
英イングランドで、クリスマスから年末年始にかけ、医療の逼迫(ひっぱく)が深刻化していたことが、最新のデータから明らかになった。
今年1月1日までの1週間、病院に急患を搬送した救急車の40%以上が、患者の受け渡しのために30分以上待たされていた。これは、10年前の統計開始以来、最大だという。
イギリス医師会のフィル・バンフィールド会長は2日、この危機を解消するために「ただちに措置を講じる」よう政府に求めた。
イギリスの救急外来をモニタリングしているロイヤル・コレッジ・オブ・エマージェンシー・メディシン(RCEM)も、国民保健サービス(NHS)が「完全な危機状態にある」と指摘している。
RCEMのイアン・ヒギンソン副学長はBBCのラジオ番組に出演し、「救急部門は今、本当に大変で、場合によっては完全に危機的な状態にある。(中略)多くの場合、私たちが望む水準の治療を提供することができない」と語った。
国家統計局(ONS)のデータでは、クリスマスまでの期間、死亡者数は通常より25%多かった。インフルエンザと新型コロナウイルスの流行、そしてNHSへの負担が、死者数の増加の主な要因だと考えられている。
NHSイングランドのクリス・ホプソン氏は1月2日の時点で、NHSのサービスを圧迫している複数の要因を挙げている。
- 年末までの6週間に救急外来を受診した人が、前年同期比で18%増加
- イングランドにおける新型ウイルス患者数は、数週間前の4500人から9500人に増加
- インフルエンザによる入院患者数は、1カ月前の520人から約3750人に増加
- 医学的に回復した患者の退院が遅れており、現在1万2000人に達している
- 人口の増加と生活水準の低下
- NHS職員9500人が新型ウイルス感染で欠勤している
しかし先週には、インフルエンザと新型ウイルスによる入院患者数が減少傾向に転じており、病院への重圧は緩和されるとみられている。
インフルエンザによる入院患者はこの1週間で40%以上減っている。
しかしイギリス健康安全庁(UKHSA)は、この10年で最悪となっているインフルエンザの流行がピークを迎えたかどうかを判断するのは時期尚早だと警告。クリスマス休暇などで感染報告に遅れがあり、それがデータに影響する可能性があるからだという。
NHS傘下で病院を代表しているNHSコンフェデレーションのマシュー・テイラー氏は、病床はなおほとんどが埋まっており、救急外来の対応や、救急車の出動に遅れを生み出していると語った。
スティーヴ・バークリー保健相も、医療機関に「大きな圧力」があったと認めた。一方で、政府が病床拡充や入院の回避、退院体制の整備などに追加予算を投じたと述べた。
その上で、「今まで以上にNHSへの圧力を減らし、救急サービスが本当に必要な人のために存在できるよう、対象者全員がインフルエンザと新型ウイルスのワクチンを受けることが不可欠だ」と付け加えた。
ロバート・ハルフォン高等教育担当相は、リシ・スーナク首相がNHSへの圧力緩和を「最優先」にしていると説明。「NHSのキャパシティーを7000床分拡大し、退院の迅速化と収容能力の改善に5億ポンド、さらに救急サービスに1億5000万ポンドを投じた」と明らかにした。
(英語記事 Record number of ambulances queue at A&E/Pressure on the NHS is unsustainable, medics warn)