2023年1月30日(月)

BBC News

2023年1月9日

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マイク・ウェンドリング、BBCアメリカ偽情報担当記者

ブラジルの首都ブラジリアで8日午後、極右ジャイル・ボルソナロ前大統領の支持者たちが、大統領府や議会、最高裁判所などを襲撃し、内部を破壊した。その光景は、2年前の1月6日に米ワシントンの連邦議会議事堂で起きた事態と、奇妙なほど似ていた。その類似性は、外見にとどまらない。

「なにもかもうさんくさい」。昨年10月のブラジル大統領選で1回目の投票が終わった後、スティーヴ・バノン氏のポッドキャストにゲスト出演していた人が、こう言った。

当時、ブラジルの選挙は決選投票に向かっていた。最終的な結果はまだ何も分かっていなかった。それでもバノン氏は、そのずっと前から、不正選挙だという根拠のないうわさを広め続けていた。

バノン氏と複数のゲストはポッドキャストやソーシャルメディアで、怪しい勢力による「盗まれた選挙」の主張をあおり続けた。「ブラジルの春」というハッシュタグを拡散し、ボルソナロ氏本人が落選を認める様子を示した後でも、結果への抵抗を推奨し続けた。

バノン氏は、ドナルド・トランプ前大統領の元戦略官だ。2020年米大統領選の結果を認めず、「不正」だと主張し続けたのと同じ手法や論法を、ブラジルの大統領選にも適用した。同じようにブラジル大統領選の結果を否定したトランプ氏の関係者は、バノン氏だけではない。

そして、2020年米大統領選から2カ月後の2021年1月6日に米連邦議会が襲撃されたのと同じように、昨年10月のブラジル大統領選について拡散された偽の情報や裏付けのないうわさが、群衆を駆り立て、あおられた暴徒と化した集団が自分たちの主張を実現しようと、政府庁舎の窓を割り、乱入し、破壊を繰り広げた。

「必要なことは何でも!」

米議会襲撃の前日、バノン氏はポッドキャストで、「明日は地獄のようなことになる」とリスナーに告げた。

バノン氏はその後、議会襲撃を調べる下院特別委の証人喚問に応じなかったため、議会侮辱罪で有罪となり連邦地裁に禁錮4カ月を言い渡されたものの、現在は控訴中で仮釈放されている。

ブラジル大統領選について不正のうわさをひろめた他の有力トランプ側近たちと同様、8日にブラジル大統領府や議会や最高裁が襲撃され、その破壊の規模が明らかになる中、バノン氏も襲撃を支持し続けた。ソーシャルメディア「Gettr」で、「ルラが選挙を盗んだ(中略)ブラジル人は知っている」と繰り返し、議会などに乱入した人たちを「自由の戦士」と呼んでいる。

アメリカの2020年大統領選の後に、「Stop the Steal(不正選挙をやめさせろ)」運動のリーダー格として浮上した、親トランプ派の末端活動家、アリ・アレキサンダー氏は、ブラジルでの議会襲撃を応援し、「必要なことは何でもしろ!」とツイート。ブラジル国内に知り合いがいるのだと主張していた。

https://twitter.com/Bencjacobs/status/1612170675896156163?s=20&t=mFXh1hi5xhHH9Oo_oXJDFw


ボルソナロ前大統領の支持者たちはオンラインで、「存亡の危機」だと訴え、「共産主義者が国をのっとる」と主張し続けた。2年前にワシントンに集まり議会を襲った群衆も、ほぼ同じ言説に突き動かされていた。


投票の仕組みを疑う

ボルソナロ氏の支持者とトランプ氏とその周辺による運動の共通点は、かねて指摘されていたが、それが特に強調されたのは昨年11月。ボルソナロ氏の息子が米フロリダ州にあるトランプ氏の自宅兼リゾート施設を訪れ、そこでトランプ氏と会談した時のことだ。

米紙ワシントン・ポストなど複数メディアによると、エドゥアルド・ボルソナロ氏はその際、バノン氏や、トランプ氏のジェイソン・ミラー顧問とも会談している。

2020年米大統領選の時と同様、ブラジルでも大統領選の結果を否定する根拠として、投票の仕組みそのものが疑惑の対象にされた。ブラジルでは電子投票の集計機械が疑われた。

8日に議会などを襲撃した集団が掲げた横断幕には、「ソースコードを見せろ」と英語とポルトガル語の両方で書かれていた。これは、電子投票機がボルソナロ氏に不利にプログラムもしくはハッキングされていたといううわさに、関連したものだ。

https://twitter.com/jsrailton/status/1612177518718603272


昨年10月末にイーロン・マスク氏がツイッターを買収した後、選挙結果を否定するうわさを広めるブラジルの複数の有力アカウントが、凍結を解除されたことが、BBCの分析で分かった。

マスク氏自身、ブラジルのツイッター社員が「政治的に極端に偏向」していたとして、ツイッターが「左派候補を優遇していた可能性がある」と、具体的な内容や証拠を示さないまま言及していた。

アメリカではトランプ氏に対立する人々が、ブラジルの騒乱を応援したとして、トランプ氏やその顧問たちを直ちに非難した。

議会襲撃を調べた米下院調査委の委員だった、民主党のジェイミー・ラスキン下院議員は、「世界の民主国家は、ブラジル議会を襲撃した右翼の反乱者をだれも支持しないと、素早く明示しなくてはならない。トランプの1月6日反乱に参加した連中を手本にしているこのファシストたちは、トランプ支持者と同じ場所、つまり刑務所に入れられなくてはならない」とツイートした。

BBCはバノン氏とアレキサンダー氏にコメントを求めている。

(追加取材: BBC偽情報取材チーム)

(英語記事 How the Brazilian riot was stoked by Trump's election-denying allies

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64206850


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