2023年1月30日(月)

BBC News

2023年1月9日

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ブラジルの首都ブラジリアで8日午後、極右ジャイル・ボルソナロ前大統領の支持者たちが、大統領府や議会、最高裁判所などを襲撃し、内部を破壊した。ブラジル当局は8日深夜までに約300人を逮捕したと発表した。

昨年10月の大統領選で当選し、今月1日に就任したばかりの左派ルイス・イナシオ・「ルラ」・ダ・シルヴァ大統領は、暴徒化した襲撃者を厳正に取り締まると約束した。襲撃開始から6時間以上たって、米フロリダ州にいるボルソナロ氏は襲撃をツイッターで非難した。

ブラジルのフラヴィオ・ディノ法相は8日深夜、少なくとも200人を、議事堂など襲撃の疑いで逮捕したと発表した。デモ隊を首都に送り込むために使われた約40台のバスも差し押さえたという。議事堂と大統領府と最高裁の周辺で、騒乱は鎮静化したという。

「これはテロだ。これはクーデターだ。国民の大多数は、この暗闇の実現など望んでいないと、私たちは確信している」と、ディノ法相は記者会見で述べた。


法相はさらに、ボルソナロ支持者が指揮する現地の警備部隊が、この日のデモ警備で手抜きをしていたと非難。「憲法上の責務を果たしていなかった者たちについて、知事がその責任を判断すると思いたい」と法相は述べた。

この日、首都を離れていたルラ大統領は夜までに戻り、最高裁判所などの被害状況を自ら視察した。

ブラジリアの警察は、300人を逮捕したと発表した。

最高裁は、ブラジリアのイバネイス・ロハ市長を90日間、職務停止にした。最高裁のアレクサンドレ・デ・モラエス判事は、市長が暴動を阻止せず、「つらくなるほど沈黙」を続けたと非難した。ロハ市長は、議会や最高裁などの襲撃について謝罪した。

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大統領選の結果認めず

ブラジルのサッカー代表のユニフォームなどを着て、国旗を掲げた集団は、ルラ大統領の就任から1週間のこの日、議事堂前の芝生や、官庁街の中央通りに朝から集まっていた。

ソーシャルメディアに掲載された動画では、極右ボルソナロ前大統領の落選を認めず、ルラ政権発足に抗議する暴徒が議会前で、騎馬警官を地面に引きずり落として攻撃する様子が映っている。

一部の抗議者は建物の窓を割った。上院の本会議場にたどりついた者たちは、議席に飛び乗ったりしていた。

警察は暴徒に催涙ガスを使用したが、群衆は動きを止めなかった。抗議者がまだ大統領宮や議会、最高裁の中に残っているかは不明だが、国営メディアは警察が大統領府の前で、ブラジル代表の黄色いユニフォームを着た数十人を拘束する様子を映した。後ろ手に手錠をはめられた人たちが建物の外へ連行される様子も、確認された。

ルラ大統領は、政府庁舎が並ぶエスプラナダ通りをはじめ、首都中心部の24時間封鎖を命令した。

ルラ大統領はこの日、サンパウロ州を公式訪問中で、ブラジリアには不在だった。

ルラ大統領就任の2日前に出国して以来、米フロリダ州に滞在しているもようのボルソナロ氏は、襲撃が始まってから6時間以上たって、襲撃をツイッターで非難した。

「法に沿った平和的な抗議は、民主主義の一部だ。しかし本日起きたような、公共の建物への侵入と破損は、2013年と2017年に左派が行ったのと同様、法律に反している」と、前大統領は書いた。

https://twitter.com/jairbolsonaro/status/1612242019564548097


大統領選での敗北を認めない発言を繰り返していたボルソナロ氏は、ルラ氏の就任式を欠席。大統領の地位を表す国旗色のたすきを、ルラ氏に引き継ぐという象徴的な行為を回避し、米フロリダ州へ出国していた。

