書いた。

有権者の提案

膠着(こうちゃく)が続く下院議長選を見守るアメリカの有権者は、ツイッターで様々な提案をしている。

マカーシー議員の代わりに議長にしてはどうかと名前が挙がっているのは、スター歌手ドリー・パートンさんや、経歴詐称が大問題になっている共和党の新人下院議員ジョージ・サントス氏(ニューヨーク州)

さらには、大統領選に敗れて昨年暮れにブラジルを出国し、米フロリダ州に滞在中のジャイル・ボルソナロ氏の名前も挙がった。ボルソナロ氏は、フロリダ州のスーパー店内を歩いている様子が撮影されている

https://twitter.com/WorstLightskin/status/1611117414908940289

(英語記事 Live Reporting

提供元:https://www.bbc.com/japanese/64182849


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