
モニカ・ミラー&大井真理子、BBCニュース
衣料品チェーンのユニクロを運営するファーストリテイリングは11日、日本国内の従業員の給与を最大40%引き上げると発表した。
ファーストリテイリングによると、新たな給与ポリシーは、本社と国内店舗のフルタイム従業員に3月から適用される。
大卒新入社員の月給は25万5千円から30万円に約18%アップする。入社1〜2年目で就任する店長の給与も約35%増える。
同社は声明で、「成長意欲と能力ある従業員一人ひとりにフェアに報い、企業としての世界水準での競争力と成長力を強化するため」だと説明。
「今回は特に、海外に比べて報酬水準が低位に留(とど)まっている日本において、報酬テーブルを大幅にアップする」とした。
同社は昨年9月にも、時給で働くスタッフの賃金を上げている。
物価が上昇、給料は横ばい
日本ではここ数十年で最速のペースでインフレが進んでいる。しかし、給与は横ばいが続いている。
岸田文雄首相は先週、物価の上昇に国民が苦しんでいるとして、企業に対して賃上げを急ぐよう呼びかけた。経済3団体の賀詞交歓会では、「賃上げが(物価上昇に)追いつかなければ、スタグフレーションに陥ってしまうと警鐘が鳴らされている」と訴えた。
スタグフレーションは、経済が成長しないのに物価が上がり続ける状態。
日本の昨年11月の公式発表では、9月までの3カ月間の国内総生産(GDP)は年率1.2%減少し、国内経済が予想外に1年ぶりに縮小したことが明らかになった。
一方、コア消費者物価は11月に3.7%上昇。1981年の中東石油危機以来、最も速いペースで上がった。
日本企業に関する最近の調査によると、対象企業の4分の3以上が昨年賃金を引き上げたが、大半で上昇率は10%を大きく下回っていた。
日本経済界の先駆者
ファーストリテイリングの柳井正社長は、日本の経済界の先駆者として名前が挙がることが多い。
2009年のBBCの取材では、コスト削減のために中国での生産を多角化し、カンボジアで服作りを始めると述べていた。
当時は大きな賭けと見られたこの決断は、その後、同社に利益をもらたした。
柳井氏はこのところ、日本政府の経済政策に批判的な見解を示している。昨年後半に円安が進行した時には、その傾向が顕著だった。
柳井氏はまた、物価上昇の影響から一般の人々を守るため、日本経済の根本的な改革が必要だとしている。
ファーストリテイリングの株価は11日、東京での取引で1.4%上昇した。