
ジョナサン・エイモスBBC科学担当編集委員
英コーンウォールで9日、同国初の人工衛星打ち上げが行われたが、失敗に終わった。
ニューキーの空港から出発した米ヴァージン・オービットのジャンボジェット機が、大西洋上空でロケット「ランチャーワン」を投下。ロケットのエンジンは噴射し、正確に上昇したとみられたが、その後「異常」に見舞われたと発表された。
ロケットに搭載されていた人工衛星は放出されず、失われた。一方、ロケットを運んでいたボーイング747「コズミック・ガール」は無事に帰還した。
ヴァージン・オービットの人工衛星打ち上げシステムは2020年に運用が開始されたばかりで、比較的新しい。
初飛行は失敗したが、その後、4回の飛行には成功している。
イギリス宇宙局の打ち上げプログラム主任を務めるマット・アーチャー氏は、ロケット上部で問題が起きたと説明した。
「第2段階のエンジンに技術的な異常が起き、要求される軌道に到達しなかった」
「ヴァージン・オービットと多くの政府機関が現在、この点について調査を行っている」
アーチャー氏は、ロケットが地球に落下したか明らかにしなかったが、もし落下していても、人の住んでいない場所だろうと述べた。
人工衛星には保険がかけられているため、製造や運用に関わる企業などは損失が補償されるという。
イギリスでは以前にもロケットの打ち上げが行われたが、人工衛星を軌道に乗せるプロジェクトは今回が初めてだった。これまでのロケット打ち上げは軍事演習や大気調査などが目的で、打ち上げられた機体はそのまま地球に帰還していた。
あらゆる大きさの人工衛星を製造していることで知られるイギリスだが、その宇宙産業は常に人工衛星を国外の打ち上げ場へと運び、そこから軌道に乗せていた。
人工衛星の打ち上げ能力を備えることで、将来的には国内で設計から運営までを行えるようになる。
打ち上げが行われたニューキー空港には、2000人以上の観客と関係者が集まり、ジャンボジェットが飛び立つのを見守った。しかし、不具合が起こったというニュースが流れると、人々は散り散りになった。
今回の失敗は、ヴァージン・オービットや人工衛星の持ち主、そして打ち上げを行ったスペースポート・コーンウォールなど、全ての関係者に打撃となった。
スペースポートの責任者であるメリッサ・ソープ氏は、「とても感情的になっている」と話した。
「我々はみな、このプロジェクトに多くを注ぎ込んできたので、(失敗は)大きなダメージだ。しかし宇宙に関することは難しいと決まっている。難しいことは分かっている」
ヴァージン・オービットのダン・ハート最高経営責任者(CEO)は取材を避け、同社は立ち直るとだけ述べた。
ハートCEOは、ジョージ・フリーマン英科学相と共に、スペースポートの職員をなぐさめた。