2023年1月30日(月)

BBC News

2023年1月7日

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アメリカ連邦議会下院(定数435)の議長選は7日未明(日本時間同日午後)、異例の15回目の投票でついに多数党・共和党のケヴィン・マカーシー議員(カリフォルニア州選出)が必要な過半数票を得て、議長に選ばれ、就任した。深夜の14回目の投票でまた結論が出ず休会しそうになったが、休会を急きょ中止して再び投票に臨むという波乱を経ての当選となった。

マカーシー氏は午前1時(日本時間午後3時)過ぎ、議長として初登壇し、「やあ、簡単だったね」と皮肉な冗談を飛ばし、議場の笑いを誘った。生活必需品の価格引き下げや政府の無駄遣いの廃止を約束し、中国共産党との経済競争に勝つと言明したほか、政府の新型コロナ対策や「連邦捜査局(FBI)の武器化」などを徹底調査すると約束。学校での「woke(意識高い系)強化」をやめさせ、国の南側の国境警備を強化するなど、共和党保守派が重視する政策を次々と掲げた。「この国のためにより良い未来を実現したいと情熱を共有する人とは、だれでも一緒に協力する」とも述べた。

演説を終えると、午前1時40分ごろに「合衆国憲法を内外の敵から守る」と宣誓就任。新議長はその後、議員たちを一斉に宣誓就任させた。

マカーシー氏の前に登壇した民主党のハキーム・ジェフリース院内総務は、超党派の協力を共和党に約束しつつ、自由や希望、正義などを重視する信念は決して手放さないとして、陰謀論を非難。「Yes, We Can」と強調した上で、「国民の議長槌(つち)をケヴィン・マカーシーに渡します」と締めくくり、マカーシー氏を議長席に招いた。

マカーシー氏は15回目の投票で、全428票のうち過半数の216票を得て、当選した。下院議長になるには、投票する議員の過半数を得る必要がある。欠席や棄権する議員の人数によって、過半数の票数は変わる。

6日の日中までマカーシー議員に反対していた共和党内の強硬右派のうち、計6人が最後の投票で棄権を意味する「在席」に転じた。他の共和党議員への投票はなかった。

民主党のジェフリース院内総務は一貫して、212票を得続けた。

下院議長は、下院の議事進行を統括し、議題や議論の規則、どの法案を採決にかけるかなどを決める。大統領権限の継承順位では副大統領に続くため、米政界有数の有力者になり得る。

マカーシー氏の勝利が決まると、共和党議員のほとんどは立ち上がって拍手し、「USA! USA!」と連呼したものの、最後まで支持に回らなかった共和党議員たちは着席したままだった。

下院議長決定を受けてジョー・バイデン米大統領(民主党)は声明を発表。「アメリカ国民は何より自分たちの必要を優先するよう、政府指導者に期待している。私たちは今、そうしなくてはならない」として、「中間選挙の後に言ったように、私はそれができる時には共和党と協力する用意があるし、有権者は共和党にも私に協力してもらいたいと意思を明確に示した。下院の指導陣が決まった今、そのプロセスに着手する時だ」と述べた。

休会しそうになるもののまた投票

4日目となった6日の日中の投票でも共和党右派が造反を続け、計12回目の投票では、マカーシー議員は213票を獲得。13回目では214票を獲得した。13回目の投票を経て審議が一時休会に入った後、マカーシー氏は記者団に「票は集まる」と話した。

数時間の休会を経て6日午後10時(日本時間7日正午)に再開した下院は、14回目の投票を実施。日中の投票に欠席した複数の共和党議員が、マカーシー氏に投票するため、ワシントン入りしていた。

一貫してマカーシー氏に反対していた6議員のうち、ローレン・ボーバート議員(コロラド州)やマット・ゲイツ議員(フロリダ州)らが棄権に回ったが、マカーシー議員が得たのは432票のちょうど半数の216票にとどまり、過半数に達しなかった。共和党議員4人は引き続き、他の共和党議員に投票した。

議員たちは本来、姓のアルファベット順に投票するが、ゲイツ氏は「G」の順番ではなく、最後に投票。それまでの票数から、ゲイツ氏が賛成すればマカーシー氏が当選、棄権すれば過半数に達せずという状況で、ゲイツ氏は棄権した。

下院本会議場ではこの後、マカーシー議員がゲイツ氏のもとへ歩み寄り語りかけた。自分の議長就任に賛成するよう説得していたとみられている。その他、多くの共和党関係者がゲイツ氏を説得しようとする光景が続いた。共和党議員同士の間で、罵倒も飛び交った。ゲイツ議員を怒鳴る共和党議員もいた。

マカーシー派の議員が9日までの休会動議を提案し、多くの共和党議員がいったんはこれを支持したものの、この間に情勢が変わった様子で、共和党議員たちは休会に反対。15回目の投票に臨んだ。

15回目の投票で、ゲイツ議員は引き続き棄権。しかし、他の議員を支持していた他の造反組が「在席(棄権)」に回ったため、過半数に必要な票数が変化し、マカーシー議長がついに誕生することになった。

民主党の下院議員212人はこの日も引き続き、全員が一貫して自党のハキーム・ジェフリーズ院内総務(ニューヨーク州)に投票した。投票4日目に入りマカーシー氏の得票数が初めて、ジェフリーズ氏を上回った。

「転換点」

前日まで造反を続けていた議員連盟「自由議員団」の代表、スコット・ペリー議員(ペンシルヴェニア州)もこの日、マカーシー議員支持に回った。同議員団はこれまで、マカーシー氏は中道寄りすぎると抵抗していた。

ペリー議員はツイッターで、「転換点に来た」と書き、「国民の家(訳注:下院の意味)を正しい持ち主の手に取り戻すという目的一つのため、これまで誠実に交渉してきた。合意の枠組みが得られたので、誠意を示すため、共和党リーダーに投票することで、国民の家を回復することを指示した」と書いた。

昨年11月の中間選挙で共和党は下院多数党になったものの、民主党との議席差は10議席にとどまった。このため、マカーシー院内総務が議長の席を確保するには、党内の支持を固める必要があった。その状況で強硬右派は、マカーシー議員の議長就任を駆け引き材料に、さまざまな要求を突き付けていた。造反勢力はマカーシー議員が、中道寄り過ぎる、あるいは権力志向過ぎると批判を続けてきた。

これに対してマカーシー氏はそうした議員たちの支持を得ようと、現職議長を解任するための手続き簡素化を受け入れるなど、大きく譲歩する姿勢を見せていた。

4日夜から5日にかけて、マカーシー氏は実際に、造反組に複数の有力委員会の主要ポストを提示。特に、本会議の議事日程を決める規則委員会での役職は、造反組にとって大きな成果とみられていた。

議員任期やテキサス南部の国境警備などの案件も、交渉対象になっていたもよう。

マカーシー氏はこのほか、議長解任請求の手続きについて、わずか1人でも下院議員がそれを要求すれば、解任案を本会議の採決にかけるという変更を受け入れた。このためマカーシー氏が議長になっても、すぐに党内の不満勢力が解任動議を提出する可能性もある。

下院が議長選出でこれほどもめるのは、奴隷制をめぐり国内が激しく対立していた1859年以来。当時は、議長を選出するのに投票を44回重ね、年末年始をまたいで1860年にようやく決まった。

1回目の投票で議長が決まらなかった1923年以来で、この年は投票9回を経て数日かけてようやく新議長が決まった。今回の議長選は、その記録を破ったことになる。

(英語記事 House leadership vote live page / Kevin McCarthy says he has votes to become US House Speaker

提供元:https://www.bbc.com/japanese/64195420


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