2023年2月8日(水)

BBC News

2023年1月13日

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世界最大規模の米石油会社エクソンモービルは、1970年代にすでに、気候変動による地球の温度上昇を正確に予測していた――。そんな調査結果が、米科学誌「サイエンス」に掲載された。

調査に当たった研究者たちは、石油大手エクソンモービルの内部文書にあるデータを分析した。

その結果、エクソンモービルは、化石燃料の燃焼が地球を温暖化させることを研究で予測していたが、公にはその関連性を否定していたことがうかがえるとした。

同社はこの見方を否定している。

「この問題はここ数年の間に何度も浮上しているが、いずれの場合も我々の答えは同じだ。『エクソンは知っていた』と語る人々の出した結論は間違っている」と、エクソンモービルはBBCニュースに語った。

エクソンモービルなど複数の企業は、化石燃料を販売して巨額の利益を得てきた。化石燃料は、地球温暖化の原因だと科学者や各国政府、国連が指摘する、二酸化炭素(CO2)の排出につながる。

今回の調査結果は、エクソンモービルの予測が、世界トップレベルの米航空宇宙局(NASA)の科学者たちよりも正確だったことを示唆している。

「エクソンモービルの経営陣は自社の科学者が非常に質の高いモデリング研究を行っていることを把握し、その部外秘の情報にアクセスしながら、ほかの人に対しては気候モデルはでたらめだと伝えていた」と、米ハーヴァード大学のナオミ・オレスケス教授(科学史)はBBCニュースに語った。

今回の発見は「決定的な証拠」だと、報告書の共著者で米マイアミ大学のジェフリー・スプラン准教授(環境科学政策)は示唆している。

「我々の分析によって、エクソン側が知っていたこと、つまり同社の化石燃料製品を燃やせば地球の気温が10年ごとに摂氏約0.2度上昇するということを、初めて実際に数量化することができた」

スプラン氏は、研究者がエクソンモービルの文書にある科学的証拠を数量化したことは、これまで1度もなかったとしている。

これまでに裁判も

エクソンモービルをめぐっては、ニューヨーク州が2018年、気候変動に関する規制が事業に及ぼすリスクをめぐり投資家を誤解させたとして提訴。2019年に裁判所は訴えを退け、「エクソンモービルの経営陣と従業員は可能な限り包括的かつ細心の注意を払い、厳格な職務遂行に一貫して取り組んでいる」と結論付けた。

同社はこの時の判決に言及し、「エクソンモービルは気候変動と、それがもたらすリスクに対する解決策の一部となるよう努めている」と、今回の調査結果に反論した。

マイアミ大学のスプラン准教授は、「彼らの優れた気候モデリングは少なくとも、現代史において最も影響力があり高く評価されている気候科学者の1人に匹敵する成果を示すもの」だと、1988年に気候問題について警鐘を鳴らしたNASAのジェイムズ・ハンセン氏と比較して語った。

ハーヴァード大学のオレスケス教授は、エクソンモービルが市民と各国政府を「故意に欺いた」ことを調査結果は示していると指摘。「彼らは自由に使える情報をすべて持っていたにも関わらず、公の場ではまったく異なることを主張していた」とした。

過去の複数の調査では、エクソンモービルが科学に対する疑念を広めようとしたことを示唆する社内文書が見つかっている。ある内部文書には、温室効果に関する「科学的結論における不確実性を強調する」「エクソン側の立場」が記されていた。

科学誌「サイエンス」に掲載された調査結果は、気温が2度以上上昇した世界で最悪の影響を回避するため、CO2排出量をどのように削減すべきかについて、エクソンモービルが合理的な見積もりを算出していたことも示唆している。

また、同社の科学者たちは、氷河期が到来するという説をほかの研究者たちが議論していた時期に、この説を正しく否定していた。

多数の出版物を分析

2015年には複数のジャーナリストが、エクソンモービルが気候変動について知っていたと示唆する証拠を発見(エクソンモービル側は、ジャーナリストが自分たちに有利な事実のみを選んでいると非難)。その後、オレスケス教授とスプラン准教授は研究に着手した。

2人は、前身のエクソンと合併後のエクソンモービルが1977年から2014年の間に発表した100以上の出版物の科学データを用いて、地球の気温上昇予測を算出した。

その結果、同社が公の場で気候モデルを「推測的」あるいは「悪い科学」とする一方で、内部では気候科学を用いていたことが示されたと、オレスケス氏は示唆している。

エクソンモービルは気候変動に関する認識をめぐり、圧力を受け続けている。今回公表された調査結果はそうした動きに拍車をかけるものとなった。同社が化石燃料ビジネスの利益を守るために誤った情報を流したなどとして、これまでにアメリカの複数の州や市が提訴している。

マサチューセッツ州の裁判所は昨年5月、エクソンモービルが気候変動への影響についてうそをついていたとして同州が起こした裁判で、訴えの却下を求める同社の主張を退けた。

(英語記事 Oil giant 'predicted climate change in 1970s'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/64258581


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