「暴徒とファシスト」

議会などの襲撃を受けてルラ大統領は訪問先のサンパウロ州から、「この国の歴史でこのような事態はかつてなかった」として、暴力行為を「暴徒とファシストによるもの」と非難した。

大統領はさらに、警備体制の不備を批判し、「映像では、(警官たちが)三権広場へ行進する人たちを先導しているのが見える」と指摘。「ブラジリアへ向かった暴徒に、だれが資金提供したのが解明する。その者たちは全員、法の裁きを受けることになる」と述べた。

ブラジル紙オ・グローボが共有した動画では、デモ隊が議事堂に乱入する前で、一部の警官が笑いながら抗議者と記念撮影している様子が確認できる。

ブラジルのディノ法相は、政府庁舎への襲撃を「自分たちの主張を威力で押し付けようとする、ばかげたまねだ。決して成功しない」とツイッターで批判した。

「娘たちのため」

襲撃が始まる前、大統領府と議会と最高裁が集まる地区の周辺は厳重に警備され、随所に武装警官が配置されていた。

BBCは8日朝、周辺に約50人の警官がいるのを確認。警戒区域に入ろうとする人は、警察による手荷物検査を受けていた。

ルラ政権への抗議に参加した27歳のエンジニアだというリマさんは、「この不正選挙の後、秩序を回復しなくてはならない。私は歴史のため、娘たちのためにここにいる」とAFP通信に話した。

これに対して、ダニエル・ラセルダさん(21)はBBCに対して、「自分はボルソナロに投票したが、(議会などの)襲撃には反対だ。大統領に賛成しないなら、そう言えばいい。でもこんな抗議をしたり暴力を振るったりしてはだめだ」と話した。

前大統領支持者は軍の介入求める

2021年1月6日に米ワシントンで、ドナルド・トランプ前大統領の支持者たちが連邦議会を襲撃した事件との類似性を、大勢が指摘している。

ボルソナロ前大統領の支持者たちも、トランプ氏の支持者たちと同様に大統領選は不正だったと主張。軍の介入とルラ大統領の辞任を要求している。ボルソナロ氏はかつて、1964年から20年間にわたりブラジルで軍事独裁を続けた軍政を支持する発言をしていた。

昨年10月末の大統領選以来、ボルソナロ支持者たちは国内各地の主要都市に抗議拠点を設けた。その多くが軍の兵舎前で、支持者たちは軍に介入を要求。「不正選挙」だと主張するものの結果を覆すよう求めていた。

ルラ大統領の就任を機に、首都ブラジリアでの抗議拠点は解体され、就任式そのものへの妨害もなかったが、この日は一気にボルソナロ派の抗議が暴力化した。

「クーデター未遂」、「民主主義への攻撃」

アメリカのジョー・バイデン大統領は、「民主主義への攻撃、ブラジルでの平和的な権力移譲への攻撃を、非難する」とツイート。「我々はブラジルの民主制度を全面的に支援する。ブラジル国民の意思が損なわれてはならない。引き続き、ルラ大統領との協力を期待している」と書いた。

同様に南米各国の首脳も、一様に暴力を非難。メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、「ルラはひとりではない。ブラジル国内の進歩的な勢力に支持され、メキシコに支持され、アメリカ大陸と世界に支持されている」とツイートした。

チリのガブリエル・ボリッチ大統領は、「民主主義に対するこの卑怯でおぞましい攻撃」を前に、チリはブラジルを「全面的に支援する」と述べた。

ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、ルラ大統領を失脚させようとする暴徒は「ネオファシスト」だと非難した。

アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は、襲撃を「クーデター未遂」と呼んだ。

欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は、襲撃に「衝撃を受けている」として、「ブラジルの民主主義は、暴力と過激主義に打ち勝つ」と述べた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「ブラジル国民の意思と、ブラジルの民主体制は尊重されなくてはならない」と述べ、フランスはルラ大統領を「揺るぎなく支援」し続けると約束した。

(英語記事 Live reporting / Brazil Congress: Lula vows to punish supporters of Bolsonaro after riot

提供元:https://www.bbc.com/japanese/64206842


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