
ウクライナは8日、ロシアが攻撃でウクライナ兵600人を殺害したというロシア側の主張を、「プロパガンダ」だと否定した。
ロシア政府は、東部クラマトルスクに「大規模なミサイル攻撃」を行い、600人以上のウクライナ兵を殺害したと、証拠を示さずに発表。今月1日にウクライナがロシアの基地を攻撃し、ロシア兵数十人が殺害されたことへの報復だとしている。
これに対し、ウクライナ側はうそだと反発した。ロシア軍のセルヒイ・チェレヴァティ報道官はBBCの取材で、「これはいつものロシアのプロパガンダだ」と述べた。
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ロシア国防省は、ウクライナ軍が駐屯していた建物を爆撃し、600人以上の兵士を殺害したとしている。2つの建物に合わせて1300人以上のウクライナ兵がいたという。
この攻撃についてロシア側は、東部ドネツク州マキイウカでロシア兵89人が殺害されたことへの「報復爆撃」だと説明した。
ウクライナは、マキイウカの攻撃で400人が死傷したと発表している。ロシアのナショナリストたちも、ソーシャルメディアで数百人という数字を伝えている。
BBCは、地元当局が公表した攻撃の写真と、グーグルの衛星画像などインターネット上の画像を照合し、クラマトルスクで2キロほど離れた2つの現場の位置を確認した。
爆撃は、第28職業訓練校と第47職業訓練校の近くで発生。この番号は、ロシア側がウクライナ兵の宿泊所の番号として提示したものと一致している。
しかし、この建物2棟がひどい爆撃を受けたことや、ロシアが主張するような規模の大量死があったという視覚的証拠はない。
クラマトルスクで取材中のBBCのジェイムズ・ウォーターハウス・ウクライナ特派員も、現場はロシアの主張とは異なる様子だと説明。
地元市長は、2つの教育施設、8つの集合住宅とガレージが爆発によって損害を受けたと述べたものの、ロシア政府の主張とは裏腹に、死傷者は報告されていないと指摘した。
ウクライナ各地でも爆撃
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、正教徒がクリスマスを祝えるようにとロシア軍による36時間の停戦を発表したが、終了直後から、ウクライナ各地でさらなる砲撃があった。このいわゆる停戦についても、ロシア側が順守しなかったことを示す証拠が出ている。
ウクライナ側は、北東部ハルキウで少なくとも1人が亡くなったと発表している。南部ザポリッジャやメリトポリでも、爆発が報告されている。
これとは別に、ロシア国防省はウクライナがロシア兵の捕虜50人を返還したと発表。ウクライナ政府も、同数のウクライナ兵が捕虜がロシアから戻ってきたと認めた。